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『約束』の行方

344.懐かしい音色 其の七

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訝しげな顔で見られているにも関わらず、当のカン君は涼しい顔で、次の言葉を続けた。



「あと、この倉庫をお借りできますか?練習場所が欲しいので。」

「練習場所・・・?」

「そのための追加料金です。情報提供頂いた方からアドバイスで、我々が見世物になる可能性があるから、芸事をできるようにしておけ、と。
楽器を見つけたとは言え、我々も王都についたばかりで、練習場所を何処にしたら良いかと思ってましたので。」

「成る程ね。」

「ですから、我々の演奏の練習場所として、このままこちらをお借りしたいな、と。ここは、人避けの結界も張られていますし。俺の遮音結界を重ねて張れば、近所迷惑にもならないでしょうし。それに、秘匿もできる。」

「秘匿?」



首を傾げた店主さんに、カン君は頷きを返す。



「入り組んだ立地に、人払いの結界。特殊な雑貨の取り扱い。それに、貴方は『金持ちの道楽』と言った。つまり、貴方自身が権力の持ち主だから、ここはかなり安全地帯な上、権力を介さない場所・・・そう、判断しました。」

「へぇ・・・で?」



にまり、と愉快そうに笑みを浮かべた店主さんは、その先を促す。



「さっきも言いましたが、どうやら、我々は祝賀祭で一発芸を披露しなければならないかもしれなくてですね・・・其処にはどうやらお貴族様が絡んでいるようですし。ですから、練習するにしても、なるべく人目にはつきたくないなぁ、と。それに、貴方が大富豪なのか、お貴族様なのかは分かりませんが、祝賀祭の内情をご存知であると踏んで、我々の“出し物”にご助言いただきたいな、と。その分の白金貨1枚分です。」



その言葉を聞いた店主さんは、堪えきれなくなった、と言った具合に笑い出した。



「成る程成る程。指導役・・・ね。」

「貴方は、この楽器に興味を持ち、どんな音が鳴るのか、どんな演奏になるのか気にしている。指導役であれば、一番にその演奏を聴かせることができますが。」

「あはは。確かに一番に聴ける特権が発生する、か・・・うん、気に入った。ここは好きに使ってくれて良いよ。あまり大型の物を引き取る予定もないし、倉庫としてこの楽器?を入れてるだけだから、改造するなりなんなり好きにして。」

「ありがとうございます。」



こうして、私達は探していた笛と太鼓、そして練習場所を手に入れた。 

・・・つか、交渉役、すっかり奪われちゃったよ。

暫しぼーぜんとしていたら、いつの間にやらカン君が店主さんに、お店から篠笛を持ってきてもらい、太鼓の側に置いていた。

カン君は戦棍メイスを取り出すと、魔力範囲を納屋全体に設定していく。
そして、一つ息を吐くと一気に詠唱を行った。



「【 修復リペア 】
 【 清潔クリーン 】
 【 完全遮音インスレーション 】」



ぶわり、と鳥肌が立つほどの濃密な魔力が、納屋一帯に広がる。
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