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異世界ネイチャーライフ(?)満喫中
21.食改革はする気ないんですが
しおりを挟む「悪りぃ。2人とも一緒に街まできてもらえねーか?」
街から帰って来た師匠たちを出迎えたら、いきなり、イズマさんに頭を下げられた。
「ど、したんですか?急に。」
頭を下げられる理由も思いつかず、カン君と首を傾げる。
口数の少ないイズマさんの補足をするように、ベネリさんが説明してくれる。
「リンちゃんが作ってくれた、ビガディールのザンギ・・・だっけ?アレの効果でちょっと騒ぎになってね。出来ればレシピを教えてもらいたいって話になったんだ。商業ギルドと冒険者ギルド両方から。」
「騒ぎ・・・ですか?」
わぉ、面倒ごとのヨカーン。
「薬じゃなく、食事による効果付与が、今までに無い考え方でね。薬として取り扱うか、食事として取り扱うかって、商業ギルド内でモメ始めたんだ。
また、冒険者ギルドも刺さってきて。ギルド内の食事処で提供できれば、冒険者の利益となるってんで、レシピが欲しい。と。」
「何でまた、急にそんな話に?」
何か話が飛躍し過ぎていて、よく分からない。
ベネリさんがため息をつく。
「・・・イズマが、ザンギバーガーを食われたせいなんだよね。」
「は?」
・・・つまりはこう。
師匠たちは街に行って、手分けして、報告やら換金していたらしい。
イズマさんの用事が先に終わって、冒険者ギルドの休憩所で先にお弁当に手をつけた。
常日頃、無表情で、あまり食に興味がないイズマさんが1人で何か食べているのも目を惹くが、それが店で売っていないモノであり。
それだけで、ギルド内はちょっとザワつき。
また、そこはかとなく嬉しそうな空気を醸し出しながら食べていたらしく、無表情男に春が来たのかと大騒ぎ。
・・・ただ、ザンギが好きなだけなのにねぇ。
仲の良い冒険者が、ちょっと寄越せとなったらしい。
イズマさんは断ったのだが、絡まれている間に、取られたらしい。
・・・ドコの中学生ですか??
その冒険者が、依頼帰りで疲れていたのも悪かったみたいで。
ザンギ食べた途端、体力回復ポーション使ったように、回復したもんだから。
そりゃもう、大騒ぎだよね。
この肉何だ、から始まり。
どこで買えるだの、情報秘匿するなだの、一触即発の状態に。
騒ぎがどうにもならなくなり、冒険者ギルドのギルドマスターが出てきたと。
その間に、現場見た冒険者から、ドコで買えると、商業ギルドに問い合わせが行き。
そっちも初耳の情報のため、真相確認で大騒ぎ。
取らぬ狸の何とやら。
飲食店で扱うのか、薬屋で扱うのか、と、話が一気に進んで、そこで揉めるようになってしまった。
師匠たちが合流した段階では、もうどうにもできない状態だったそうな。
だから、イズマさんがごめんなさいしてるって話。
別にイズマさんの所為でもないよねー。
イズマさんザンギ好きなの、顔に出ただけだからねー。
作った方としては嬉しいだけで。
・・・しかしまぁ。
食い物チート改革する気ないんですけど。何てこったい。
「別に構いませんよ?・・・でも、材料揃って、レシピあれば、行かなくても良いんじゃないんですか?」
「誰も知らない概念だったことから、扱いの説明が必要なこと。あと、レシピってのは販売できるから、使用料が取れるんだ。」
特許みたいなモン?
でも、集落の皆さんに教えちゃってるしなぁ。秘匿するモンでもないよね?
医食同源は、元の世界では当たり前だったし。
「情報秘匿は今更な気もするので、一斉開示でも良い気もしますが・・・カン君どう?」
「美味しいモノが食えるなら、それに越したことはないっスけど。でも、それによって、生姜が足りなくなるとか、薬草類が値上がりするなら、本末転倒っスよね。」
「そっかー。その問題もあるのかー。」
うーん。どうするのが良いかなぁ?
悩んでもしゃーないので、とりあえず、集落の皆さんと検討。
すると判明した事実。
【薬師持ちの人が作った薬草入り料理にしか、効果付与はつかない】
狩人陣が作ったザンギと、薬師陣が作ったザンギで違いが明確。
同じ材料、同じ工程、作る人だけ違う、となって初めて分かった。
あとは、材料の薬草の鮮度や保存状態、薬師スキルの熟練度によって、効果強度が変わるみたい。
・・・結局は、薬扱いだよね。
となると。
効果付与は、薬師にしか無理と前提条件出した上で、ザンギの作り方は一斉に提示。
で良いんじゃないか?という結論に。
レシピは商業ギルドに登録するけど、アレンジはご自由に。
材料替えなどのアレンジについては使用料求めないとした。
結局、薬扱いにせざるを得ないし。薬草類の値が跳ね上がったりすることはないかな?
あとは、元祖は名乗らせない程度の管理で良いかなぁ?と。
効果付与が無くても、ザンギは美味しいし。
私が色んなの食べたいし。
生姜醤油の下味じゃなければ、唐揚げだしね。
あと、この考え方が定着すれば、薬師さん作の薬草入り食事やお菓子で、気軽に滋養強壮が図れるかも。子どもだって苦い薬よりは、お菓子の方が食べやすいし。
方向性がハッキリした所で、街に行くことに。
ある程度、味見用のザンギを作って、持っていくことにもした。
「お前らのギルド登録もそろそろしても良いかと思っていたから、丁度いいだろう。」
師匠が呑気に言ってくる。
・・・これってフラグってやつかなぁ。
厄介ごと起こるのかなぁ。
何か、オラ、ワクワクしてきたぞ。
隣で、カン君がため息をつく。
「・・・リンさん、悪い顔してますよ。」
えー、ソンナコトナイヨー
とりあえず、相棒はいつでも取り出せるように準備しておこうっと♪
**************
すぐにギルド騒動の予定だったのに。
食い物が絡むと先延ばしになるのはなぜだろう。
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