393 / 393
ひと狩り行こうぜ!リターンズ
374.ひと狩り行こうぜ!リターンズ 其の十
しおりを挟む轟竜の地を這うような咆哮が響き渡る。
麻痺効果が切れかかっているのか、次第に身体に力が入っていくようだ。
咆哮を上げながら、辺りを見渡す様子がある。
私の姿を探しているのだろうが、今はまだ【 隠密 】が効いているので、此方の気配を掴めずにいるみたいだ。
どんどんとイライラが増しているような、凶々しい気配になっている。
「リンさん、いまのうちに。」
「ん。」
空間収納から、スラッグ弾を取り出して雷属性の魔力を充填。入れれるだけ腰の弾帯にセットする。
無属性の麻痺弾も散弾に充填して4発ほど用意。3発は弾帯に、1発は銃剣へ装填した。
「コレも持っておいて下さいね。」
「ありがと。使い切ってすっからかんだった。・・・ん、でもこんなには・・・」
「別に、収納を圧迫するわけじゃないし。備えあれば憂いなし、っスから。持ってて下さい。」
カンくんが、ざらざらと湯水のように特製魔石を出してくる。
【 保護 】【 魔盾 】【 迅速 】【 攻撃倍加 】・・・
よくもまぁ、こんなに作ったね、ってほどに。
「だって、こーくんや後から来るかもしれない人の分・・・」
「気にしなくていいっス。まだいっぱいあるんで。」
「そ、そう・・・じゃ、ありがたく。」
「えぇ。持ってって下さい。」
ある程度返そうとしたけど、彼はにこぉ、と笑みを浮かべ押し付けてくる。断れない圧。
まぁ・・・くれる、って言うんだから、大人しくもらっておこう。
弾帯の腰側につけた、ただの小さいポーチの中に、【 保護 】の魔石を、あとは空間収納の中にザラザラとしまう。
物資は潤沢、気力も体力も回復。
何せ・・・ひとりじゃない。
さっきまで、1人ででも大丈夫って踏ん張っていたけど。
付与魔石無くなって、魔力も枯渇しかけて、もうダメかもという不安がのしかかっていた。
それが、
一緒に戦える仲間がいる。
背中を預けられる人がいる。
それだけで、虚勢を張って押し込めていた不安が霧散していく。
現金だなぁ、とつくづく思う。
「さーてと、準備万端です。行きますか。」
「オッケーっス。んじゃ・・・
【 障壁 】【 迅速 】 【 攻撃倍加 】!」
またまた仕切り直しの、第3ラウンド。
今度は粘った泥試合の末の、引き分け狙いじゃなくて。
討伐 を狙いに行くんだ。
「そんじゃ・・・GO!」
過保護な位の支援魔法を目一杯身体に受けて、私は飛び出す。
ーーー GYAAAAAAA!
飛び出した私に気づいた轟竜の咆哮が響き渡る。
麻痺効果が切れ、私を捕捉した轟竜は、一直線に私に向かってこようとして。
「ーーーいくっスっ! 【 麻痺緊縛 】!!」
そのまま、カン君が放った罠にかかった。
「ナイスタイミングっ!!」
ガクン、と轟竜の動きが止まる。
走る勢いのまま、銃剣の切っ先でダメージを重ねてきた左後脚の傷痕を狙い連斬りする。
ーーー GYAAAAAAA!
怒りの所為なのか、麻痺から回復するのが早い。
私が居た場所に目がけて、尻尾を振り回してきた。
「もう一丁!!」
離脱の瞬間、コレでもかって位に魔力を込めて、傷痕目がけて雷撃を放つ。
発射の反動をそのまま生かして、轟竜から離れる。
尻尾の先が頭上を越えていった。
傷痕に雷撃が効いたのか、轟竜は、闇雲に暴れ回る。
私は、リーチの長い尻尾の攻撃が当たらない位置まで下がり、傷痕目がけて再度雷撃を放つ。
次の瞬間に、轟竜は私を捕捉し、向かってくる。
回避して、斬撃、離脱。
完全に敵愾心が私に向けられる。
その隙に【 隠密 】をかけたカン君が、私に支援魔法を飛ばしたり、【 麻痺緊縛 】を仕掛けたり。
時々、【 雷撃 】を飛ばすけど、攻撃魔法を使うと一気に敵愾心が上がるのか、カン君の【 隠密 】が解除状態になって、タゲられてしまうみたいで。
しかも、攻撃力も高いせいか、また私に敵愾心を戻すのが大変になってしまう。
何回か繰り返しているうちに、私が引き付けて、カン君が【 麻痺緊縛 】を仕掛け、引っかかったら【 雷撃 】を撃つ、というのが効率良さそうな攻略法と判断。
そこからは、一気に作業と化した。
20
お気に入りに追加
1,009
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(580件)
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。



無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

王国冒険者の生活(修正版)
雪月透
ファンタジー
配達から薬草採取、はたまたモンスターの討伐と貼りだされる依頼。
雑用から戦いまでこなす冒険者業は、他の職に就けなかった、就かなかった者達の受け皿となっている。
そんな冒険者業に就き、王都での生活のため、いろんな依頼を受け、世界の流れの中を生きていく二人が中心の物語。
※以前に上げた話の誤字脱字をかなり修正し、話を追加した物になります。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
書き直し?で、消してしまわれたので、読めなくなった所の話まで進めて早く続きを読みたいです。
別でも良いので、今の続きの改訂前の話を投稿して欲しいです。
近況で生存報告だけでも御願い致します。
数日かけて全話読破してしまいました。
更新を楽しみにしています
更新ありがとうございます✨
待ってました( ´ ▽ ` )ノ