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脅威との遭遇
203.探索本題(+第三者視点)
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※ 話数修正しています。
*****
ひとしきり鑑定結果を確認し。
私達は鑑定さんの暴走具合に頭を抱えた。
とりあえず、こーくんの補足説明は見なかった事にする。
後でカン君からでも突っ込まれない限りは触れないでおこう。
他人から見られるものは、その都度こーくんに確認してもらう。
私の職業『銃剣闘士』は表示変更しようもない為、とりあえずこのまま。
故郷にある特殊職と誤魔化していくことに。
まぁ、カン君の『魔導師』もヤバいみたいだけども。ベネリさんのような魔法使いは『魔術師』表記らしいし。
・・・字面から導いちゃってるよねぇ。格上感満載。
「トランシーバーを作れそう発言は、魔工技師の職業スキルの所為、って事でいいのかな。」
「・・・じゃ、ないっスかね。多分腕輪改造したりなんだりで、生えたんだろうなぁ。」
「ま、実際に作ったりするのは、探索終わってからにしよう。今はまず、探索が第一だ。」
「ん。そだね。じゃ、奥に進もうか。」
こーくんの声かけに軽く頷き、私達は気持ちを切り替えて、森奥へ向かった。
***
『旅馬車』達とは逆側を探索中の『猟犬』。
ファーマスは、この森林地帯の不穏さに眉を顰める。
イグバイパーの縄張り範囲は広い。
リン達の昇格試験で、そんなに広い範囲を索敵はしていないだろう。
なのに、11体のイグバイパーを退治している。縄張り抜きに狭い範囲に密集していたイグバイパー。ロイドが不審に思って当たり前だ。
森林地帯に入った当初、雑魚から、イグバイパーに至るまで、色々な魔獣が居た。
奥に進むにつれ、数が減りはじめ。
予定の半分ほど進んだ所で、魔獣の出現が無くなった。
「・・・ファーマスさん、静かすぎませんか?」
「ん。この界隈の生き物の気配がない。」
同じことを考えていたのだろう。
ベネリとイズマが口を開いた。
「あぁ・・・只事じゃなさそうだ。このまま奥に進むが、信号弾に注意しておけ。クラスBの連中には、荷が重いかもしれん。」
「「分かりました。」」
ファーマスの言葉に、引き締まった顔を見せる2人。
一抹の不安を抱えながら、彼等は森の奥へと進んでいく。
その時。
『ギギャャャアアアアァァーーーー!!』
森の奥から、大気を揺るがす様な凄まじい咆哮が響き。
進行方向より2時の方角に信号弾があがった。
「あの距離っ・・・『影猿』かっ!?」
「ジェリっ?!・・・ファーマスさん!」
「あぁっ!すぐに救援に向かう!」
『影猿』側に近いのは、リン達『旅馬車』。
コウが一緒の今、よっぽどのことがない限り、魔獣相手の戦闘に遅れをとることはないだろう。
それでも、絶対はない。
ーーー嫌な予感は、よく当たる。
舌打ちと共に、ファーマス達は信号弾が上がった方に駆け出していった。
***
信号弾が上がる、ちょっと前。
クラスBパーティー、それぞれに森の異変を感じていた。
クラスBとはいえ、索敵に長けた彼らだからこそ感じる、不気味な程、静かすぎる状態。
気味の悪さを感じながら、それぞれに分担し四方八方に注意を張り巡らせていた。
中でも、『影猿』の進行速度は群を抜いていた。
彼等の出自はスラムの孤児。
生き抜く為にスリや万引き色々やってきた。
捕まらない為に鍛えた逃げ足は、身体強化も相まって、衛兵如きには捕まらなかった。
ところがある日、1人の冒険者に捕まる。衛兵や騎士なんかよりガタイの良い、赤茶髪の偉丈夫。
彼の背負う黒の大剣を盗もうとして、失敗した。
殺されても文句の言えない状況だったのに、その男は彼等を1発ずつ殴ると、「こんな所で腐ってんじゃねぇ。どうせなら、その脚と気配察知を活かして、情報を取ってこい。俺が買ってやる。」と言い放った。
それから、彼等は街の噂話や、冒険者や衛兵、騎士達が話す情報を集め始める。
逐一偉丈夫に報告すれば、良い情報、要らない情報、一見無駄に見えて大事な情報、見分け方を教えてくれた。
どんどんと精度が上がり、色々な所から頼られるようになった。
ある時、魔獣の情報を拾い、偉丈夫に伝えた所、魔獣暴走の予兆だと、険しい顔で冒険者ギルドに連れて行かれた。
彼等は自分達が拾ってきた情報で、討伐隊が組まれるのを目の当たりにした。
魔獣暴走が大きくなる前に制圧できたと、喜ばれた。
その時から、彼等の生き方が変わった。
探索と警戒に長けたジェリは、盗賊と付与術師の職を。
攻撃力強いのに、臆病で逃げ足の速いタカは、暗殺者の職を。
2人を大事に思い、守りを固めるナルは、守護戦士の職を。
後天的に手に入れる事が出来た。
身体強化の逃げ足はそのままに。
そして冒険者になった。
人気の無い、探索や採取をメインとする冒険者に。
雑用パーティーと揶揄されようが、自分達の価値を分かって、必要としてくれる人がいる。
それがどんなに、心強いか。
「・・・ファーマスの旦那に、恩返ししないと、な。」
ジェリはポツリと呟く、
『ンなの、必要ねぇ。』
って、笑いながら、あの人は言うんだろう。
でも、自分達の生き方を変えてくれたのは彼だから。一生かかっても、払いきれない恩義だ。
それに。
彼が育てた連中も気が良くて。
ベネリやイズマは歳も近く、自分達の出自を知っても、他の冒険者の様に蔑む事なく接してくれた。
大事な仕事も相談してくれ、任せてくれた。
『ケルベロス』が引き起こした魔獣暴走の時も、命を預ける様な真似をしてくれた。
そして、先程挨拶を交わしたリン。
最速でA級になり、明らかに自分達より格が上。
それなのに、自分達を冒険者の先輩だと言い、敬ってくれた。
アイツらに、自分達の情報が活かされるのら、下っ端業も楽しめる。
ーーー頼られたら、全力で応えるしか無いじゃないか。
ふと、口元が緩んだ。
「ジェリ、楽しそうだね?どうかした?」
横で並走していたナルに、声をかけられる。
「・・・なんでもねーよっ。それより、オレらが一番乗りすっぞっ!」
緩んだ口元を誤魔化す様に、鼓舞する様な声を上げた。
「わかったよー」
「ん。」
気の抜けたようなナルの返事と、聞こえるか聞こえないか頷くだけのタカの返事。
いつも通りの『影猿』の様子だったが。
『・・・なんだっ!?』
3人揃って足が止まる。
凄まじい程の圧力。
本能が、近寄ってはいけないと告げる。
それでも。
気持ちを振るい立たせ、ジェリは一歩踏み出した。
木々の中に開けた場所がある様子で。
やっとの思いで辿り着き、木の陰から広場を望む。
「・・・なんだよ、あれ。」
眼下に広がる光景に、思わず呟く。
怪物と対峙する、見覚えのある冒険者達。
幾人かは血塗れで倒れ。
意識のある者も、戦意を喪失している。
あの場にいる冒険者達は、いつも自分達を馬鹿にしていた『獅子の牙』と『水の女神』の連中。
「・・・何して、やがる。」
歯軋りをして呟いたジェリに、怪物の目が向いた。
その刹那、
『ギギャャャアアアアァァーーーー!!』
その場にいる何もかもを蹂躙するような、凄まじい咆哮が放たれた。
*****
ひとしきり鑑定結果を確認し。
私達は鑑定さんの暴走具合に頭を抱えた。
とりあえず、こーくんの補足説明は見なかった事にする。
後でカン君からでも突っ込まれない限りは触れないでおこう。
他人から見られるものは、その都度こーくんに確認してもらう。
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「・・・じゃ、ないっスかね。多分腕輪改造したりなんだりで、生えたんだろうなぁ。」
「ま、実際に作ったりするのは、探索終わってからにしよう。今はまず、探索が第一だ。」
「ん。そだね。じゃ、奥に進もうか。」
こーくんの声かけに軽く頷き、私達は気持ちを切り替えて、森奥へ向かった。
***
『旅馬車』達とは逆側を探索中の『猟犬』。
ファーマスは、この森林地帯の不穏さに眉を顰める。
イグバイパーの縄張り範囲は広い。
リン達の昇格試験で、そんなに広い範囲を索敵はしていないだろう。
なのに、11体のイグバイパーを退治している。縄張り抜きに狭い範囲に密集していたイグバイパー。ロイドが不審に思って当たり前だ。
森林地帯に入った当初、雑魚から、イグバイパーに至るまで、色々な魔獣が居た。
奥に進むにつれ、数が減りはじめ。
予定の半分ほど進んだ所で、魔獣の出現が無くなった。
「・・・ファーマスさん、静かすぎませんか?」
「ん。この界隈の生き物の気配がない。」
同じことを考えていたのだろう。
ベネリとイズマが口を開いた。
「あぁ・・・只事じゃなさそうだ。このまま奥に進むが、信号弾に注意しておけ。クラスBの連中には、荷が重いかもしれん。」
「「分かりました。」」
ファーマスの言葉に、引き締まった顔を見せる2人。
一抹の不安を抱えながら、彼等は森の奥へと進んでいく。
その時。
『ギギャャャアアアアァァーーーー!!』
森の奥から、大気を揺るがす様な凄まじい咆哮が響き。
進行方向より2時の方角に信号弾があがった。
「あの距離っ・・・『影猿』かっ!?」
「ジェリっ?!・・・ファーマスさん!」
「あぁっ!すぐに救援に向かう!」
『影猿』側に近いのは、リン達『旅馬車』。
コウが一緒の今、よっぽどのことがない限り、魔獣相手の戦闘に遅れをとることはないだろう。
それでも、絶対はない。
ーーー嫌な予感は、よく当たる。
舌打ちと共に、ファーマス達は信号弾が上がった方に駆け出していった。
***
信号弾が上がる、ちょっと前。
クラスBパーティー、それぞれに森の異変を感じていた。
クラスBとはいえ、索敵に長けた彼らだからこそ感じる、不気味な程、静かすぎる状態。
気味の悪さを感じながら、それぞれに分担し四方八方に注意を張り巡らせていた。
中でも、『影猿』の進行速度は群を抜いていた。
彼等の出自はスラムの孤児。
生き抜く為にスリや万引き色々やってきた。
捕まらない為に鍛えた逃げ足は、身体強化も相まって、衛兵如きには捕まらなかった。
ところがある日、1人の冒険者に捕まる。衛兵や騎士なんかよりガタイの良い、赤茶髪の偉丈夫。
彼の背負う黒の大剣を盗もうとして、失敗した。
殺されても文句の言えない状況だったのに、その男は彼等を1発ずつ殴ると、「こんな所で腐ってんじゃねぇ。どうせなら、その脚と気配察知を活かして、情報を取ってこい。俺が買ってやる。」と言い放った。
それから、彼等は街の噂話や、冒険者や衛兵、騎士達が話す情報を集め始める。
逐一偉丈夫に報告すれば、良い情報、要らない情報、一見無駄に見えて大事な情報、見分け方を教えてくれた。
どんどんと精度が上がり、色々な所から頼られるようになった。
ある時、魔獣の情報を拾い、偉丈夫に伝えた所、魔獣暴走の予兆だと、険しい顔で冒険者ギルドに連れて行かれた。
彼等は自分達が拾ってきた情報で、討伐隊が組まれるのを目の当たりにした。
魔獣暴走が大きくなる前に制圧できたと、喜ばれた。
その時から、彼等の生き方が変わった。
探索と警戒に長けたジェリは、盗賊と付与術師の職を。
攻撃力強いのに、臆病で逃げ足の速いタカは、暗殺者の職を。
2人を大事に思い、守りを固めるナルは、守護戦士の職を。
後天的に手に入れる事が出来た。
身体強化の逃げ足はそのままに。
そして冒険者になった。
人気の無い、探索や採取をメインとする冒険者に。
雑用パーティーと揶揄されようが、自分達の価値を分かって、必要としてくれる人がいる。
それがどんなに、心強いか。
「・・・ファーマスの旦那に、恩返ししないと、な。」
ジェリはポツリと呟く、
『ンなの、必要ねぇ。』
って、笑いながら、あの人は言うんだろう。
でも、自分達の生き方を変えてくれたのは彼だから。一生かかっても、払いきれない恩義だ。
それに。
彼が育てた連中も気が良くて。
ベネリやイズマは歳も近く、自分達の出自を知っても、他の冒険者の様に蔑む事なく接してくれた。
大事な仕事も相談してくれ、任せてくれた。
『ケルベロス』が引き起こした魔獣暴走の時も、命を預ける様な真似をしてくれた。
そして、先程挨拶を交わしたリン。
最速でA級になり、明らかに自分達より格が上。
それなのに、自分達を冒険者の先輩だと言い、敬ってくれた。
アイツらに、自分達の情報が活かされるのら、下っ端業も楽しめる。
ーーー頼られたら、全力で応えるしか無いじゃないか。
ふと、口元が緩んだ。
「ジェリ、楽しそうだね?どうかした?」
横で並走していたナルに、声をかけられる。
「・・・なんでもねーよっ。それより、オレらが一番乗りすっぞっ!」
緩んだ口元を誤魔化す様に、鼓舞する様な声を上げた。
「わかったよー」
「ん。」
気の抜けたようなナルの返事と、聞こえるか聞こえないか頷くだけのタカの返事。
いつも通りの『影猿』の様子だったが。
『・・・なんだっ!?』
3人揃って足が止まる。
凄まじい程の圧力。
本能が、近寄ってはいけないと告げる。
それでも。
気持ちを振るい立たせ、ジェリは一歩踏み出した。
木々の中に開けた場所がある様子で。
やっとの思いで辿り着き、木の陰から広場を望む。
「・・・なんだよ、あれ。」
眼下に広がる光景に、思わず呟く。
怪物と対峙する、見覚えのある冒険者達。
幾人かは血塗れで倒れ。
意識のある者も、戦意を喪失している。
あの場にいる冒険者達は、いつも自分達を馬鹿にしていた『獅子の牙』と『水の女神』の連中。
「・・・何して、やがる。」
歯軋りをして呟いたジェリに、怪物の目が向いた。
その刹那、
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