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モースバーグ国横断、1/3の夢旅人
284.クラスAが集まってみた 其の四
しおりを挟むロイドさんの言葉に、ヴォルフさんの機嫌は急降下する。
「・・・馬鹿にしてるのか?」
「いや?お前さんが強いのは重々承知しているさ。A級ライセンスの中でもな。・・・しかしなぁ、コイツらはそこに匹敵すんだ。」
「あぁん?」
訝しげな雰囲気のまま、ヴォルフさんは威圧してくるが、ロイドさんはサラリと躱して話し続ける。
「リンもカンも、劣竜種討伐において、多大なる貢献を果たしている。それにリンについては、先日、ファルコ領騎士団の施設において、『女傑』と手合わせをして引き分けている程だ。つまりは、お前以外の4人とのトレードとしても、割りにあわねぇんだよ。つまりは、ヴォルフ、お前じゃ、リンを守りきれねぇってこった。」
「なっ?」
がたり、と椅子を引き、喰ってかかろうとしたヴォルフさんの動きが一瞬止まる。
「「っ!?」」
「きゃぁっ!?」
「「なんだっ?」」
ヴォルフさん、そして私の目の前の斥候・・・カイリさんは、勢いよく立ち上がり、身構えたが、他3人は椅子に縫い付けられたように動けない、みたい。
あ・・・これは。
「テメェっ!何しやがる!」
「・・・ホント、寝言は寝て言えって感じの、大きなお世話サマーっスね。」
「おい、カン。攻撃魔法は・・・」
「【 重力 】使ってねぇから、攻撃じゃねーっスもん。 【 束縛 】だけだから、捕縛魔法っス。」
「屁理屈言ってんじゃねぇ。」
「いてっ!」
ロイドさんが、カン君の頭を小突く。
むぅ、と口を尖らせ、ロイドさんをチラ見したカン君は、イライラした様子で口を開いた。
「・・・だって、面倒ごと分散とか、聞こえの良い事言ってっけど、結局は、ちょーっとばかり漏らしてたリンさんの魔力に当てられて、相性が良いと勘違いして、手に入れようとしてるだけじゃん。馬鹿じゃねぇの?」
「違う!そんなんじゃねぇ!」
「ま、ちょっとぐらいは心配な気持ちもあったんだろうけど?それをメインみたいに言わないでくれます?だいたいにして、俺がリンさんから離れるワケねぇし。リンさんに害がないよう、防御すんのは俺の役目だ。それに、俺が本気を出していない【 束縛 】に、一瞬でも絡め取られてんのに、偉そうなこと言ってんなや。ウチのリーダーも、俺の師匠も兄弟子も、こんな程度の【 束縛 】なら、奇襲で食らっても物ともしねぇわ。」
あー・・・煽りスキルが発動してる。
ロイドさん越しに見るカン君は、悪い顔していた。
「俺やリンさんが『黒持ち』で色々狙われる立場なのは、アンタなんかに指摘されんでも重々承知だ。だから、師匠・・・『英雄』ファーマスは、最初からそれを見越して、漂流してきた俺らを育ててくれた。この国の常識に疎い俺らの為に、コウさんが仲間になってくれるように、ロイドさんに渡りをつけてくれていて。本人に繋いでくれた。それだって、俺らがA級ライセンスを取る事が条件だった。それを満たしたから、俺らはコウさんとパーティーを組んでいる。あと、コウさんについてどーいう認識かは知らんけど、俺がリンさんから離れないのと同様に、コウさんだって、リンさんから離れる気なんて無いからな?」
「・・・はっ、アイツが誰かに執着するなんてあり得ないだろ。」
カン君の話を聞いたヴォルフさんが、鼻で笑う。
「アイツは、どんな時でも、誰に対しても、一様の態度を崩さねぇ。誰に対しても同じように丁寧な対応だが、それ以上踏み込まないし、踏み込ませない。誰もアイツの『特別』になんてなれないのに、どうしてアイツが守ってくれるなんて言える。」
「・・・なんだ、そんな事。」
くつくつ、と、喉奥を鳴らすような笑いで、カン君は応戦する。
「コウさんの『特別』が、リンさんなんだから、問題ないだろが。魂レベルで嫁なんだもん。」
「リン!!!」
カン君のトンデモ発言の最後に被せるように、廊下からバタバタと足音が聞こえたかと思ったら、勢いよく会議室のドアが開かれた。
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