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異世界ネイチャーライフ(?)満喫中

23.会議って、どうしてこう長引くんだろう

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事件は会議室で起こっていたよ。
・・・現場側方針は決まってんだけどな。



レインさんに連れられて入った会議室には、4人のお偉方が侃侃諤諤、激しい論争を繰り広げておいででした。

商業ギルドギルマス、いかにも商人セントタグ氏
冒険者ギルドギルマス、厳つい坊主頭ロイド氏、
薬師グループ代表、長いお髭のお爺ちゃんパッレシート氏
飲食店グループ代表、恰幅のよいザグリス氏

うん。
名前覚える自信なし。

とりあえず、私たちが来たことで、言い合いは一時中断。
挨拶もそこそこに、席についた私たちへの聞き取り調査が始まりました。


「では、君たちがあの料理を作った者たちなんだね。」

「はい。」

「あの料理は画期的だ。何故あの発想になったのかね?」

「発想も何も・・・私たちの故郷では、普通にやってた調理法でしたし。」

「何と?当たり前だ、と言うのか?」

「私たちの故郷では、“医食同源”と言う言葉があります。“病気の治療も普段の食事も、ともに人間の生命を養い健康を維持するためのもので、その源は同じである”とする考え方です。ですから・・・」


生野菜より、温野菜が良いとか。
茹でるより蒸す方がいいとか。
塩分排泄に、馬鈴薯とワカメの味噌汁はいいとか。
調理法や食材の掛け合わせって、いっぱい情報あったよね。

昔から“息災であってほしい”と願っているものもあっただろう。
初物食いは寿命が延びるとか。
節分の豆とか。菱餅や粽、菊酒とか。
ばーちゃんのヨモギ餅好きだったなぁ。

食と健康は切り離せないから。
と、思いながら、本題を切り出そうとしたら。

「今の話を聞いたか?薬と同じなのだ。だから、薬師が扱わねばならん!」

「何を言う!普段の食事と同じなのだろう?ならば、普段も食べられる様に飲食店が出すべきだ!!」

「付与効果なぞ、一般人には必要ないだろう!冒険者ギルドでだな!」

「あー、皆さん、またそこからですか・・・」


・・・おぅふ。
コレを繰り返していたのね。
そりゃ、ウゼェ。
レインさんが、憂いの表情になるわけだ。
商業ギルマスさんも大変ねー
商業ギルド側は、レシピ販売できりゃどーでも良いって感じなのかなー?

私たちをそっちのけで、言い争うオッサン達。
どうしたもんかと思って左隣りの師匠の顔を見ると、すっごい呆れた顔。
右隣のカン君は無表情。
口挟もうかと何度か試みるけど、玉砕。

ねぇねぇ、面倒臭くなってきたから、情報秘匿で帰っていい?
師匠も怒気がダダ漏れになってきたし。
お腹すいてきたし。

・・・あ、ザンギ食べちゃえばいいのか。
どうせ、この場に試食用として持ってきたんだし。

そう考えて、おもむろにザンギが入った入れ物を取り出した。
お重の様な入れ物をピオッティさんに借り、1段目に薬師ザンギ、2段目に狩人ザンギを入れている。

あとは、自生していたお茶モドキの葉を炒って作った、番茶(ほうじ茶)を取り出す。
油物にはサッパリしたお茶だよね。
ホントはビールが良いけどねー
コップにお皿にフォークも準備。


「ししょー。カン君。お腹空いたから食べましょか。あ、レインさんもいかがですか?」

「あら。よろしいのですか?」

「いっぱいあるので、どーぞー。」


無表情で入り口に控えていたレインさんにも声かけする。
彼女もウンザリしていたのだろう、すんなり悪ノリしてきた。
カン君が気を利かせて、席をずれてくれたので、レインさんは私の隣に座る。


「どぞどぞ。レグの実を絞るとサッパリ食べられますよ?ホントはお酒とイケれば最強なんですがねー」

「あら、ホントですね。レグの実の果汁の酸っぱさが、油っぽさを変えてくれるのねぇ。これって、他の油物にも良いですね。」

「良いと思いますよー。柑橘には油分を中和する働きがありますから。普通に焼いたお肉にかけてもいいし、お魚のムニエルはこちらにもありますから、バターと合わせてソースにしても良い・・・むぐ。」


と、つらつらと思った事を口にしていたら、レインさんの人差し指が、私の唇を塞いだ。


「ダメですよ?そんなに簡単に話してしまっては。」


にこ、と微笑むレインさん。
見惚れる美人さんです。眼福。同じ女でも照れちゃうわー


「まぁ、コイツらは、そーゆー奴なんだ。」

「人が良すぎるのも考えモノですね。あのタヌキ親父どもに、食い物にされないか心配です。」
 

ため息つきながら、師匠とレインさんが言う。
何かレインさんから物騒な物言いが聞こえてきたよ。


「違う国から流れ着いてるからな。あまり人を疑わないンだよ。すまんが手を貸してやってくれると助かる。」

「他ならぬ、ファーマスさんのお頼みですもの。しっかりバックアップさせていただきますわ。」


ザンギをもぐもぐしながらの師匠の言葉に、レインさんは笑顔で答える。
何だろ、信頼関係しっかりしてるなぁ。


・・・え。もしや、そーゆー関係?大人の?


ニヤニヤしてたら、師匠からデコピンが飛んだ。


「あだっ」

「何かアホなこと考えてるな?」

「考えてねーですよー。大人な関係なのかなーって思っただけで。」 

「考えてんじゃねーか。」

「いだだっ、師匠ギブっ」


むんず、と頭を掴まれた。
乙女に、アイアンクローはないと思うの。
そんな様子を見ながら、レインさんはクスクスと笑う。


「師匠、リンさん。一応、会議中なんですが・・・」


ため息交じりのカン君のツッコミ。
見やると、煩かったオッサン達がこちらを凝視している。


「君たちは、会議中に何をしているのかね?」


薬師のおヒゲお爺さんが、不機嫌そうにこちらを見る。


「こちらをないがしろに、勝手にお話し合いをされている様でしたので、休憩を入れさせていただいた、だけですが?」


リンさん・・・と、慌てるカン君の呟きが聞こえてきたけど。ゴメン、言うことは言うよ?
これ舐められたらアカン奴。

師匠と、レインさんは面白そうにこちらを見ている。
すると冒険者ギルマス、薬師代表、飲食店代表が口々に喚きだした。


「何を言うかっ、この発見の取り扱いがどれだけ重要だと思っている!!」

「薬として、新しい可能性が開けるのだぞ!小娘がっ」

「どさくさに紛れて何を言う!薬ではなく、食べ物だと言ってるだろうが!」


・・・何かもう。

あーもう。
ハンカクセェなぁっ。


「わかりました。無知な小娘の戯言ですので、初めから無かったことにしてしまいましょう?
私たちは、この料理のレシピを開示しません。秘匿情報とします。それで終了。よろしいですね?」

「なっ何を言うか!」


焦るオッサン達。
そうだよね?情報無ければ、新しい事業は起こせないもんねぇ?
・・・人の話を聞かないアンタらが悪い。


「だってそうでしょう?私たちは取り扱いについての話し合いという事でこちらに呼ばれた筈です。当然レシピの扱いについては、こちらの希望や条件提示と思っていたのに。
来てみれば、未だ得てもいない情報で、くだらない喧嘩状態。情報提供者の話も聞かない。話をする余地など無いじゃないですか。
私達も記憶から消しさりますから。
無かった事にすれば、今まで通り。問題ないでしょう?」

「なっ何をっ。君たちは、これから入る大金を、みすみす捨てると言うのか!?」


商業ギルマスも慌てだした。

世の中、金が全てじゃないよ。愛が全てでも無いけど。
取引な筈なのに、対等な立場じゃないのも気に食わねぇ。

生活出来るだけの金があれば問題ない、って考えの人間だっているんだ。
これから自分で稼ぐ気満々だし。
こんなくだらない争いに巻き込まれて、嫌な思いしてまで、いらねーよ。


「えぇ。別に構いません。
そもそも情報開示しようと思ったのは、街に美味しいモノが増えれば良いな、レシピを元に皆さんの開発意欲に繋がれば良いな、と思っただけですから。
こんなくっだらない利権抗争に使われるのは、ごめん被ります。」






**************





ざまぁ、ではなく、只の喧嘩の売り買い。
・・・にしかならない。
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