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異世界で生きるために
10.朝から肉 ※ 解体描写あり
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※ 解体シーンあります。
**************
夜中にカン君と見張りを交代。
疲れていたのだろう、彼も速攻で眠りに落ちていた。
彼の寝顔を横目に、焚き火に枯れ枝を焚べながら、ボンヤリと考える。
暗闇に呑まれるように、薄暗い思考が頭をもたげる。
本来なら、私だけ転移だったんじゃなかろうか。
彼は、私に巻き込まれたのではなかろうか。
トラブル寄せ体質・・・
漠然としているのに。
妙な確信をもってしまう。
「ゴメン・・・」
きっと巻き込んだ。
これからも、何か起こると思う。
でも。
君は死なせない。
いつか、戻れるかもしれない時まで。
そんな事を、考えていた。
***
見張り、と言いながらも、途中うつらうつらしてしまう。
ただ、音には敏感になっていたようで、微かな葉擦れの音にも覚醒を繰り返していた。
「結界とか、獣避けとか、あるのかなぁ・・・?」
あれば野営は楽だよね、と独りごちる。
ふと顔を上げると、空が白々としてきた。天気は良さそうだ。
スマホを取り出してみる。朝4時50分。
無論、スマホも無線も圏外。
充電の残りは2/3。
異世界テンプレの魔力で動く、とかになれば良いのにな。
でも、繋がらなきゃ、意味ないのか。
スマホをズボンのポケットにしまうと、大きく伸びをした。
川に行き顔を洗う。程よく冷たくて目が醒める。
昨日はあまり気にしていなかったが、川の水もとても澄んで綺麗。
魚影が見えた気がしたけど、獲る気は無いので放っておく。
それよりも、試したい事があるのです。
川近くに軽く穴を掘る。
大きめの平らな石を穴の横に置き、そこらに生えていた大きめの葉っぱを敷く。ガスバーナーとナイフをセット。
薄手のビニール手袋をはくと、バックから昨日獲ったスーピーを取り出す。
獲った時のまま、温もりがある状態。
とりあえず1羽だけにしよう。
ちなみに、カン君の複製は、スーピーはできたけど、ビガディールは不可だった。角も複製不可。
動物は良くて、魔獣はアウト?
謎は深まるばかりなり。
何気に鑑定をかけてみると、【スーピー(動物)の死骸:食用可。マガモ。】との表記。
・・・何か、朝から脱力。そうか、マガモだったか。
とりあえず、鑑定さんは、ココでの生活を全力サポートしてくれる、って事で良いのかな。
気を取り直して、スーピー・・・もう鴨でいいや、の羽をむしる。むしった毛は穴に入れる。
丸裸にすると、足をもって、バーナーで全体を炙って、産毛を焼く。
川で、炙った体を洗う。洗いながら、残っていた毛の根元も出来る限りむしり取る。
ここからが本番。
解体用ナイフを用い、鴨を解体。
正中線を切り、腹を開く。食道と、直腸を切り取り内臓を取り出す。
お腹を再度川で洗い、血合いを除去。
内臓はどうしよう・・・砂肝とハツは捨てがたいんだけど。ゆっくり血抜きをする状況にもないので、泣く泣く穴にポイ。
頭を落とし、モモ、ムネ、手羽・・・切り分けていくのだが、自分でも驚くくらいに迷いなくナイフが進んでいく。
狩猟読本に載っていた解体手順通りに手が進んでいく感じ。
あっという間に、1羽の解体が終了。
毛をむしる時間はかかったが、解体そのものに5分もかからなかった。
いつもなら脂で手が滑ったりして、結構時間かかるのに。
これが、スキルの効果なんだろうか。
だとしたら。
・・・すっごいラク。めっちゃ助かります。
アイテムボックス内の鹿モドキの解体も、サクサク出来るなら良いなぁ。今やる気はないけど。
さて。
鴨肉をブロック毎に適当な大きさに切り分ける。軽く塩と胡椒を振り、おにぎりを包んでいたアルミ箔で肉を包む。
調味料セット・・・塩、胡椒、醤油、七味唐辛子、砂糖をそれぞれ小瓶に入れたポーチが、バックの中に入りっぱなしで助かった。
さっきあったの思い出したよ。後でカン君に複製しておいてもらおう。
包んだ肉は、下火になっていた焚き火に突っ込む。
良い感じに蒸し焼きになってくれたら良いなぁ、と、新たに細かい枯れ枝を焚べた。
パチパチと、焚き火の爆ぜる音を聞きながら、即席解体場の片付けをする。
といっても、まな板がわりに使っていた葉っぱを穴に被せ、埋め戻すだけだけど。
粗方片付いて、焚き火に戻ったところで、カン君が起き出した。
寝起きは良くないようだ。ボーっとしている。
「おはよー。」
「・・・おはようございます。」
「顔洗っといでー。もうちょいで、肉焼けるよ。」
「にく?」
手ぬぐいを差し出すと、緩慢な動作で受け取り、のそのそと川に向かっていった。
その間に、生木でつついてアルミ箔を取り出す。
「あちちっ」
アルミ箔を開けると、一気に蒸気が飛び出し、鶏皮の焼けた香ばしい匂いが辺りに漂う。
中にはしっかり熱が通った鴨肉が鎮座している。
上手くいったみたい。味足りなかったら、醤油をかけよう。
肩越しにカン君が覗きこんできた。
「・・・いい匂いがする。」
「昨日の鴨1羽捌いてみた。スキル効果なのか、めっちゃ早く解体できたさ。」
「解体スキルすげ・・・この匂い、腹減りますね。」
「とりあえず食べるべし。」
カン君を座らせ、おにぎりにお茶のポットを取り出すと、両手を合わせる。
「「いただきます。」」
一口大のムネ肉を口に入れる。
じゅ、と肉汁が飛び出してくる。
野性味溢れる鉄っぽい匂いだけど、噛み締めると鶏肉の旨味が溢れでてきた。
1日ぶりの肉らしい肉。お腹に染み渡るわぁ。
本当なら昨日の夜はみんなで鴨鍋だったからなぁ。
今年の鴨解禁は、異世界で、って。
・・・悔しいから、人里に降りれたら鴨鍋したろ。
「・・・んまいっス!」
「ん。良かった。」
モモ肉の骨を掴んで、ガツガツと美味しそうに食べる。男子だねぇ。
「散弾あるかもしれないから、良く噛んで食べてねー」
コクコクと頷きながらも、口いっぱいに頬張り食べ続ける彼を見ていると、何だか微笑ましくなる。
・・・近所の子を見ているおばちゃんだな、思考が。
あっという間に食べ終わり、満たされた気分になる。
今日も頑張れそうだ。
「じゃ、片付けて、出発しよか。」
「はい。」
暖かめな気温なので、干していた上着類やベストは、アイテムボックスの中へ入れた。
焚き火は消して、カマドも崩しておく。
周囲を確認し、バックパックを背負う。
「忘れ物はないねー。んじゃ、行こか。」
「了解。」
私たちは、笑顔で出発した。
今日の目標は、人里へたどり着く、だ。
**************
おかしいなぁ。
もう出発して、人里に行ってる回だったハズが、解体して肉喰うだけの回になってしまった・・・
**************
夜中にカン君と見張りを交代。
疲れていたのだろう、彼も速攻で眠りに落ちていた。
彼の寝顔を横目に、焚き火に枯れ枝を焚べながら、ボンヤリと考える。
暗闇に呑まれるように、薄暗い思考が頭をもたげる。
本来なら、私だけ転移だったんじゃなかろうか。
彼は、私に巻き込まれたのではなかろうか。
トラブル寄せ体質・・・
漠然としているのに。
妙な確信をもってしまう。
「ゴメン・・・」
きっと巻き込んだ。
これからも、何か起こると思う。
でも。
君は死なせない。
いつか、戻れるかもしれない時まで。
そんな事を、考えていた。
***
見張り、と言いながらも、途中うつらうつらしてしまう。
ただ、音には敏感になっていたようで、微かな葉擦れの音にも覚醒を繰り返していた。
「結界とか、獣避けとか、あるのかなぁ・・・?」
あれば野営は楽だよね、と独りごちる。
ふと顔を上げると、空が白々としてきた。天気は良さそうだ。
スマホを取り出してみる。朝4時50分。
無論、スマホも無線も圏外。
充電の残りは2/3。
異世界テンプレの魔力で動く、とかになれば良いのにな。
でも、繋がらなきゃ、意味ないのか。
スマホをズボンのポケットにしまうと、大きく伸びをした。
川に行き顔を洗う。程よく冷たくて目が醒める。
昨日はあまり気にしていなかったが、川の水もとても澄んで綺麗。
魚影が見えた気がしたけど、獲る気は無いので放っておく。
それよりも、試したい事があるのです。
川近くに軽く穴を掘る。
大きめの平らな石を穴の横に置き、そこらに生えていた大きめの葉っぱを敷く。ガスバーナーとナイフをセット。
薄手のビニール手袋をはくと、バックから昨日獲ったスーピーを取り出す。
獲った時のまま、温もりがある状態。
とりあえず1羽だけにしよう。
ちなみに、カン君の複製は、スーピーはできたけど、ビガディールは不可だった。角も複製不可。
動物は良くて、魔獣はアウト?
謎は深まるばかりなり。
何気に鑑定をかけてみると、【スーピー(動物)の死骸:食用可。マガモ。】との表記。
・・・何か、朝から脱力。そうか、マガモだったか。
とりあえず、鑑定さんは、ココでの生活を全力サポートしてくれる、って事で良いのかな。
気を取り直して、スーピー・・・もう鴨でいいや、の羽をむしる。むしった毛は穴に入れる。
丸裸にすると、足をもって、バーナーで全体を炙って、産毛を焼く。
川で、炙った体を洗う。洗いながら、残っていた毛の根元も出来る限りむしり取る。
ここからが本番。
解体用ナイフを用い、鴨を解体。
正中線を切り、腹を開く。食道と、直腸を切り取り内臓を取り出す。
お腹を再度川で洗い、血合いを除去。
内臓はどうしよう・・・砂肝とハツは捨てがたいんだけど。ゆっくり血抜きをする状況にもないので、泣く泣く穴にポイ。
頭を落とし、モモ、ムネ、手羽・・・切り分けていくのだが、自分でも驚くくらいに迷いなくナイフが進んでいく。
狩猟読本に載っていた解体手順通りに手が進んでいく感じ。
あっという間に、1羽の解体が終了。
毛をむしる時間はかかったが、解体そのものに5分もかからなかった。
いつもなら脂で手が滑ったりして、結構時間かかるのに。
これが、スキルの効果なんだろうか。
だとしたら。
・・・すっごいラク。めっちゃ助かります。
アイテムボックス内の鹿モドキの解体も、サクサク出来るなら良いなぁ。今やる気はないけど。
さて。
鴨肉をブロック毎に適当な大きさに切り分ける。軽く塩と胡椒を振り、おにぎりを包んでいたアルミ箔で肉を包む。
調味料セット・・・塩、胡椒、醤油、七味唐辛子、砂糖をそれぞれ小瓶に入れたポーチが、バックの中に入りっぱなしで助かった。
さっきあったの思い出したよ。後でカン君に複製しておいてもらおう。
包んだ肉は、下火になっていた焚き火に突っ込む。
良い感じに蒸し焼きになってくれたら良いなぁ、と、新たに細かい枯れ枝を焚べた。
パチパチと、焚き火の爆ぜる音を聞きながら、即席解体場の片付けをする。
といっても、まな板がわりに使っていた葉っぱを穴に被せ、埋め戻すだけだけど。
粗方片付いて、焚き火に戻ったところで、カン君が起き出した。
寝起きは良くないようだ。ボーっとしている。
「おはよー。」
「・・・おはようございます。」
「顔洗っといでー。もうちょいで、肉焼けるよ。」
「にく?」
手ぬぐいを差し出すと、緩慢な動作で受け取り、のそのそと川に向かっていった。
その間に、生木でつついてアルミ箔を取り出す。
「あちちっ」
アルミ箔を開けると、一気に蒸気が飛び出し、鶏皮の焼けた香ばしい匂いが辺りに漂う。
中にはしっかり熱が通った鴨肉が鎮座している。
上手くいったみたい。味足りなかったら、醤油をかけよう。
肩越しにカン君が覗きこんできた。
「・・・いい匂いがする。」
「昨日の鴨1羽捌いてみた。スキル効果なのか、めっちゃ早く解体できたさ。」
「解体スキルすげ・・・この匂い、腹減りますね。」
「とりあえず食べるべし。」
カン君を座らせ、おにぎりにお茶のポットを取り出すと、両手を合わせる。
「「いただきます。」」
一口大のムネ肉を口に入れる。
じゅ、と肉汁が飛び出してくる。
野性味溢れる鉄っぽい匂いだけど、噛み締めると鶏肉の旨味が溢れでてきた。
1日ぶりの肉らしい肉。お腹に染み渡るわぁ。
本当なら昨日の夜はみんなで鴨鍋だったからなぁ。
今年の鴨解禁は、異世界で、って。
・・・悔しいから、人里に降りれたら鴨鍋したろ。
「・・・んまいっス!」
「ん。良かった。」
モモ肉の骨を掴んで、ガツガツと美味しそうに食べる。男子だねぇ。
「散弾あるかもしれないから、良く噛んで食べてねー」
コクコクと頷きながらも、口いっぱいに頬張り食べ続ける彼を見ていると、何だか微笑ましくなる。
・・・近所の子を見ているおばちゃんだな、思考が。
あっという間に食べ終わり、満たされた気分になる。
今日も頑張れそうだ。
「じゃ、片付けて、出発しよか。」
「はい。」
暖かめな気温なので、干していた上着類やベストは、アイテムボックスの中へ入れた。
焚き火は消して、カマドも崩しておく。
周囲を確認し、バックパックを背負う。
「忘れ物はないねー。んじゃ、行こか。」
「了解。」
私たちは、笑顔で出発した。
今日の目標は、人里へたどり着く、だ。
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