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キャットファイト?
358.火蜥蜴退治対決 其の三
しおりを挟む「いやぁ、朝別れたばっかで、こんな事頼みに来て申し訳ないですー。」
「いやいや。何言ってるの。キューケン村がやられちゃったら、ウチの売れ筋商品の香水やら化粧品やらが仕入れられなくなるもの。今用意できる中での一番の早馬2頭用意するよ。あとは必要なものあるかい?」
「したっけ、麻痺剤と鎮静剤ってあります?出来たら30セット。あとは魔獣避けが20個?あと・・・んー、怪我・体力回復水薬60本と、魔力回復水薬と、状態異常回復水薬も、各40本お願いできますか?」
「あぁ。その程度ならすぐ用意できる。待ってな。・・・あ、馬来たな。準備しておきな。物品はすぐ持ってくる。」
今私達が何処にいるのかってーと。
朝に護衛依頼完遂したばかりの、商隊『蔓薔薇』サンの本店にお邪魔中。
商隊長のグラハムさんが、隊員の皆さんに指示出してくれて、皆様てきぱきと用意中。
まぁ、水薬は、自分達で作ったのやら、レザ先生のやら沢山用意してあるんだけどもね?
村人や冒険者に使用したとしたら、一応経費として村や冒険者ギルドやらにでも、後から請求出来るのかなぁ?って思って、外部仕入れにきたよ。
領収書も、明細書と共に出してもらうことに。
で。
何でココにいるのかって?
まぁ、やると思ったけどさー、嫌がらせですよー。
ホントこの短期間によう仕込めるなぁって具合に手際良くて吃驚。
・・・ってか、やり慣れてないと、ココまで出来なくないかって思うのよ。
先ずは、冒険者ギルドでの貸馬の貸し渋り。
まぁ、『オメェらに貸す馬はねぇ!』って断られた訳です。
しんじらんなーい。コッチA級ライセンス持ちだよー?ミッドランド支部や他支部でも、魔獣暴走ともなりゃ、上級ライセンス持ちにさっさと向かってもらう為に、馬の貸し出しや馬車の手配があったりするのに。
して、ギルド内や大通りにある道具屋系も私達に対して警戒しているのが丸分かりで。
『お前らに売るものはねぇ!』状態さ。
何だかなーーと思って、ギルドの馬房にいた、下っ端の少年がオロオロと申し訳なさそうにしてたので、こっそり呼んで、お小遣いと小回復携帯食(チョコ味)を賄賂で渡して情報収集。
読み通り、『氷戦神』の赤髪と青髪が、「黒髪の冒険者達は、ちょっと・・・」と言っていたらしい。
彼らの信奉者は多くて、そこから派生もしていくのだと。
ある意味、周囲が勝手に動くやつ。
あまり、(彼らにとって)素行の良くない冒険者がいる。
→どうやら黒髪だ。
→黒髪の冒険者には、貸すな、売るな。
ってなったんだろう。
少年にもうちょっと突っ込んで話を聞いたら、やっぱり『氷戦神』は、信奉者を上手く使い、強くなりそうな冒険者や、注目を浴びる冒険者(特に女性)については、嫌がらせを行い、結果として王都本部から追い出す様なことに。
『自分の事を心配してくれたり、可愛がってくれていた冒険者達も出ていかなきゃいけなかったんだ・・・。僕がどんなに“悪い人じゃないっ”言っても、聞き入れてもらえなくて・・・僕にもっと力があったら良かったのに。』と言って、しゅんとする少年がいじらしくて。
おばちゃん、お小遣いを上乗せしちゃったよ。
・・・とまぁ、そんな事もあり。
メンドクサイので、街のことには後回しにして。
確実に買い物が出来るだろう『蔓薔薇』さんへやってきた訳です。
「アイツらなぁ、肝心なことは言わないで、察して動く様に仕向けてくるんだ。店の奴らが自主的にやったことにして、最終的にそれが明るみにでても、『自分達はそんな意図で言っていない』とか『彼らの熱意がそんな行動につながってしまった』とか言って責任逃れする為だろうなぁ。」
「つまり、善意によって起こされた行動だから、気付かなかった、自分達に責任は無い、って事ですか。」
「そーゆーこった。」
「・・・ホントにクソっスね。」
「でも・・・『蔓薔薇』さんとしては、私達に肩入れして大丈夫です?」
「あぁ、その点は全く問題ねぇよ?」
一応グラハムさんに、私達とやり取りして大丈夫か聞いたけど。彼は自信満々に『へっちゃらだ』と笑う。
『蔓薔薇』は行商が主だから、『氷戦神』の嫌がらせを受けても痛くも痒くもないと。
それに、行商先で珍しいものや、この先流行りそうな物を仕入れてくる事も多々で、中規模商隊のわりに、お貴族様とのぶっとい独自コネクションがあるそう。
寧ろ『蔓薔薇』を蔑ろにしたら、逆に社交会の話題に乗り遅れる事も有るんだとか。
以前、青髪が懐柔しようとやってきた事もあった様だけど、のらりくらりと躱して、相手にしなかったから大丈夫ー、なのだと。
「それにあんな『氷戦神』みたいな卑怯者よりも、君らみたいな上客を大事にするに決まってるじゃないか。コウラル殿がA級ライセンストップなんだから。それに君らは、何てったって今回の目玉商品『劣竜種の鱗』の提供者、ってか倒した張本人達だろう?強さも腕も確実で。
俺が一緒に旅して、3人とも偉ぶらず気の良い連中で、とても絆の深い良いパーティーだってのは分かりきってるんだ。
自分達の我儘が通って当然だと思っている、あーんな性格の悪ぃガキンチョの集まりなクラスAパーティーなんかより、信頼を置いて当然だろう?」
そう言って豪快に笑ってくれるグラハムさんが、とっても侠気に溢れていて、頼り甲斐があるなぁと感心した。
だから、ポロッとギルドの馬房で働いていた少年の話を零したような気もするけど。
そしてそれを聞いたグラハムさんが『将来有望だな』とニヤッとした気もするけど。
それは、世間話の一貫だよねぇ?
それによって、ギルドにおいて、将来益になる筈の人材が流れたって、仕方ないよねぇ??
手に届く範囲で、責任が取れる所だけ直接手を下す。でも、そうじゃない、ずっと見てはいられない所は、信頼できる出来そうな人に繋ぐのも大事・・・
私達のA級ライセンス昇格試験の際に、ルイジアンナの村でイグバイパーに襲われて、右足が麻痺ってしまった農夫さんがいたけど。
あの時、カン君が【 回復 】で直そうとして、ロイドギルマスに止められた。
自らの影響と対価が割に合わなくなる事や、他の人の仕事を奪う危険もあることを改めて考えさせられた。
結果として、劣竜種の所為でイグバイパーが人里に降ったことから、災害の様なものとして、ファルコ辺境伯から治療の為の治癒師や薬師といった人材や、治療用の水薬等の提供があったらしい。
そして今後も、魔獣による大きな被害は、災害に準拠した対応にしていくと、領内の仕組みが整備されたみたい。
私達が勝手に手出しして、その場限りで修復してしまったら得られなかったかもしれない結果。
今後もそこに住む人が、管理する組織が、良い方向へ迎えるよう、また、良くない事となっても、選択した結果に責任を持てるように。
だから。
私達が、馬房管理の下働きの少年を勝手に連れて行って『蔓薔薇』に雇ってくれと紹介するんじゃなくて。
グラハムさんと少年が出会って、お互いに知り合って就職と雇用を考えられるように。
ちょっとしたお節介で済ませられるように・・・
「リンさん、準備できたっスよー。物品は俺持ちでいいっスか?」
「あ、麻痺剤と鎮静剤だけは10ずつ貰おうかな?後は村防衛用でストックしておいて。」
「了解」
思考の波に落ちていたら、カン君がすっかり準備を整えていた。ヤバい、優秀か。知ってたけど。
『蔓薔薇』の商隊員さんが用意してくれた駿馬をお借りして。いざ出陣。
「では、お借りしまーす。」
「あぁ、気をつけて行ってきてくれー」
私達は緊張感の無いまま、お利口なお馬さんの腹を蹴って、キューケン村へ向かって駆け出した。
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