転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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チェスター家の男

253.収束 其の五

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騎士団での一件の後。
こーくんの婚約者候補(自称)達に絡む状況が動いた。





まずは、今回問題になった、女性騎士アンジェリン=サルバさんの関係。
彼女はその後大人しくなり、真摯に刑に服する事にした様子。
しかし、ご実家の方から、チェスター家に抗議が一瞬出たらしい。

・・・思わせぶりな態度のこーくんが悪い、と。 

しかも、 何らかの会議の時に、領主様とアイザック団長の前で、アンジェリンさんの父親であるサルバ子爵がチェスター子爵お父さまに突っかかった、と。
まぁ、可愛い娘が懲罰を受けたって事が悲しくて、八つ当たりしたかったんだろうとは思う。
しかし、これについては、チェスター子爵お父さまが、その場で容赦なくぶった切ったらしい。

嫌味混じりに言ってきた、サルバ子爵に対し、
『思わせぶりも何も、そもそもウチは、最初から断っていたよね?婚約申し込みについては、コウラル本人の指示で、全員同じ文章使い回したし。その文章が思わせぶりと言うなら、他家も諦めないんじゃ無いの?他は脈無いなって読み取ってんのに、しつこく絡んできたのは、アンタんとこ含めて一部の家だけで、相手にすんの面倒臭かったんだけど?
大体にして文章読解能力の無い、しかも、息子コウラルが選んだ、強くて健気な彼女リンさんに嫉妬して手を下そうとする、脳内お花畑な娘に育てておいて、恥ずかしく無いの?しかもそれを棚に上げて、ウチに文句つけるなんて、いい度胸してるよね?』
という趣旨を、びっしゃびしゃのオブラートに包んで、一気に言い放ったそうだ。

とりあえず領主様と、アイザック団長さんが、その場を収めたみたいだけど。
相手は戦意を喪失して、すごすごと引き下がったそうな。

・・・まぁ、折角娘が悔い改めようとしてんだから、余計なことすんなって話だよね。





次に、レストランで絡んできたゴージャスお嬢のルベリアナ=モスク伯爵令嬢の関係。こっちの方が少しゴタゴタしたらしい。

アンジェリンさんの件が片付いた後位に、チェスター家に再度婚約の打診が来たそうだ。
その中身には、サルバ子爵を貶める発言と、『自分の娘と婚約しなければ、パートナーがどうなっても知らないぞ』的脅しが含まさっていた模様。

それについても、チェスター子爵お父さまとこーくんより、家名義で『馬鹿か。断固お断りだ。』と、再度断りの文言を送ったらしい。

それに加えて、
『そういや以前、ウチの息子の彼女パートナーに、お前んトコの馬鹿息子がちょっかいかけたんだってなぁ?しかも、精神干渉やらかしやがってたんだって?捕まってざまぁねぇな?
で、精神干渉できんの、その馬鹿息子1人って国への報告だったはずなのに、なんでお嬢様が精神干渉できてんだい?この間、レストランで精神干渉して、自分がコウラルの婚約者で決定だ、と、野次馬ギャラリーの思考誘導して、外堀埋めようとしたみたいだけど、アレはどういうことかなぁ?
・・・つまりは、国に虚偽報告してたんだろ?あぁ、安心しな。ちゃんと国に報告しておいたから。その内、国から調査が入るんじゃね?』
と、いう内容を慇懃無礼に送り返したそうだ。

それにより、モスク領は大荒れ。
手紙が届いただろう時期から間髪入れず、国から調査が入り、ルベリアナお嬢様が精神干渉魔法の使い手である事が確認されたみたい。で、お嬢様は色々とやらかしていたことも判明。物でも人でも、権力と精神干渉の力を使って手に入れていた模様。ゴージャスお嬢様は性格から行動から何もかも真っ黒だったらしい。

他にも、干渉魔法の使い手を、家としても隠し持っていたらしく、そこも大問題に。
そして例のシグルドの腕輪作りのマネーロンダリングにも、一枚噛んでいたらしいことも出てきたみたい。

結果、叩けば叩くだけ埃が舞いまくるという状態に。

まぁ、今まで、キナ臭い話はいっぱいあったんだけど、上手く隠していたのと、寄親的な後ろ盾もあって、国側も攻めあぐねていたと。
それが今回、チェスター家が動いた事で、膠着していた事態も動いた、ということらしい。
しかも、国側と連携を取り、隠す間も与えないタイミングで踏み込ませるあたりが・・・ね。

・・・てな訳で、モスク伯爵家については、お家取り潰し問題が浮上中。
そこはもう、国の管轄の問題で、私達の手からは離れすぎた話。


『欲を出して、小物がチェスター家を取り込もうとするから。』


そう呟いたチェスター子爵お父さまの顔は、ダンディーで、とっても良い笑顔なのに、黒いオーラがダダ漏れまくっていた。

・・・チェスター子爵お父さまぱネェなぁ。優しい顔して、的確に相手の嫌な所を抉っていく。『腹黒眼鏡』とお呼びしたいくらいだ。
どうやらこの腹黒な感じは、長男ライルさんに色濃く受け継がれている、とのこと。
そっか、次男ケネックさんとも違う感じなのね、と。


まぁ、この国の貴族の間には、昔から都市伝説的に、『チェスター家には手を出すな』みたいな話が伝え続けられているらしいのだけど。
・・・でもまぁ、一辺境伯爵領領主の側近が、そんな力あるなんて、誰が思うかい。

真相を知る貴族達は、無論王族も含め手を出してこないのだけど。
話半分や眉唾と思っている馬鹿な貴族は、チェスター家が絡む事業等が産み出している利益に目が眩み、色々仕掛けてくることがよくあるらしく。
迎撃するのは日常茶飯事だとのこと。

ますます怖いよ。チェスター家。





あとは、4件面倒くさい家があったらしいけど。
先の2件のゴタゴタを聞き、それぞれの家から慌てて、『ごめんなさい。婚約断りを受け入れます』との連絡が入ったそうだ。

中には親の説得に諦めきれず、『銀糸の館』へ私と一緒に買い出しに出向いていたこーくんに、突撃をかましたお嬢様が居たんだけど。


『・・・私の理想は、一緒に劣竜種レッサードラゴンを退治してくれる女性ヒトなので。で、貴女は、劣竜種レッサードラゴンに対して、どのように攻めるのですか?は?戦えない?戦う術を持っていないのに、どうして冒険者である私と一緒になれると思ったのです?』


と、これでもかって着飾ったお嬢様に対し、エゲツない言葉を浴びせて撃退した訳です。
・・・何かもう、開き直ったね、こーくん。

泣きながら去っていくお嬢様の姿に、申し訳なさが生まれる一方で、冒険者になって追いかけて来るくらいの、根性のあるお嬢様ってのは居ないのねぇ、とも思った訳で。
・・・まぁ、追いかけて来たら来たで困るんだけどさ?


てな訳で。
これにより、粗方の婚約者騒動にケリがつき。


残るは、領主様の所のヒルデお嬢様の問題だけとなった。



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