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キャットファイト?
348.キャットファイト? 其の一
しおりを挟む※ お久しぶりです、主人公のターン。
*************
ミッドランドも人はいっぱいだ、と思っていたけど、王都はその比じゃない。
でも。
この喧騒のなかで、あんな静かな場所があるのは不思議だったな・・・
昼食を済ませ、浮世離れした店主がいた先程の店の事を考えながら、忙しなく行き交う人の波を、少しぼぉっと眺めていた。
時間を確認したら、昼1の刻。
「ねー、カン君。約束の時間まで、まだ1刻あるけど。どーしよ。先に冒険者ギルドに行く?」
「そっスね。『蔓薔薇』サンの依頼完了届けの手続きやっておきましょうか。」
それもそだね、ってことで、私達は冒険者ギルド本部へ向かう事にした。
某夢の国のような感じの街並みを眺めながら、ゆっくりとギルドへ向かう。
この世界に来て、もう1年にもなって、生活には慣れたのだけれど。
やっぱり、何処か夢見心地な所在の無さを感じてしまう。
「あそこ、みたいっスね。」
一際大きな建物が見えてくる。
5階建ての役所の庁舎みたいな建物に、体育館のような別建物がくっついている。
王都ギルドは、冒険者ギルドも商業ギルドも同じ建物内にあって。
お店も多めに併設されているみたい。
体育館のような外見の建物は、どうやらオークション会場のような場所らしい。
・・・とまぁ、ある種の観光スポットになっているのか、そんな説明をしているのがそこかしこで聴こえてきて、大変助かります。
そしてこの建物自体、待ち合わせ場所でもあるのか、入り口近くでは人がわらわらしている。
冒険者風の鎧、武器姿の者はともかく、商人っぽい人や、街の人・・・恋人同士の待ち合わせだろうか、って人達も。
そんな中を突き抜けていく私達。
人がいるのが当たり前な大都市の人達のはずなのに、それでも私達の姿の・・・『黒持ち』と言われる黒い髪を見て、そこかしこで息を呑む様な音が聞こえた。
うん。
気にはしてらんないので、そのままスタスタ横切っていく。
ギルド本部の大きな入り口に差し掛かった時。
入り口の脇に、1人の女性が佇んでいたのが見えた。
スラリとした体型、夏の空の様な透き通るライトブルーの艶やかな髪を編み込んで後ろで纏めている、キリッとした美人さん。
パンツスタイルで、胸当てと小手と脛当てのみの軽鎧を身に纏い、腰にロングソードを携えているけれど、その雰囲気は、冒険者というよりも・・・騎士だろうか?
静謐な感じで、凛としていて、何処かメイアお義母さまを彷彿とさせるカッコ良さで、目を引いた。
ふと、彼女が此方を向いて、パチリと目があった。
綺麗な青い瞳が、此方を見て見開かれた。
何か、ビックリされた?
「リンさん?どしました?」
「あ、うん、なんでもな。」
入り口から入ろうとしていたカン君に声をかけられて、我に返る。
また、ちら、と見たら、まだ彼女は此方を向いていた。
居た堪れず、軽く会釈して、カン君の後を追って、建物内に入った。
***
「ホントに髪が黒・・・『黒持ち』って、あの2人、なのかな?」
ギルド内へ消えていった、冒険者であろう黒髪の男女ペアの姿を、その青い瞳で追っていた。
初対面で、目が合っただけの自分に、頭を下げる律儀さが好ましく感じた。
「・・・リー、ライリー?」
「っと、すまない・・・あぁ、ライル。」
呼び止められ振り返ると、そこにはラフな街人スタイルな男。ライトグリーンの髪をアシンメトリーのツーブロックに切り揃えた美青年が、甘さを滲ませた顔で佇む。
線の細さと、細身の眼鏡は、一見冷たそうな文官の印象を与えがちなのだが、その奥の垂れ目の所為で、結局は無駄な色気に変換されている事に、ため息しか出ない。
先程まで、『黒持ち』の出現にざわついていたギャラリーが、この男に注目しだす。
目敏い女子が、早速声をかけようとにじり寄る。
男が声をかけた女性は美形だが、女らしさはない。
そこに勝算があると踏んだようだ。
しかし、そんな様子を気に留めることもなく、男は、待ち合わせの相手である彼女に声をかけてきた。
「ねぇ、ライリー。待ち合わせの時間にはまだ早いから、何処かで休まないかい?」
「いや、ちょっと・・・中に入って待たないか?」
「ん?ギルド内のカフェスペースで待つってこと?僕は構わないけど。どうかした?」
「あぁ・・・多分、楽しい事が起こりそうなんだ。」
「・・・君の言う『楽しいこと』は、結構な頻度で良くない事のような気もするけど・・・まぁいいや。お付き合いしますよ、奥さん。」
甘ったるい表情から放たれた、その最後の言葉に、周囲を取り囲もうとしていた女子達が固まる。
御手をどうぞ、と慣れた手つきで彼女をエスコートし、周囲の視線を振り切る様に、颯爽とギルド内へと入って行った。
****************
※ 新キャラ登場。名前だけは過去に出てましたw
※ 今後も更新不定期となります。申し訳ないです。
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