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妄想乙女ゲームに終止符を
265.茶番劇 其の三
しおりを挟む前に『魔力制御の腕輪』をブッ壊した時は、魔力が3分の2ほどもってかれた。
今回は、カン君がネックレスに付与してくれた術式のお陰で、私の魔力は抜き取られず、ほぼ満タンのまま、腕輪の解除に向かえた。
もしかしたら、 魔力の総量が増えてるのかもしれないけど。
それでも、今回は効率よく、腕輪に魔力を流し込んで一気にこじ開けることが出来たと思う。
前回は穴を広げながらも、周りからダダ漏れさせていた感覚があった。
でも今回は、穴を広げるべく、徐々に出力を上げてから、一気に腕輪に負荷を掛けた。
何というか、魔力を無駄にしていない感じ。
おかげで腕輪2個解除だったのに、魔力は4分の1程しか使っていない感覚だ。
私も、魔力の使い方、巡らせ方が上手くなったかな?
「な・・・なんなのよ・・・」
「バケモノか・・・」
感慨にふけっていると、相手方から、ぼそり、と呟く声がする。
化け物とは、失敬な。
私は普通に、思考は人間ですけどね?
っつーか、アンタらの所業が、鬼畜だけどな?
私がバケモノだっつーなら、アンタらは鬼?悪魔?それとも、ヒトデナシ?だねぇ。
「そんで?どーすんの?大人しく投降するならそれで良し。一戦交えるなら、幾らでも闘ってやっけど?まぁ、その内にコウやカンが、ギルド員やら騎士団やら連れてやってくると思うから、大人しくしておいた方が身のためだと思うけど。」
私は、手の指関節をポキポキと鳴らしながら、じろりと一行を見回した。
すると、ヒルデ嬢がプルプルと震えだした。
「なっ、なんなのよっ!モブの癖にっ!何で言うこと聞かないのよ!私はヒロインになるのにっ!」
・・・あー、ダメだこりゃ。
完全に乙女ゲーム世界と思ってんだな?
取り乱すヒルデ嬢を見ていると、薄ら寒くなってくる。
「モブ?モブって何?意味わかんねーけど、馬鹿にされてるこたぁ分かった。よし、アンタら全員捕縛な?」
「うるっさい!!助けが来るわけが無いわ!100メーター四方の広範囲で索敵妨害がかかってるのよ!!見つかる訳ないじゃない!!」
ヒルデ嬢はそう叫ぶと、今度は笑い出す。
「ふふ・・・あはははっ!そう、そうよっ!索敵されないようになってるんだもの。助けが来るはずないじゃない!ただのハッタリね?サーフェス!ケイダ!それに貴方達!早く捕まえなさいよ!!」
・・・わぁ、三流悪役みたいだなぁ。
護衛達は、す、とヒルデ嬢の前に進み出て、剣の柄に手をかける。
男性冒険者は、一瞬怯んだ顔をしたものの、腰に下げていた剣を抜いた。
女性冒険者達は・・・あらら。すっかり腰抜けになってるね。ずりずりと、後退りをする様子が見てとれる。
「貴女達、逃げる事は許さないわ。」
その姿を見咎め、ヒルデ嬢が低い声を上げる。すると、護衛の1人が再度剣を彼女達に向けようとした。
女性冒険者達は、ひぃっ、と声を上げる。
ざまぁ、とも思うけど。
見てても、気持ちの良いモンじゃぁないなぁ。
「あのさぁ・・・たかだか100メーター四方如きの索敵妨害で、どーにかできると思ってんの?」
呆れ混じりの溜息を吐きながら、私は馬鹿にしたように言い捨てる。
「私もカンも、索敵半径は1キロあるんだけど。半径1キロの円の中に、100メーター四方で白く抜かれている場所があれば、怪しいって言ってるようなモンだろが。」
私の言葉に、そこに居た誰もが驚いて目を丸くしている。
「ま、それに、私には優秀な『監視役』が付いてンだ。私の位置は既に把握済みだろうねぇ。」
「そっ・・・そんな証拠が何処にあるって言うのよっ!わたくしは騙されないわ!」
「あー、信じないなら、別にそれでいーよ?私は痛くも痒くも無いし。まぁ、捕まるのに、大人しく投降したか、最後まで抵抗したかの違いだけだし?ま、それによって、罪状が変わるわけでも無いんだったら、好きに抵抗すればぁ?アンタらが抵抗してくれりゃ、私は暴れられる大義名分あるし、ストレス発散できっから、有り難いけど?」
相手にするのも面倒くさくて、適当に返事を返す。
そして、軽く右腕を振る動作をし、空間収納から銃剣を取り出した。
待ってました、と言わんばかりの銃剣に、即座に魔力を通し、剣先を出す。
そして、そのまま肩に担ぐと、奴らを見据えた。
「で、どーすんの。かかってこないなら・・・コッチから、行くよ?」
身体強化の為の魔力を再度巡らせ、いつでも突撃できる体勢をとる。
銃剣には、氷属性と、無属性弾が装填済み。
ヴェルは、また進化をしていて、空間収納に入っている最中に、装填しておいて欲しい弾を思い浮かべておくと、取り出した時点で装填済みになっているという。なんとも優秀な仕様。
担いでいた銃剣を下ろし、ざり、と一歩踏み出すと、奴らは一斉に警戒する。
「うわぁぁぁっ!」
覚悟を決めたのか、男性冒険者が突撃してきた。
太刀筋もふらふらの隙だらけの剣。
その冒険者が向けてきた剣先を、銃剣で弾き懐に入り込むと、銃床で鳩尾を抉る。
何十回と、ビグベルー相手に繰り出した技だ。考えなくても身体が動いた。
「もらった!」
吹っ飛ばした冒険者の影から、護衛の1人が飛び込んでくる。
上段から振り下ろされた切っ先を、身体を揺らいで避けると、そのままガラ空きの胴を目掛けて銃剣を振り抜いた。
軽鎧が凹み、メキ、と、肋骨がイッたであろう音がして、思い切り吹っ飛ばされた護衛は、壁に激突して気絶した。
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