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狩りガールの日常
4.いざ出発
しおりを挟む北の大地の10月早朝は、10度を切る肌寒さ。
ミニジープを走らせ、約束場所のコンビニへと向かう。
着いたのは45分だったが、すでにノッポな影が見えた。
運転席の窓を開けて、声をかける。
「おはよー。」
「・・・おはようございます。よろしくお願いします。」
朝から寒かったのだろう。カンくんは、頬を染めて律儀に頭を下げた。
白いウインドブレーカーに、厚手のジーンズ、黒の細め長靴。山の中寒くないかな。後で首巻き用の手拭い貸すか。
「じゃ、行こうか。助手席乗って。」
無言で頷き、彼は肩に掛けていたバックパックを前に抱え直し、助手席に乗り込んだ。
・・・わぁ、天井に頭擦りそう。
****
集合場所に到着すると、大体の面々が揃っていた。
会長をはじめとした皆に、カン君を紹介。あくまでカメラマンの立ち位置と伝える。
快く了承してもらい、夜の総会後の宴会にも誘ってもらえていた。
無論「やるんだべ?」オーラがダダ漏れだけどね、おじ様たち。
その子無表情に見えるけど、引き気味だから。朝だから、そのくらいにしといたげて。
5時前には、参加者全員が揃い、会長から注意事項の確認があり、移動開始。
15分程車を走らせた、一番奥の沢からが、今日のスタート。
カン君と、とりとめのない会話をしながら、猟場に到着。山道の邪魔にならない位置に車を止めて、準備開始。
弾帯を腰に巻く。いつもなら、天気に合わせてバックの中身を車に置いたりするんだけど、時間もないので、そのまま背負った。
銃カバーを全部外し、ハードカバーは車内に、ソフトカバーをポケットに入れる。銃口を下に開閉レバーを開け、脱包確認。銃床を持ち上げ銃身を戻すと、スリングに腕を通し、肩に掛ける。
ズシッと肩にかかる重みが心地よい。これで、準備完了。
車の戸をそっと閉めると、ボンネット越しにカン君が見える。首からカメラを下げて、緊張の面持ち。
おじさんたちも、それぞれ準備を済ませて、最初の猟場である沢に向けて歩き出していた。
太陽の光が強くなり、白々していた空がオレンジ色に輝きだす。そろそろ日の出だ。
「じゃ、いこか。」
先に行くおじさん達の背中を指差して、カン君を促す。
すると、ぎこちなく頷いた彼の糸目が、急に見開いた。
「・・・?」
何かと思って、後ろを向くと急に眩しい光に包まれる。
「ぅわっ?」
色気も何もない声をあげ、思わず腕で顔を覆う。
「佐伯さんっ!?」
カン君の焦った声が聞こえた。
ドン、と背中に衝撃が伝わり、鎖骨辺りを何かにロックされる。
光は目を開けていられないほどに強くなり。意識が薄らいでいく。
デカイ声出せたんだね・・・でも、そんな声出したら、鴨逃げちゃうなーと、思いながら。
そして、目の前が暗転した。
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