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異世界で生きるために
8.お腹すいたし、状況整理
しおりを挟む「お腹も空いたので、食べてから整理しよか。」
焚き火の側に腰掛けると、バッグから、梅おにぎりとお茶の入ったポットを取り出す。
カン君も隣に腰を下ろし、コンビニおにぎりを取り出した。
気を張っていたせいか、あまり食欲はなかったのだけど、落ち着ける場所で食べ始めると、空腹を思い出したかの様にお腹が鳴った。
一気に食べてしまいそうになるのを我慢して、モグモグとよく噛みしめる。
梅の酸っぱさが疲れた身体に心地よい。
1Lポットに入っていたお茶を、内蓋のコップに入れる。
アイテムボックス?の効果なのか、ポットに入れた時の熱さのまま、冷めていないようだった。
口に含むと、スッキリとした香りが鼻を抜けた。それだけで落ち着く。
一気に飲み干すと、また入れてカン君に差し出す。
「暖かいの、飲む?」
「・・・ありがとうございます。」
彼は、口におにぎりを頬張ったまま、お茶を受け取り飲み干すと、一息つく。
「うまいッス。ご馳走様です。」
少し緩んだ表情で、お礼を言いながらコップを返してきた。
お腹があったまると、落ち着くよね。
デザートの代わりに、小分けチョコレートを取り出し、2個ずつ分ける。
カン君は、口元を緩めてそれを受け取った。
さて、本題。
それぞれが思っている事を話しながら検証していく。
・場所は、地球上じゃないことは確実。多分異世界の森の中。
・持ち物は、狩猟の際に持っていたものがそのままある。バックパックが、アイテムボックス化。持ち主は固定。アイテムボックスの中はテンプレ通りに時間は止まっている様子。先程、ハエのような虫を生きたまま入れようとしたが入らなかったので、生物は不可と思われる。
・アイテムボックスの中に入ると、リスト表記。状況により、表記に変化がある?
・魔獣に対して、猟銃の威力は増大?鴨が普通に撃てたのは、動物だったから?
→使用した弾が違うので、要検討。
「しかしまぁ。異世界テンプレの、神様系に出会うがなかったねぇ?」
「事故なんかで、死んだわけでもないッスからね。」
「完全迷子的な感じかなぁ?・・・帰れるべか?」
「それは何とも。」
「向こうでは、どう処理されてるんだろねぇ。神隠し?車は残ってるから、遭難扱いかなぁ?みんなに迷惑かけるなぁ。」
現実を考えて、どんよりしてくる。
失踪人扱いかなぁ?2人揃って居なくなるってなぁ・・・
「そこ考えても仕方ないッスよ。意図して来たわけじゃないし。」
「そだね。とりあえず、ココでの生存確率を上げる事を考えよう。」
再度検証を開始。物語上よくある異世界テンプレを考えてみる。
アイテムボックスがあったとなれば。
「ありがちなのは、ステータス、とか、鑑定とか?」
「そっスね。」
ステータスオープン、と唱えてみても、うんともすんとも言わない。何か恥ずかしい。
「ダメぽ?」
「ですね。」
「じゃ、鑑定。・・・おぉ。」
自分の手を見ながら鑑定と呟いてみると、半透明なウィンドウが現れた。
まじまじと眺める
================
名前:佐伯 鈴
年齢:19
性別:女
種族:人間
職業:無職
スキル:狩猟・解体・採取
魔力:全適性
================
とりあえず、突っ込みは置いといて。
カン君も、鑑定。
身体にかかるように、半透明ウィンドウが現れる。
================
名前:神凪 葵
年齢:18
性別:男
種族:人間
職業:無職
スキル:採取・複製
魔力:全適性
================
ふむ。ゲーム的なレベルとか、HPとかMPとか、経験値とかの概念ではなさそうな感じ。
まず確認すべきは。
「10代だよ。詐欺だね。」
「俺が老けてるって、ことっスか?」
カン君の見た目は全く変わらないが、18歳設定。
私は、15も若返りました。お肌のハリが違うわぁ。
軽口を叩きながら、他の確認をする。
職業、無職って・・・
でも、わざわざ職業欄があるって事は、社会生活があると判断して良いのかなぁ。
半透明ウィンドウに触れることはできず。スキルの説明が出ないか念じてみたりしたものの、無反応。
スキルは人里で聞いてみないと分からなさそう。
でもまぁ、私のスキル狩猟・解体は、ハンターに関するものだろう。採取も、山菜とか採ってたしなぁ。
したら、職業ハンターでも良くね?
それよりも気になるのは。
「カン君、複製はどうできるのかな?」
現持ち物、食料系が複製出来るなら、この先心強い。散弾だって有限だし。
期待を込めて見ている私に、若干引きながら、彼は色々試し始めた。
結論。
アイテムボックス内の物は複製が出来る。
但し、できないものもあり。
カン君のカメラ、私の猟銃、スマホに無線機は不可だった。
弾の複製は可能。消耗品はokなんだろか?
箱の中にあった、散弾15発とスラッグ弾7発は、箱ごと複製できた。保険で3箱ほど作ってもらい、オリジナルをカン君に持っていてもらう事にした。
威力が変わらないかは、明日検討。
おにぎり、甘味、水筒やペットボトルを複製した事で、当面の食料問題が解決し、心に余裕が生まれた。
複製おにぎりを1つ食べてみる。
オリジナルと変わらないおにぎりで安心する。
「ところで、結構複製したけど、具合悪いとか、眠いとかはないかぃ?」
「使ってる最中に、フワッとした感覚はありますが、疲労が溜まるとか具合が悪いとかはないっスね。」
魔力全適性とか書いてるから、きっと複製スキルは魔力による発動と推測するけど、あまり消費しないのかな?
でも、残量が分かるわけじゃないので気をつけた方が良さそう。
で、魔力。
「魔法アリの世界って事でよいのかね?」
「色々不思議現象から察するに、そうじゃないかと。」
試しに、ゲームの魔法攻撃呪文を唱えて見たものの、発動はせず。
発動条件や修行が必要なのだろうと結論付け、これも人里で確認した方が良い事項とした。
さて。人里降りられたらどうするか。
「設定考えとこか。」
「設定、スか?」
怪しまれない程度に、口裏合わせはしておいた方が良いだろう。
幼馴染、というほどお互いを知らないので、仕事場の仲間、という事にしておく。本当の事だしね。
採取仲間の私たちは、故郷の森で薬草採取に入ったら、光に飛ばされた。
従って、此処は何処か分からんので教えてほしい。
文字はどうか。どんな社会形態か。
魔力って何ぞや。
ココでの生き方や闘い方も教えて欲しい、までいけたら良いかな。
穴だらけだけど、そんな感じで。
名前は、私は鈴(すず)を変更して、リン。カン君は名前が葵だけど、カン、とすることにした。
銃とかカメラは一先ず秘匿する事にした。
明日は、鑑定しながら適当に採取していこう。お金はないので、物々交換か、買取してもらう用に。
気がつけば、すっかり辺りは闇に包まれていた。スマホを見ると、21時。
少し肌寒くなったため、アルミシートを取り出し、カン君にも渡して、包まる。
色々考えて、先が見通せた安心感で眠気がきた。
「眠いっすか?」
あくびを噛み殺していた私に気がついたカン君が聞いてくる。
「ちょっとね・・・安心したら、眠い。」
「周辺警戒は俺がするんで、寝てください。」
ふ、と笑うカン君。
警戒と、体力回復を考えて、先に寝かせて貰おう。
スマホアラームを1時にセットして、カン君の隣で身体を横にする。
「ゴメンね。いちお、1時にアラームかけたけど・・・その前にカン君が眠くなったら起こして・・・」
言いながら、私の意識は遠のいていった。
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