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キャットファイト?
350. キャットファイト? 其の三
しおりを挟む貼り付けた営業スマイルの圧は、自分でも凄いと思う。
すっかりと、受付嬢はビビってしまっている。
さてー。
コッチは言いたい事言ったから若干スッキリだけども。
こうなると引き際がなぁ。
受付嬢が使えないなら、上の人に出てきてもらわなきゃならんけど、ありゃぁ、期待できんわなぁ・・・
後ろの方にお局様感あるお姉様職員いるんだけどさ、全くもって此方にくる気配皆無。
さっき迄、私の悪口に加担してたしねぇ。
どいつもこいつも使えねぇ。
ミッドランド支部のクラスA担当、スタッドさんやエミリオさんみたいに、職務全うしてくれんモンかね?
・・・こう考えたら、ロイドギルマスの取り組んでいた、ギルド内改革って凄いのなーって思う。
我々日本人・・・ってか、公務員からしたら当たり前な『全体の奉仕者』としての対応と言えばいいのか。
一般企業でも同じだけど、来客と従業員に敬意を表すというか。
それを職員内に徹底しようとしてるんだよねー。
まぁ、この世界や国の考え方や価値観はあるから何ともだけど。
お互いが気持ちよく、仕事に取り組める為なモノだしね。
現実逃避がてら、そんな事を頭の隅で思いながら、この先の展開を考える。
並列思考ってやつ?
・・・いや、違うな。ただ注意力散漫なだけだ。
まあ、兎も角。
上司出せ、責任者出せの一択だろうなぁ。
彼女が『受付嬢の立場として』冒険者である此方に喧嘩をふっかけてきた。
この責任を取れる人と話をしなきゃ。
ビクビクと怯え埒があかない受付嬢に、次の提案をする為、口を開きかけたその時。
「何を、騒いでいらっしゃいますのっ!?」
バタン、とギルド奥へと通じる扉が開き、聞こえてきた甲高い声。
見ると、魔法職用の白いローブを纏った、青白いキラキラした髪色の可愛らしいお嬢さんが出てきた。
ズンズンと、此方の方へと一直線に向かってくる。
その後ろからは、パーティーらしき4人の男達がぞろぞろとついてきた。
戦士職っぽい、赤髪と茶髪。弓職っぽい緑髪。魔法職っぽい青髪。
赤、茶(黄)、緑、青に白・・・戦隊モノかなぁ?
女の子がピンクじゃ無いのが、なんか残念。
『姫だ!』『やっぱり、姫さま綺麗・・・』
『嬉しい!来てくれた!』
『姫さまがきてくれたわ!あの礼儀知らず、やられちゃえ!』
ザワザワと其処彼処から声があがる。
姫、ねぇ・・・ふむ。
コレがあの、『氷女神』とか言われてる人かな?
まぁ、こちらは黒髪隠してもいないし。
冒険者で、黒髪の女という時点で、こーくんの関係者だ、ということはバレてんだろうなぁ。
・・・初めて会うのに、敵意満々なのがもうね。
まぁ、最初のウチは大人しくしてましょうか。
彼女の投げかけた問いに応える事なく、私は首を傾げ黙って見やる。
受付嬢は、現れた『姫さま』と呼ばれる彼女を見て、如何にもほっとした表情を浮かべた。
「ギルド内で何を騒いでいらっしゃるのです?クレル嬢を怯えさせるなんて。何の言いがかりをつけているのかしら。礼儀もなく野蛮ですわね。」
ふふん、と、如何にも此方を格下に見る態度。
・・・おい、その発言、全部受付嬢にブーメランだからな?
じ、っと、口を挟んできた彼女を見つめ、どう弄ってやろうか、少し考える。
すると、すぐに返答しない私にイラッとしたらしく、ますます態度がトゲトゲしくなった。
「ちょっと、聞いていらっしゃいますの!?」
「・・・あぁ、私に向かって話されていたのですね?別に大声で周囲に迷惑掛けていたわけでも無いのに、騒いでいると言われて。ただ問い合わせているだけの此方の事情も知らず、話に勝手に割り込んで、此方が悪いと決めてかかってくる人が居るなんて思わなかったので、気付かず申し訳ありません?」
「なっ!」
気怠そうに疑問系で返してやると、彼女の顔が真っ赤に染まる。
カウンターから少し離れたカフェスペースの方から、吹き出すような声がいくつか聞こえてきた。
ふむ、この彼女を崇拝しているのと、そうじゃ無いのとそれぞれいるって事ね。
怒りに任せた彼女が言い出す前に、背後に控えていた青髪が前に出てきた。
うん。彼女が失言する前に、取り繕う感じだろうか?
「それはすみません。ただ、其方の受付嬢が大分怯えているようで、どうされたのかと。彼女は職務に真面目なお嬢さんだ。その彼女が怯えている、という事態をウチの姫は見過ごせなかったようでね?」
職務に真面目、ねぇ・・・どこが?コレのどこが??
「・・・そんなに真面目で職務に忠実な方なのですね?でしたら、是非ご存知ですよね?・・・ギルド規約の改正はいつ発表されたのか。早く教えてくださいよ。」
営業スマイルで再び受付嬢を見る。
びくり、と肩を強張らせる受付嬢は何も言わない。
「ちょっと!クレル嬢を虐めないで!」
「はぁ?虐められているのは此方ですが?」
ちょっとイラっとしたので、口調がキツくなりました。
ざっ、と赤髪と茶色髪が、姫の前に出て庇う姿勢をとる。
「虐められている、とは面白い事を言いますね。とても虐められている方の対応では無いようですけれど。」
青髪が此方の出方を伺うように貶めてきた。
何だろなぁ。
間に立とうとするなら、表面上だけでも平等姿勢を取ろうぜ。
・・・だんだんアホらしくなってきた。
「支部で申請し認定されたパーティーを、一方的に王都本部では認めないと言われ、支部で受領し依頼主からも完遂認定された護衛依頼は無効である、だから報酬は支払わない、と、この彼女から言われたんですよね。
A級ライセンスの認定も、パーティーの結成認定も、各支部の裁量権があることは、冒険者ギルドの規約に規定されている事項なのに、ですよ?
ですから、冒険者ギルドの規約の改正がいつあったのかを彼女に問い合わせているのです。
いつから『A級ライセンス昇格及びクラスAパーティー認定にはモースバーグ国冒険者ギルド王都本部の申請受理が必須となった』のか、を。
クレーマーと言われても構いません。パーティー認定や冒険者ランクの認定が認められない、仕事に対しての報酬が支払われないなんて、冒険者としては死活問題ですから。
・・・何か、私は間違った事言ってますか?間違っているなら、その点をお教え頂きたいのですが?」
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