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モースバーグ国横断、1/3の夢旅人
296.1/3の夢旅人 其の七
しおりを挟むーーー ん?
子爵夫人の発言を反芻する。
本来なら、ヤらなきゃ付かないハズの残滓が付いている。
しかも、余程相性の良い相手同士でなければ付かないハズなのに。1人なら兎も角、それが3人分。
ーーー あぁ。そりゃ疑うわ。
別に、この3人じゃなくても、付くんじゃね?ってなったら。
メンドクサイ未来しか見えないやね。
子爵夫人の懸念も、もっともだ。
そして、その懸念を払拭するだけの材料はあるだろうか?
うーん、と腕を組んで考える。
・・・そもそも私は、みんなと魔力の感じ方、捉え方が違っているんだよなぁ?
人の魔力が流れると、みんなは肌に触られているという、直接的な感覚があるようだけど。・・・だから、生活魔法は人に向けない、っていう暗黙の了解があって。
(これ、治癒系魔法とか、支援魔法は、また違うみたいなんだよねぇ?)
でも私は、風が流れたなぁ、というような空気感でしか感じてない。
魔力が強い人や内包量の多い人については、みんな何らかの圧を直感的に感じ取る。押し付けられるような、息苦しくなるような、物理的な圧らしい。まぁ。魔力量が少ない人は、気にしない人も多いみたいだけど。
高ランク冒険者や、上位貴族系は魔力量が多い人が多いので、圧を感じ取った場合は、それだけで強者だと理解して、それなりな対応をする事も、暗黙の了解であるそう。
残滓も、その圧が残るらしく、何となく『強者の相手』と伝わるのだそう。
圧の魔力のパターンで、持ち主も判明するというか、『あ、アイツのなのね』というのは分かるみたい。
だから、子爵夫人は分かった、ということか。
・・・会ったことない2人はともかく、こーくんの魔力を分かんなかったヴォルフさんは、何だったんだかな。
まぁ、勘違いさんだから、仕方なしか?
・・・で、その『物理的な』という表現だと、私にはサッパリわかりません。
ただ、空気感や感触、匂いとして感じ取っている気がする。感触は物理な気もするけど。
昨日から感じている、芳醇なエスプレッソとバニラの香り。それに絶対的な安心感のある暖かさと力強さ。これがファーマスさんの魔力。
そして、自分の中にまだ何か無いかと探したら、ミントとシトラスの様な爽やかな香りに、しなやかな強さを感じるモノと、トロピカルフルーツジュースの様なトロリと甘い香りに、優しい柔らかさを感じるモノがあった。
ミント系がこーくんで、果実系の甘い香りがカン君なんだろうな。
・・・あぁ、マジで付いてんだな、残滓。
イズマさんや、ピォッティさんから【 清潔 】を受けた時は、匂いまでは感じ取らなかった。
ということは。
匂いを感じ取れる事が、私の中で繋がりがある=残滓が付いた、という事になるのだろうか?
外付け、と言っても、通常の残滓が付くという現象と同じで、相性に左右されるのは確実だろうから。
匂いを感じ取れる3人と、他の人の違いが証明出来れば良い気もする。
「母上!失礼なことを言わないで下さい!!」
「だって、心配よ?大概残滓まで確認出来るのは、強者と決まっているワケでしょう?ヤんなくても『自分のモノ』と主張できてしまうんなら、リンさんの行動如何で、かなり危険に晒されるのよ?上書き可能なら、アンタ達が目を離した隙に奪われかねない、って事でしょう?」
「母上っ!」
「うっさい、三男坊。それぐらいに『黒』であり、『戦乙女』と認識されつつあるリンさんには、危険が伴うの。常に絶対は無い。」
・・・あー、まぁ、そうなる前に抵抗の一つや二つはしますけれども。
でも。
子爵夫人が、すっごい心配してくれているのが分かって、なんだかんだで嬉しくなる。
こーくんの言う通り、字面だけでは失礼に聞こえちゃうんだけど、そう捉えられかねないのは、想定しなきゃいけないから。
くすりと笑って、私は、言い合う母と息子の間に割って入った。
「メイア様、ご心配ありがとうございます。私、多分皆さんと魔力感知の仕方が違っているので、それと合わせたお話・・・というか、ご相談をさせてもらっても良いですか?」
***************
※前回更新分で、ここまで行きたかったのですが、間に合いませんでした。なので、1日早く更新です。
※ ファンタジー大賞エントリー中です。 おかげ様で、お気に入りに入れて頂く方もいらっしゃるようで、感謝感激雨霰です~
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