転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

文字の大きさ
上 下
361 / 393
『約束』の行方

【閑話】天上の彼方 其の三

しおりを挟む
お久しぶり過ぎまして、すみません。
閑話の続きからです。



**************




ピオッティさんに家を紹介してもらい、サクッと片付け。
集落の中の紹介をしてもらったら、日が暮れて。

そうこうしていたら、森の入り口から『影猿シャドウモンキー』の連中が、『猟犬グレイハウンド』のイズマさんとベネリさんと一緒に帰ってきた。

・・・ちょっと待って。
何あの屍。

普段と変わらないイズマさんとベネリさん。
その後ろからやって来たのは、屍人グールのような『影猿シャドウモンキー』の3人。
見るからに、かなりグロッキーな様子。



「マジかー・・・」



その姿を見て、ダイがポツリと呟いた。
うん・・・明日は我が身、だよね。
ぎゅ、と服の袖を掴んでくるベニの頭をよしよししながら、私は大きく深呼吸をした。







その日の晩、集落の皆さんが歓迎会を開いてくれ。
美味しいご飯をご馳走になった。
しかし・・・



「秋のビガティール(魔獣の鹿)は美味しいからな。頑張って獲ってこいよ。」



さくっと、猟師の方に言われ、愕然とする。
あのー、それクラスB魔獣ですからぁ・・・

影猿シャドウモンキー』のジェリとナルに情報を聞こうとしたけど。



「んーー。兎に角、るかられるかだぁ。まぁ、明日やりゃ分かる。」



と、曖昧な情報しか出してくれない。
ホント、どんな人外魔境が待っているのかと不安になった。




***



次の日。
朝から早速ニースの森へと踏み込んだ。

森の境界線と言われる入口を抜けると、ざわり、と、鳥肌が立つ感覚。
慌てて辺りを見回すと、とても静謐な空気。



「お、入れたな?」



指導役として来てくれた『猟犬グレイハウンド』のイズマさんが、私達をみてニヤリと笑った。



「うん、第一関門突破だねぇ。」



魔法杖を掌で弄びながら、ベネリさんまで不穏な響きを発した。

そう言われて思い出したのは、ギルマス部屋での話。
『ニースの森は入る人を選ぶ』ってこと。

本当なのか?と尋ねれば、2人からは『本当だ』との簡潔回答。

なぜ選択が可能なのか、と、ダイが問うと、『主様ぬしさま』と呼ばれる存在がいて、その方が選別しているとか何だとか。
その『主様ぬしさま』・・・真っ白なイグバイパー(巨大蛇)の姿なのだとか。



「因みに、イズマさんとベネリさんは、『主様ぬしさま』にお会いしているのですか?」

「何度か見かけた、程度。直接話はしてない。」

「うん。俺らはねぇ・・・集落の皆んなも遠巻きに出くわす程度って言ってた。あぁ、そうだ。元々、ウチの旦那リーダーもその程度だけだったらしいけど、何かリンちゃんのおかげで喋れたって言ってたなぁ。」

「「「「「「は?」」」」」」



意味不明な言葉が聞こえた。
なんでリンちゃんがいる事で、その、『主様ぬしさま』と話できるって話になるの?

きょとん、とした我々に、何の事もなげにベネリさんが続けた。



「リンちゃんはねぇ、『主様ぬしさま』にエッラい気に入られてて、ちょこちょこと会ってたって話。それに、この間、ココが賊の襲撃にあって燃やされた跡を、リンちゃんとカンの魔力譲渡受けて、『主様ぬしさま』が再生させたんだよねぇ。」

「「「「「「・・・は?」」」」」」

「まぁ、リンちゃんとカンが常識外れなだけって話だから、気にしないで。まぁ、リンちゃんと仲良かった君らなら、その内『主様ぬしさま』に会えるんじゃない?」

「「「「「「・・・・・・・。」」」」」」

「ほら、見回りに行くぞ。」



ベネリさんに、つらっと言い切られ。
何か言おうと思ったのに、イズマさんにぶった斬られ。
それ以上、意を唱える事も叶わず。
私達は、先へ進むベネリさんとイズマさんの後を追い、森の奥へと進んで行った。



***
しおりを挟む
感想 580

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

処理中です...