転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

文字の大きさ
上 下
292 / 393
モースバーグ国横断、1/3の夢旅人

284.クラスAが集まってみた 其の四

しおりを挟む


ロイドさんの言葉に、ヴォルフさんの機嫌は急降下する。



「・・・馬鹿にしてるのか?」

「いや?お前さんが強いのは重々承知しているさ。A級ライセンスの中でもな。・・・しかしなぁ、コイツらはそこに匹敵すんだ。」

「あぁん?」


訝しげな雰囲気のまま、ヴォルフさんは威圧してくるが、ロイドさんはサラリと躱して話し続ける。



「リンもカンも、劣竜種レッサードラゴン討伐において、多大なる貢献を果たしている。それにリンについては、先日、ファルコ領騎士団の施設において、『女傑』と手合わせをして引き分けている程だ。つまりは、お前以外の4人とのトレードとしても、割りにあわねぇんだよ。つまりは、ヴォルフ、お前じゃ、リンを守りきれねぇってこった。」

「なっ?」



がたり、と椅子を引き、喰ってかかろうとしたヴォルフさんの動きが一瞬止まる。



「「っ!?」」

「きゃぁっ!?」

「「なんだっ?」」



ヴォルフさん、そして私の目の前の斥候・・・カイリさんは、勢いよく立ち上がり、身構えたが、他3人は椅子に縫い付けられたように動けない、みたい。

あ・・・これは。



「テメェっ!何しやがる!」

「・・・ホント、寝言は寝て言えって感じの、大きなお世話サマーっスね。」

「おい、カン。攻撃魔法は・・・」

「【 重力グラビディ 】使ってねぇから、攻撃じゃねーっスもん。 【 束縛バインド 】だけだから、捕縛魔法っス。」

「屁理屈言ってんじゃねぇ。」

「いてっ!」



ロイドさんが、カン君の頭を小突く。
むぅ、と口を尖らせ、ロイドさんをチラ見したカン君は、イライラした様子で口を開いた。



「・・・だって、面倒ごと分散とか、聞こえの良い事言ってっけど、結局は、ちょーっとばかり漏らしてたリンさんの魔力に当てられて、相性が良いと勘違いして、手に入れようとしてるだけじゃん。馬鹿じゃねぇの?」

「違う!そんなんじゃねぇ!」

「ま、ちょっとぐらいは心配な気持ちもあったんだろうけど?それをメインみたいに言わないでくれます?だいたいにして、俺がリンさんから離れるワケねぇし。リンさんに害がないよう、防御すんのは俺の役目だ。それに、俺が本気を出していない【 束縛バインド 】に、一瞬でも絡め取られてんのに、偉そうなこと言ってんなや。ウチのリーダーも、俺の師匠も兄弟子も、こんな程度の【 束縛バインド 】なら、奇襲で食らっても物ともしねぇわ。」



あー・・・煽りスキルが発動してる。
ロイドさん越しに見るカン君は、悪い顔していた。



「俺やリンさんが『黒持ち』で色々狙われる立場なのは、アンタなんかに指摘されんでも重々承知だ。だから、師匠・・・『英雄』ファーマスは、最初からそれを見越して、漂流してきた俺らを育ててくれた。この国の常識に疎い俺らの為に、コウさんが仲間になってくれるように、ロイドさんに渡りをつけてくれていて。本人に繋いでくれた。それだって、俺らがA級ライセンスを取る事が条件だった。それを満たしたから、俺らはコウさんとパーティーを組んでいる。あと、コウさんについてどーいう認識かは知らんけど、俺がリンさんから離れないのと同様に、コウさんだって、リンさんから離れる気なんて無いからな?」


「・・・はっ、アイツが誰かに執着するなんてあり得ないだろ。」



カン君の話を聞いたヴォルフさんが、鼻で笑う。



「アイツは、どんな時でも、誰に対しても、一様の態度を崩さねぇ。誰に対しても同じように丁寧な対応だが、それ以上踏み込まないし、踏み込ませない。誰もアイツの『特別』になんてなれないのに、どうしてアイツが守ってくれるなんて言える。」

「・・・なんだ、そんな事。」



くつくつ、と、喉奥を鳴らすような笑いで、カン君は応戦する。



「コウさんの『特別』が、リンさんなんだから、問題ないだろが。魂レベルで嫁なんだもん。」

 「リン!!!」



カン君のトンデモ発言の最後に被せるように、廊下からバタバタと足音が聞こえたかと思ったら、勢いよく会議室のドアが開かれた。


しおりを挟む
感想 580

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

オタクおばさん転生する

ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。 天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。 投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

処理中です...