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キャットファイト?
360.火蜥蜴退治対決 其の五
しおりを挟むじわじわと前線を押し上げる為、先ずは、と、村の入り口付近で戦っている自警団の皆さんの助太刀に入る。
アグドーグは、前線の冒険者達が押し留めている。
ココにくるのは、その合間を抜けてきたガルサボア。
強くはないが、数が多い。
言うなれば多数の猫に襲い掛かられ、齧られ、引っ掻かれる。そんな感じだ。
馬をそのまま村の中へと突っ込む様にして飛び降り、そのままの勢いで、自警団さん達に群がるガルサボアの塊に銃剣を振るい、一気に両断する。
「A級ライセンス冒険者!リン=ブロックと申します!勝手ながら救援に入ります!」
一応名乗りを上げてから、村入り口付近を一掃。
片付いた所で、少し話す余裕が生まれた。
「大丈夫でしたか!?」
一息ついて振り返ると、呆然と立ち尽くしている自警団の方々。
慌てて声をかけると、ビクッとして動き出した。
「あ、あぁ。すまない。ありがとう・・・あの、A級ライセンス冒険者って話だが・・・」
「はい!ミッドランド支部所属のA級ライセンス冒険者、リン=ブロックと申します。クラスAパーティー『旅馬車』のメンバーです!
とりあえず入口は私が守ってますから、皆さんは一旦村の中で、回復かけてもらうなり、水薬飲むなりして、体制を立て直して下さい!」
「でも、女性1人ではっ!」
「大丈夫です!今ですね、私の仲間が村の周囲を回って魔獣避け撒いて、防御結界の準備をしています!
元気になったら戻ってきてもらっていいですか?!したら、私、皆さんと入れ違いで、前線に向かいますから!」
「あぁっ!ありがとう!恩に着るよ!お前ら早く戻って回復だ!!すぐ戻るぞ!!」
「「「はいっ」」」
団長さんっぽい壮年の男性が、泣きそうな声で周りを叱咤する。
周りの団員さん達も、ちょっと泣きそうだ。
「あ、街の中に突っ込んだ馬さん、借り物なんで、預かっておいてくださぁいっ!」
「あぁ!任せとけ!」
ちょっとふざけた様に言ったら、泣き笑い顔で返してくれてホッとする。
・・・よっぽどしんどかったんだね。
村の中へと戻る彼らを見送り。
迫り来るガルサボアは即一掃。
何か、イズマさんとやった草原デートを思い出すなぁ。
一年も経ってない筈なんだけどさ。
何か毎日が濃密すぎて、凄い昔の出来事のようだ。
周囲に冒険者もいるし、被弾しても嫌だから、銃剣から放つのは、無属性魔法の 【 重力 】に留めている。
ガルサボアの集団の足元目掛けて放ち、動きを阻害して剣先を奮って一掃までのお仕事です。完全に作業ゲー状態。
そうこうしているうちに、村の外周を周り村全体に魔獣を排除する強結界を張る準備を済ませたカン君が戻ってきた。
「【 範囲障壁 】!」
最後に地面に打った魔道具に、魔力を込めたカン君が文言を唱えると、ぶわり、と魔力が走り、村全体が結界に覆われた。
【 保護 】と【 魔盾 】と【 障壁 】は何が違うのかと思ったけど。
カン君曰く、文言は『雰囲気で適当』と言ってたなぁ・・・
物理防御、魔法防御、その両方的な?
という訳で、無事に村をセーフティポイント化するミッションは達成。
私がここを離れても良さげだな。
「リンさーん。【 保護 】っ、【 魔盾 】っ、【 迅速 】っ、【 攻撃倍加 】!
コッチは大丈夫なんで、先行ってくれてオッケーっス!アル付けときますんで、騎士団とかコウさん来次第追いかけますからー!」
「あんがとー!じゃ、そっちはおねがーい。」
私の言葉に、笑顔でサムズアップして応えてくれる。
すっかり逞しくなったなぁ。
安心して後ろを任せられるって、ホント有難いな。
付与魔法で身軽になった身体で駆け出しながら、思わず笑みが溢れた。
***
火蜥蜴の集団が出来たことで、キューケン村に向かって魔獣暴走が起きている状態。
今はまだ、アグドーグ程度だから、立て直すなら今のうち。
とりあえず、目につく冒険者達に手を貸して、アグドーグの集団を捌いていく。
弱りきってるパーティーは、村に戻るように誘導し。
まだ大丈夫そうな人には水薬を渡して頑張ってもらう。
キューケン村は結界に守られてるし、治癒も可能な魔術師が待機してるから、ダメなら無理せず村に戻って体制を立て直すことも念押しする。
そうして、村周囲で頑張っていた冒険者をほぼ救い終えて。
漸く丘陵地へ向かおうとした所で、悲鳴が聞こえた。
「リーダーっ危ない!」
「うわぁっっ!」
見ると、盾役と大剣使いと魔術師系の3人パーティーが、アグドーグに襲い掛かられる所だった。
「やっばっ!」
急いで、アグドーグの足元に銃口を向け、【 重力 】を発射する。
ちょっと力んだから、10頭近くいたアグドーグ達は、潰れた伏せ状態だ。
そのまま、真横から突っ込んで銃剣を振るう。
カン君にかけてもらった【 迅速 】と【 攻撃倍加 】のお陰で、瞬時にぶった斬る。
ふぅ、と一息つくと、冒険者パーティーに向き直った。
「クラスAパーティー『旅馬車』所属、リン=ブロック!助太刀します!!」
吃驚したのか、微動だにしない冒険者パーティー。
さてどうしよか。
「ほら!ボーッとしない!物資が無いなら、さっさと村に戻って補充してきて!今、私の仲間が村に居て結界張ってるから、アソコは安全地帯になってる!回復して物資補充したら、前線に戻って!」
「あ・・・は、はいっ!」
「おーい!大丈夫かぁ!?」
私が叱咤すると、ハッとした様子で彼らは動き出す。
それと同時に、先に私が助けた別の冒険者パーティーがやって来たようだ。
「俺らが代わるから、お前ら村に戻って回復してこい!あ、先程の!さっきは助かりました!」
「すげーよ!アンタも仲間の魔術師の兄さんも!あの人、完璧な結界で村守ってくれてんの!それに回復魔法!疲れまで吹っ飛ぶし!」
口々に興奮した様子で感謝を伝えくれて、ホッとする。
今助けた冒険者達も、次第に表情が落ち着いてきた。
うん、もう大丈夫そうだね。
「あ、そう言えば、火蜥蜴の討伐には、『氷戦神』以外に向かったパーティーって居ますか?」
「あ、はい。6人組の『炎鳥』というクラスBパーティーが・・・サラマンダーは火属性だから、どちらかというと同属性で戦いにくいのに、「クラスBはこの場に自分達しかいないから、足止めする」って、言って。」
「戻って来てますか?」
「いえ、まだ。『氷戦神』が一刻以上前に入って行ったのに、彼らは・・・戻って無いです。」
ぎゅ、と冒険者達は唇を噛み締めた。
ふむ、『炎鳥』というパーティーは、至極真っ当そうな方々っぽいかな?
一刻(1時間)以上前にお姫様(笑)達が入っていても戻ってこないのは・・・
ただ、お姫様達の手伝いとかしてるくらいなら良いけど。それ以上の何かがあったら・・・やだなぁ。
とりあえず、この先は火蜥蜴だけみたいだし。
私の現在の最大索敵範囲、半径1.5キロの端っこに魔獣の赤点が何個かと、人を示す青点が6個。多分これかな?
うん、色ありならまだ生きてる。
「したっけ、私は先に行きますんで!ココはよろしくお願いします!」
「えっ!1人で行くんですか!?」
「いくらA級ライセンス持ちでも無茶だ!」
「大丈夫、コレでもビグベルー単独討伐できるし。キューケン村の方に騎士団が来たら、仲間が追ってくれるから。そいじゃ、討ち漏らしてる魔獣はよろしくですー。」
さて、お仕事お仕事。
慌てる冒険者達を尻目に、私は青点がある方向へと駆け出した。
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