261 / 393
チェスター家の男
253.収束 其の五
しおりを挟む騎士団での一件の後。
こーくんの婚約者候補(自称)達に絡む状況が動いた。
*
まずは、今回問題になった、女性騎士アンジェリン=サルバさんの関係。
彼女はその後大人しくなり、真摯に刑に服する事にした様子。
しかし、ご実家の方から、チェスター家に抗議が一瞬出たらしい。
・・・思わせぶりな態度のこーくんが悪い、と。
しかも、 何らかの会議の時に、領主様とアイザック団長の前で、アンジェリンさんの父親であるサルバ子爵がチェスター子爵に突っかかった、と。
まぁ、可愛い娘が懲罰を受けたって事が悲しくて、八つ当たりしたかったんだろうとは思う。
しかし、これについては、チェスター子爵が、その場で容赦なくぶった切ったらしい。
嫌味混じりに言ってきた、サルバ子爵に対し、
『思わせぶりも何も、そもそもウチは、最初から断っていたよね?婚約申し込みについては、コウラルの指示で、全員同じ文章使い回したし。その文章が思わせぶりと言うなら、他家も諦めないんじゃ無いの?他は脈無いなって読み取ってんのに、しつこく絡んできたのは、アンタんとこ含めて一部の家だけで、相手にすんの面倒臭かったんだけど?
大体にして文章読解能力の無い、しかも、息子が選んだ、強くて健気な彼女に嫉妬して手を下そうとする、脳内お花畑な娘に育てておいて、恥ずかしく無いの?しかもそれを棚に上げて、ウチに文句つけるなんて、いい度胸してるよね?』
という趣旨を、びっしゃびしゃのオブラートに包んで、一気に言い放ったそうだ。
とりあえず領主様と、アイザック団長さんが、その場を収めたみたいだけど。
相手は戦意を喪失して、すごすごと引き下がったそうな。
・・・まぁ、折角娘が悔い改めようとしてんだから、余計なことすんなって話だよね。
*
次に、レストランで絡んできたゴージャスお嬢のルベリアナ=モスク伯爵令嬢の関係。こっちの方が少しゴタゴタしたらしい。
アンジェリンさんの件が片付いた後位に、チェスター家に再度婚約の打診が来たそうだ。
その中身には、サルバ子爵を貶める発言と、『自分の娘と婚約しなければ、パートナーがどうなっても知らないぞ』的脅しが含まさっていた模様。
それについても、チェスター子爵とこーくんより、家名義で『馬鹿か。断固お断りだ。』と、再度断りの文言を送ったらしい。
それに加えて、
『そういや以前、ウチの息子の彼女に、お前んトコの馬鹿息子がちょっかいかけたんだってなぁ?しかも、精神干渉やらかしやがってたんだって?捕まってざまぁねぇな?
で、精神干渉できんの、その馬鹿息子1人って国への報告だったはずなのに、なんでお嬢様が精神干渉できてんだい?この間、レストランで精神干渉して、自分がコウラルの婚約者で決定だ、と、野次馬の思考誘導して、外堀埋めようとしたみたいだけど、アレはどういうことかなぁ?
・・・つまりは、国に虚偽報告してたんだろ?あぁ、安心しな。ちゃんと国に報告しておいたから。その内、国から調査が入るんじゃね?』
と、いう内容を慇懃無礼に送り返したそうだ。
それにより、モスク領は大荒れ。
手紙が届いただろう時期から間髪入れず、国から調査が入り、ルベリアナお嬢様が精神干渉魔法の使い手である事が確認されたみたい。で、お嬢様は色々とやらかしていたことも判明。物でも人でも、権力と精神干渉の力を使って手に入れていた模様。ゴージャスお嬢様は性格から行動から何もかも真っ黒だったらしい。
他にも、干渉魔法の使い手を、家としても隠し持っていたらしく、そこも大問題に。
そして例のシグルドの腕輪作りのマネーロンダリングにも、一枚噛んでいたらしいことも出てきたみたい。
結果、叩けば叩くだけ埃が舞いまくるという状態に。
まぁ、今まで、キナ臭い話はいっぱいあったんだけど、上手く隠していたのと、寄親的な後ろ盾もあって、国側も攻めあぐねていたと。
それが今回、チェスター家が動いた事で、膠着していた事態も動いた、ということらしい。
しかも、国側と連携を取り、隠す間も与えないタイミングで踏み込ませるあたりが・・・ね。
・・・てな訳で、モスク伯爵家については、お家取り潰し問題が浮上中。
そこはもう、国の管轄の問題で、私達の手からは離れすぎた話。
『欲を出して、小物がチェスター家を取り込もうとするから。』
そう呟いたチェスター子爵の顔は、ダンディーで、とっても良い笑顔なのに、黒いオーラがダダ漏れまくっていた。
・・・チェスター子爵ぱネェなぁ。優しい顔して、的確に相手の嫌な所を抉っていく。『腹黒眼鏡』とお呼びしたいくらいだ。
どうやらこの腹黒な感じは、長男さんに色濃く受け継がれている、とのこと。
そっか、次男さんとも違う感じなのね、と。
まぁ、この国の貴族の間には、昔から都市伝説的に、『チェスター家には手を出すな』みたいな話が伝え続けられているらしいのだけど。
・・・でもまぁ、一辺境伯爵領領主の側近が、そんな力あるなんて、誰が思うかい。
真相を知る貴族達は、無論王族も含め手を出してこないのだけど。
話半分や眉唾と思っている馬鹿な貴族は、チェスター家が絡む事業等が産み出している利益に目が眩み、色々仕掛けてくることがよくあるらしく。
迎撃するのは日常茶飯事だとのこと。
ますます怖いよ。チェスター家。
*
あとは、4件面倒くさい家があったらしいけど。
先の2件のゴタゴタを聞き、それぞれの家から慌てて、『ごめんなさい。婚約断りを受け入れます』との連絡が入ったそうだ。
中には親の説得に諦めきれず、『銀糸の館』へ私と一緒に買い出しに出向いていたこーくんに、突撃をかましたお嬢様が居たんだけど。
『・・・私の理想は、一緒に劣竜種を退治してくれる女性なので。で、貴女は、劣竜種に対して、どのように攻めるのですか?は?戦えない?戦う術を持っていないのに、どうして冒険者である私と一緒になれると思ったのです?』
と、これでもかって着飾ったお嬢様に対し、エゲツない言葉を浴びせて撃退した訳です。
・・・何かもう、開き直ったね、こーくん。
泣きながら去っていくお嬢様の姿に、申し訳なさが生まれる一方で、冒険者になって追いかけて来るくらいの、根性のあるお嬢様ってのは居ないのねぇ、とも思った訳で。
・・・まぁ、追いかけて来たら来たで困るんだけどさ?
てな訳で。
これにより、粗方の婚約者騒動にケリがつき。
残るは、領主様の所のヒルデお嬢様の問題だけとなった。
10
お気に入りに追加
1,009
あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。



婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?
Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」
私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。
さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。
ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。
辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

幸子ばあさんの異世界ご飯
雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」
伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。
食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる