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キャットファイト?
359.火蜥蜴退治対決 其の四(+第三者視点)
しおりを挟む15キロ程度の道のり。
全速力一歩手前で、馬さんは頑張ってくれた。
まぁ、カン君が身体強化したってのもあるけど。
そうして見えてきたキューケン村。
色とりどりの花畑の中で花弁が舞っている。
どうやら、魔獣達と冒険者達が戦っているのだろう。
村の入り口は、自警団っぽい人達が守っている様子。
ざっと見るだけでも、それぞれの動きに精彩を欠き、疲労困憊しているのが見て取れる。
先頭を走るカン君から、無線が飛んでくる。
「ざっと見る限り、サラマンダーは居なくて、ガルサボアとか、アグドーグの集団っスね。」
「クラスがD系と低いとはいえ、集団は厄介だね。森から押し出されたとしたら、この後C系のアグウルグが来るかもだし。そうなったら、この面子の状態だと耐えられなさそう。先ずは、村内部と周囲の安全確保。出来れば花畑の外側で魔獣の迎撃が出来るまで、魔獣を追い返す。で良いかな?」
「了解っス。じゃ、俺は村周囲に魔獣避けばら撒いてきます。ついでに 【 緊縛 】系で足止めして、彼らに殺らせますよ。」
「お願い。私は前線の立て直しにいくわ。ってか、『氷戦神』達はどうしたんだろ?」
「周囲にいないって事は、サラマンダーだけ、先に倒しに行ったんじゃないっスか?」
「うわー。そうだとしたら、清々しい程に自分本位だなー。」
今戦ってる面子見ても、クラスAパーティーが来たから、頑張ろう!って雰囲気じゃない。
普通なら、クラスAパーティーが来た、サラマンダーを倒してくれたら、魔獣が止むかも、って期待を持たない?
彼らの様子は、終わりが見えなくて、しんどそうに見える。
たとえ、私らの勝負がかかってても、村の防衛疎かにして、壊滅したらどうすんだか。
「じゃ、カン君村はよろしく!前線の冒険者も立て直しに必要なら村に戻すから!」
「了解っス!【 保護 】!【 魔盾 】!【 迅速 】!【 攻撃倍加 】!いってらっしゃい!!」
「あんがとー!」
私達は二手に分かれて、仕事を開始した。
*****
「くそ!捌いても捌いても終わらねぇ!」
「それどころか、湧いてくる量が増えてる!」
「もう、魔力がやばいよ!ポーションだって無い!」
花畑の前線で戦うクラスCパーティーの冒険者達が喚く。
一刻程前にクラスAパーティー『氷戦神』がやってきた。
これで、前線を立て直せると思ったのに、彼らは、此方に見向きもせず、サラマンダーを退治すると言って丘陵地へ行ってしまった。
ポーターらしきのも居たから、救援物資を置いて行ってくれるのかと思ったのに、裏切られた感じだ。
確かにクラスAパーティーだから、クラスAの魔獣を倒しに行くのは分かる。分かるけど。
「何で、村を助けてくれないんだ!」
彼らはこの村で生まれ育った冒険者達で作られたパーティー。
村だが、王都から一目置かれている観光地。
それを誇りに思い、自警団では手の回らない部分を、冒険者になって貢献しようと考えた若者達だ。
同世代のクラスAパーティー『氷戦神』の事も尊敬していたのに。
「くそぉ!!」
「リーダーっ危ない!」
「うわぁっ!」
リーダーの盾役が悪態をついて乱れた隙をついて、アグドーグの群れが襲いかかった。
殺られる!
誰しもがそう思ったのだが・・・
ーーー パァン!!!
拍手の様な音が鳴り響き。
見ると、襲いかかってこようとした、10頭近くのアグドーグが、全て地面に伏せている。
いや、立ち上がろうとしているのを、上から押さえつけられている様な形だ。
何が起こったのか分からず、彼らはその場に立ち竦んだ。
すると、一瞬のうちに目の前で旋風が巻き起こって。
あんなにも手こずり、死をも覚悟したはずのアグドーグの群れが、一刀両断されていた。
旋風の先を見ると、そこに佇んでいたのは一人の女性。
一見槍のように見えるが、見たことのない形状の武器を持ち。
後頭部の高い位置で纏められ、尾のようにたなびく髪は、初めて見る黒色。
視線の先の彼女が振り返り、彼らと目が合った。
意志の強そうなその面差しの、眉も、瞳も黒色だった。
「戦女神様・・・?」
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まるでその話の『戦女神、戦乙女』と言われた少女が権化したかのようで。
あの物語の様に、颯爽と現れ、絶望の淵にいた自分達を救ってくれたその事実に、彼らは言葉を失った。
そんな彼らを前に、すぅ、と息を吸った目の前の彼女は、辺りに凛とした声を響かせた。
「クラスAパーティー『旅馬車』所属、A級ライセンス・リン=ブロック!助太刀します!!」
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