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妄想乙女ゲームに終止符を
256.擬似餌 其の二
しおりを挟む麻袋に入れられた私は、荷物のように運ばれる。
空気の流れが変わり、室内に入ったことが分かる。
運ばれている身体が傾く。
どうやら、地下に向かっているようだ。
扉が開く音がし、中へと進んでいくと、少々乱暴に床に下ろされた。
麻袋が開けられ、外気に触れる。
やはり、少しは息が詰まっていたようだ。
バレないように深呼吸する。
・・・地下室なので、カビ臭い。
「よく、薬が効いてんな。」
「ビガディールを眠らせるほどの強い薬らしいからな。こうも効くもんか。騎士団でも使うような薬を回すなんて、依頼主は太っ腹だ。」
・・・ま、効いてないけどな。
で、『騎士団でも使うような』ねぇ?
内部からの横流し・・・とは考えたくないけど。腕輪と合わせると、なんとも。
何だろなぁ?かなり緩々な状態?
それともここにきて、一気に噴出してる感じ?
アイザック団長さんや、メイア夫人や、副団長さん、隊長さん達を見る限りは問題なさそうなのに。
何処の組織でも、長年なあなあだと、緩々になっちゃうんかなぁ・・・
いつ頃、今のお偉いさん達の体制になったんかな?清掃作業真っ最中?
それに、ジャミングが出来るような魔道具って、そんな簡単に手に入るもん?
・・・領主の娘のワガママじゃ、済まない範疇だよね。
彼女に便乗した何かがあると思っておいた方が良いだろうか?
まぁ。
彼女が犯人と決まったワケじゃないしね。捨て駒の可能性もある。
色々見極めなきゃなぁ。
「・・・しかし、大して美人でもないのに、なんで『疾風』も『英雄』も骨抜きになってんだ?称号持ちなら、女なんて選び放題じゃねぇか。」
「魔力量が多いらしいから・・・なんじゃねぇの?」
「あぁ。“アッチ”の具合がイイってワケか。それ用の囲いな。本命は別、か?」
「なぁ、そんなにイイなら、試してみてもいーんじゃねぇ?クスリの効果でまだ起きねーだろ?」
ひでぇ言われよう。
・・・何かムカついてきたぞ?
ぶっ飛ばしてやろうか。
「まぁ、待てって。依頼主に処分確認してからだ。」
それまで会話に参加してこなかった3人目の男が声をあげた。
・・・どっかで聞いたことのある声だなぁ?
「あぁ?お前は、この女に恨みがあんじゃなかったのか?」
「この女に恨みがあるのは、あの女達さ・・・俺が用があるのは、コイツと組んでる男の方だ。」
「組んでる男?『疾風』じゃねぇのか?」
「・・・ちげぇよ。もう1人の方だ。」
・・・ん?
この3人目の男は、カン君に恨みがあるってこと?
誰だろう?
「・・・まぁ、依頼主の話が終わってから好きにすりゃいいさ。」
「そうだな。魔力制御の腕輪もつけてる事だし。・・・なぁ、『隷属』系のモノは持ってねぇの?」
「流石にそれはねぇなぁ。依頼主なら手に入るのかも知れんが。」
「腕輪しててもよォ、この女A級ライセンスだろ?この後の利用法を考えたら、『隷属』系アイテムは必須じゃねぇ?働かせるにしても、ヤらせるにしてもよォ。」
「・・・今回の成功報酬をもらう時にでも提案するさ。」
下卑た笑い声をあげる男達に、3人目の男は、ため息をつきながら答える。
「・・・まぁ、確かに。その方が、ダメージはでかいか。」
最後には、くすりと笑うその男の呟きを聞いて、流石にイラっとした。
しかし・・・隷属系のグッズかぁ。
今は、カン君の術式に守られてるから、魔力流出はしてないけど。
隷属の術式については、何にも対策してなかったな。
奴隷売買自体は、この国では犯罪だけど。
他所で買った奴隷は持ち込みokらしいから。・・・まぁ、他国の重鎮が来た時に揉めないためでもあるらしいから。
あとは、犯罪者の作業場では使われているらしいし。
なくはない、んだよね。その手のグッズは。
帰ったら、皆んなに相談してみよう。
カン君こそ、隷属させられたら危険だから。
ぐるぐると、そんな事を考えていたら、地下室の扉が開いた。
「アンタ達、依頼主様が見えたわ。その女起こして。」
・・・あ。
扉の先から聞こえてきた女の声は、以前に聞いた事のあるものだった。
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