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キャットファイト?
364.火蜥蜴退治対決 其の九
しおりを挟む・・・ああ、くさくさする。
イラついても、ムカついても仕様のない事だけど。
それが、『氷戦神』のやり方なんだ。そうやって、やってきたんだ。
自分達が一番で。立場にあぐらをかいて、研鑽しないで。
権力使って優秀な冒険者達を追いやって。
人の獲物を奪い取って自分の手柄にして。
ランクが下の者達を虐げて。
結局、自分達じゃ倒せない魔獣がいるから、こーくんに寄生しようとしている。
そんな奴らがクラスAな所為で、煮え湯を飲まされてる冒険者達がいる。
・・・そんな事しなくたって、自分達の力だけで、真っ当なクラスAになれる素質はあるのに。
「あ゛ーーーっ!ムカつくんだよっ!!!」
重力弾ばら撒いて、周囲にいた火蜥蜴を一気に拘束。
駆ける勢いそのままにジャンプして、火蜥蜴の頭に乗り、脳天に剣先突き刺して、脳天一撃。
剣先に引っ掛けて、即、腰のポーチへ入れてるフリで空間収納へポイ。
そのまま、義経の八艘飛び宜しく、次の獲物にジャンプ。
それを繰り返す。
火蜥蜴はみーんな、空間収納へ消える。
だからね。
「・・・あのさぁ、付け回しても、私の狩った火蜥蜴は、全部回収するから、討伐部位取れないよ?諦めたら?」
ずっと背後から付け回している青丸2個へ、振り向きもせず大声で言い放つ。
「さっきの“討伐部位を狙いにきた”って。そんな事第一声で言えるの、自分達がやってるからだよね。恥ずかしくないの?阿呆なの?馬鹿なの?」
背後にいる彼等が、ビクつく気配がする。
どうせ彼等は荷物持ちだ。
命令されてやってるのかもしれない。
何か弱みを握られてるのかもしれない。
でも、そんな事、知ったことか。
片棒担いだ時点で、同じ穴のムジナだ。
「・・・村を守ろうと、必死こいて、がんばって格上の火蜥蜴を倒した下位クラスのパーティーの、討伐部位を掠め取るのが正義なの?そんな事して勝負に勝って何が残ンの?それで勝っても、そんな性根の腐った奴らなんかと、こーくん・・・コウラルがパーティーなんて組む訳ないべさ。ホント舐め腐ってるよね。」
独り言のように、話し続ける。
その時、ぐぁ、と、火蜥蜴が口を開けた。
後で息を呑む気配を感じたけど。
躊躇いなく、その口に銃口を向け、苛立ち混じりに氷属性弾をぶっ放した。
ばきり、と音を立てて全身凍りついた火蜥蜴は、そのまま地に沈む。
ホントにイライラが募りすぎる。
それでなくても、奥に居る『何か』の方が脅威なのに。
近づいても索敵範囲に空白地帯。
あの時と同じ。
ルイジアンナ村近くで大量発生したイグバイパー。
あの原因は、風属性の劣竜種が巣くったから。
多分、あの時と同じ現象が起きてる。
火蜥蜴が奥からこぞって出てくるのは、それ以上の脅威があそこに居るから。
「竜種、だろうなぁ・・・」
空白地帯の方を向いて、思わず呟いた。
とりあえず、目に見える範囲での火蜥蜴は片付けた。
一人は心細いけど。
斥候はした上で、アルに連絡させようか。
そんな事をグルグルと考えていたその瞬間。
ーーー GYAAAAAAA!!
地を揺らす程の咆哮が一度だけ聞こえた。
ビリビリと身体が痺れる・・・思わず萎縮して動けなくなるような、そんな状態異常が起こりそうな咆哮。
ふと、後ろを振り返ると、『氷戦神』の荷物持ち達が腰を抜かしてへたり込んでいた。
「死にたくなければ、さっさと帰ったら?」
冷たく言い放ち、腰のポーチから取り出すフリで、魔石を3つ無限収納から取り出す。
「【付与・解放】」
【 保護 】と、【 魔盾 】、そして【 迅速 】が身体に付与される。
「アル、行くよ。」
ステルス状態で付いてきてくれてるであろうアルに声をかけた。
すると左肩に、ちょん、と止まる気配がする。
そっと手をやると、フワフワなものが触れて、ホッとする。
「・・・よし、行こう。」
大きく息を吐いてから気合いを入れ、私は、良くないモノがいる事が分かっている空白地帯へと向かって駆け出した。
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