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脅威との遭遇
200.探索部隊顔合わせ
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朝の9の刻。
ニースの森で退治したイグバイパーがあったなぁ、と思い出し、昨日の解体復習でもしようかと、家の外に出る。
すると、丁度クラスBパーティー達と、残るギルドの職員達がやって来た所だった。
ふと見ると、何処かで見かけたような冒険者が居た。
小柄な光沢のある茶金髪の男性と、ひょろっと背の高い青銀髪の男性。
青銀髪の男性は、気を抜くとその存在が掻き消えてしまうほど、気配遮断が上手な様子。
その2人の近くには、ゴツい盾を持った剣士がいる。茶銀髪のその男性は剣士の割に、纏う雰囲気がのほほんとしている感じ。
男性3人なので、彼らが『影猿』なのだろう。
じぃ、と見ていると、青銀髪の男性と目が合う。何となくペコリと頭を下げた。
彼はびっくりした様子で此方を見ると、隣にいた小柄な男性に声をかけていた。
すると、その男性は、青銀髪さんを連れて、此方にやってきた。
「久しぶりだな。元気そうで何よりだ。すっかりライセンス抜かれちまったなぁ。」
私と身長が大差ない彼は、人懐っこそうな笑みを浮かべて、声をかけてきた。
「あ、はい。お久しぶりです?」
曖昧なまま、笑みを浮かべてお辞儀を返す。
やはり、何処かで会っているらしいが、思い出せない。
「ははっ、誰だかわかんねぇって顔してんな。まぁ、会ったの一瞬だったしな。」
「??」
「あ、ジェリにタカ。久しぶり~。その節はどーもー」
困惑していると、ベネリさんがヒラヒラと手を振りながらやって来た。
「おぅ。久しぶり。」
片手を上げ、親しげにする小柄な男性。青銀髪さんも、ペコリとお辞儀をした。
「リン、彼らは『影猿』のジェリとタカ。ジェリは盗賊、タカは暗殺者のスキル持ち。で、魔獣暴走の時の協力者だ。」
「あ。それで。」
魔獣暴走の際に、索敵練習と称して、あの場で待機していてくれ。
イズマさんが信号弾が撃った後直ぐに、冒険者ギルドまで走ってもらった2人。
索敵上で動いた青丸の方を見た際に、一瞬姿を見た気がして。その時に目が合っていたのかもしれない。
私は再度、頭を下げる。
「・・・ちゃんとご挨拶していなくて申し訳ありません。あの時はありがとうございました。」
「いやいや、俺らもちゃんと顔合わせしてなかったからな。ごめん、急に声かけてビックリしただろ。コイツが『気づかれた』ってビックリしてたもんだからさ。しっかし、コイツの気配遮断を見分けんのスゲェな?A級になったのも頷けるわ。」
ジェリさんは、親指を上げ、斜め後ろに立つタカさんを指差す。
コクコクと頷くタカさん。
真正面から褒められ、気恥ずかしくなりながら、私は「どうも」としか言えなかった。
「お前達だって、十分に強いんだけどなぁ。A級昇格受けないのか?」
「いんにゃ。俺らは討伐より、探索向きだからな。下働きが性に合ってんだよ。俺らが調べた情報を、アンタらが上手く使ってくれりゃそれで良いんだ。その為には、B級の方が何かと動きやすい。それにA級は貴族的対応も必要だろ?俺らみたいな平民底辺出にゃ無理だ。」
両手を上げ、首をすくめながらも、ニカ、と笑顔を見せるジェリさん。
ベネリさんとも仲良く、気が許せる相手の様子。悪い人では無さそう。
それに、自分達の仕事の仕方に信念を持ってる様子が垣間見え、尊敬の念を抱く。
「とりあえず、今回の探索依頼は協働戦線だ。世話になる。宜しくな。」
ジェリさんが、ベネリさんに手を差し出す。
ベネリさんも、直ぐその手を握り返す。
「こちらこそ。」
「そっちの嬢ちゃんもな。」
「あ、ちゃんと名乗ってませんでしたね。お陰様で先日A級ライセンス冒険者になりました、リンです。所属は『旅馬車』です。宜しくお願いします。」
「『旅馬車』って、え?あの『疾風』が新たに組んだってパーティーのか?!そりゃまた、規格外なっ。」
あちゃーという感じで、おでこに手を当てて、大袈裟に驚くジェリさん。
「ま、よろしく。」
「こちらこそよろしくお願いします。私は冒険者になって、日が浅いので、至らない点が多々あると思いますんで、ご指摘頂けたらありがたいです。」
「・・・謙虚っちゅーか、なんちゅーか。A級ライセンスなんだから、もっと強気でいいんじゃねぇの?舐められるぜ?」
「ん?ジェリさんもタカさんも、ベネリさんのお知り合いですし、私にとっては、冒険者としての先輩さんですから。」
営業スマイルを返しつつ差し出された手を握り返すと、ジェリさんは少し困ったような顔で私を見つめ返す。
隣でベネリさんが溜息をついた。
「この娘、こーゆー感じなんだよねぇ。宜しく頼むわ。」
「・・・りょーかい。なんつーか、調子狂うわ。ま、今回だけじゃなくって、今後ともよろしくな?」
隣でタカさんもコクリと頷く。
・・・喋れない訳じゃないと思うけど。声が聞こえないなぁ。
「あ、一応、うちのリーダーも紹介しとくわ。おぃ!ナル!」
「ん~?どうしたの?」
リーダーと紹介された剣士のナルさんは、のほほんとした雰囲気に違わず、マイペースな方の様子。
「あれでいて、戦いでスイッチ入ったら、人が変わるんだよ?」
こっそりと、ベネリさんから聞いた話で、人は見かけによらない事を学んだ気がした。
*
その後、『蒼穹の剣』の方々、『朧梟』の方々とも軽く挨拶。
『蒼穹の剣』はリーダーが剣士さん、メンバーが斥候・中衛担当さんと、女性の魔法使いさん。
『朧梟』はリーダーが男性の弓師さんで、メンバーが女性の格闘家さんと斥候・盗賊さん。
なんと。斥候さんは、獣人さんだった。茶色い猫耳がピコピコと頭の上で動いていた。
すっごい勢いでガン見していたら、私の視線をこーくんが遮り、耳元で囁く。
「・・・鈴、彼女の耳とか勝手に触っちゃだめだからね?」
「え、しないよ?」
「手、ワキワキしてる。」
右手を突かれる。
「モフるのは、ヴェルだけにしときなさい。」
「ふぁぃ。」
でもなぁ。
女の子だし、ちょっと仲良くなりたいんだけどなぁ。
ダメ、かなぁ?
あ、因みに、例のメイドさん雇い話は、クラスBパーティーさん達はされていないとのこと。
・・・何だかなー。
******************
※ 猫獣人さんの毛色を、この後の展開に合わせ変更しています。
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