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旅馬車活動開始
198.身を守る、とは
しおりを挟む※ 下ネタ、というか、貞操概念話の回です。ご注意。
***************
食事がひと段落し、片付けをしていた所、寛いでいた師匠が、みんなを呼び寄せた。
リビングの1人がけソファに師匠、2人がけソファにイズマさん、ベネリさん。
ダイニングの1人がけ椅子を持ってきて、私達3人はそれぞれ座る。
揃った所でおもむろに、今日のザイルさんと村長さんとの打合せ内容を話し始めた。
内容としては、現在利用している空き家の管理手伝いに、村の女性達を雇ってくれないか、というもの。
つまりは、家政婦さんっつーか、メイドさん?を雇えと。
聞いた瞬間、ベネリさん、イズマさんの顔が、苦虫を噛み潰したようになる。私とカン君は顔を見合わせた。
「要らねぇし。」
「要らないねぇ。良からぬ事考えてるの丸わかりじゃん。村娘喰ってヤるほど、節操無いと思われてんのかねぇ?」
イズマさんとベネリさんが呆れた声を上げた。
「ねー、そう思うでしょ?」
「ホント、しつけぇのな。」
こーくんと師匠がウンザリした顔をした。
私は首を傾げ、先を促す。
「で、どうしたんです?」
「別に大きな家でもないし、僕たちが借りている家には要らない。この後くるクラスBパーティーが要ると言えば其方に、と伝えた。それでも尚、食い下がられたよ。」
「パーティー内部の打ち合わせも頻繁に行われる、秘匿情報も多いから、必要ない。むしろ居たら困る、と伝えもしたがなぁ。」
「でも、ま。最終的には、“話なんない。まだ言うなら、野営するわ。”で片付けたけど。」
溜息交じりに言葉を吐き出す2人。
田舎だし、新しい産業がないから、雇用の機会が増えたと思えば、チャンスは逃したくはないだろう。
でも、話の流れから、金持ってるんだから雇え、って事ではないんだよね?
ココには、A級ライセンス持ちのイケメン冒険者がゴロゴロといる。
・・・あわよくば、お手付きになる事を望んでいるってこと?
思わず、額に手が行った。
「・・・この世界の貞操概念が、わからん。」
「簡単だよ。魔力のある、強い『雄』と一緒になる。ただそれだけ。」
隣に座るこーくんが、吐き捨てるように言い放つ。
「肌さえ重ねれば『選んでもらった』、それだけで箔がつき。子どもができれば『相手の子どもを産んだ』って既成事実。魔力特性は現れるから、子どもの判別もつきやすいしね。条件では、一夫多妻、一妻多夫も認められる。」
「避妊の概念は?」
「それ用のポーションはある。でも、巷で出回っているのは100パーじゃ無いから。食い下がる女性達は多いみたいだよ?その点、レザ先生のポーションは、効果100パーなんだよね。だから、馬鹿高く取引されてる。」
「男女共通なの?」
首を捻ると、今度は師匠が口を開く。
「・・・本来は、意図しない性交渉をされた女性用として、アイツは作っていた。2日以内に服用すれば妊娠はしないと。
それが男女共に効果があることが判明したから、今じゃ、どっちにも使われてる。巷で出回っているのは、通常薬師でも作れるようにと、改良された物・・・アイツが作った物の劣化版だ。
レザの物は、上位貴族やA級ライセンス冒険者達の護身用だな。」
「つまりは、殺精子剤と、緊急避妊用ピルの合算か。使用方法は服用のみです?」
「基本はな。あとは、塗るとか、入れるとか、だなぁ。」
「おわぁ。ローション代わり。万能薬ですねぇ。副作用は無いんですか?」
レザ先生の、前世記憶のなせる技なんだろうなぁ。
ゴムは無い、貞操概念が緩く、本能に近い。この世界で身を守るためには、ヤらないか、自分の出すもの、入れられたモノを管理するしか無い。・・・性病は、無いんだろか。
次から次へと湧いて出てくる疑問。
ぽんぽんと交わされる会話に、ベネリさんとイズマさん、カン君は、キョトンとして、私を見ている。
「飲み続けると、男女共に生殖能力が半減する。」
「ふーん・・・高を括って使用しすぎると、子どもができにくくなる訳だ。それじゃ、遊びまくってたら弊害は出るんだね。・・・あ、でも、跡取り問題が解決してる良家の御当主は、やりたい放題できるのか。1回飲みゃ、2日は好き放題と。」
「お前なぁ、ちょっとは言い回し・・・まぁ、実際その通りだけどよ。」
ごにょ、と言い澱む師匠。
ふと隣を見ると、真剣な顔でこーくんが此方を見ていた。
「だから、リン。気をつけなきゃダメだよ?」
「私?」
じぃ、と、こーくんが、私を見つめる。
・・・はて?
気をつけるなら、みんなの方じゃないの?
「自分の『子種』は、より優秀な相手と残したいと考えるのは男女共通なんだよ?
女性が、魔力のある、強い『雄』に惹かれるのと同じに、男達だって、魔力のある、強い『雌』に惹かれる。
その点、君は魔力がダダ漏れなほど有り余ってるんだから、危険なんだよ。」
「あ、それ前に、ベネリさんにも言われましたね。」
ふとベネリさんを見ると、今度は顰めっ面でこっちを見て頷いた。
師匠がその先を続ける。
「リンもカンも、魔力量が多いからな。だからこそ、コウと組ませたかった。まぁ、組ませるしかなかったとも言えるがな。」
「さっきリンが言ってた、おエライさん相手が厄介なんだよ?それに巻き込まれないようにと、A級ライセンスになってもらったけど。それでも、『膨大な魔力持ち』は狙われやすい。
・・・囲うだけじゃなくて、恩恵に預かろうと肌を合わせようとする輩だっていっぱいいるんだ。だから、1人で無茶はしないで。僕やカンから離れないで。」
「うー?うん。」
どうもピンとこない。
こーくんや『猟犬』のメンバーの貞操が常に危険なのは想像がつく。みんなそれぞれにイケメンさんだし。
私やカン君はぶっちゃけフツー顔。平均的日本人顔というか。
まぁ、カン君については今後魔導師として目立ってくるだろうから、カッコよくなるだろうし。純朴だから、騙されないようにね、とは思うけどさ。
・・・私?
絡んでくるおねーさん達、みんな揃いに揃って美人だったし。
私みたいな器量無し、ガサツな女子力底辺が狙われると言われても、ホントにピンとこない。
向こうに居た時だって、モテ期はなかったしなぁ。
まぁ、魔力量と武器から、使える兵器としては狙われるだろうなぁ。うん。
そこは注意しなきゃなぁ。
「あ、ダメだコイツ。分かってない。」
「何が?」
「・・・いいよ、もう。兎に角、勝手に1人でぶっ込んでかない。いいね?」
「うん?兵器利用されないように注意するね?」
はぁ、と、こーくんと師匠が大きく溜息を吐く。
「あんなぁ、リン。お前、自分の周りに男が群がらねぇから、実感ないだろ。」
「何の?」
「・・・何の為に、お前を森に隔離してたと思ってる。」
「え?立場が明確化するまで、武器利用されないように、でしょ?」
一斉に全員の目が刺さる。
何故、残念な顔してるかなぁ?
「・・・危機感ゼロも、ここまでくると、いっそ清々しいね。」
「まぁ、コウもカンも、頑張れ。」
ベネリさんとイズマさんが、完全に投げやり。
何故私が悪い雰囲気?
「『ケルベロス』掃討後の、騎士団連中が寄ってきた状況に、毎回なりたいか?」
「はぃ?あれは、銃剣が珍しかったからでしょう?」
「・・・言っただろう。『闘える女なんて、格好の的だ』と。」
「は?」
「膨大な魔力を持ってして、闘える力がある女は、伴侶として最適だ、と言ってるんだ。」
「へ?・・・にしたって、私なんかより、綺麗なおねーさん達はいっぱいいる訳でさ?私なんか結婚相手にしないべさ。」
前世で結婚してたこーくんには悪いけど、ないない、と、顔の前で手を振る。
あるとすれば、兵器利用で囲うため、愛のないお飾りの正妻に据えられるとか、妾にされるパターン?身体だけ狙われる小説あるあるだよね?
あー、と師匠が頭を抱えた。
こーくんが困り顔で私の頬に手を添える。
「・・・もういいよ、それで。この世界で君を可愛がる珍しい男は、僕とカン。それとファーマスさんだけ。ベネリさんとイズマさんは、面倒見てくれるお兄さん。後、他の男が寄ってきても、君を利用しようとする輩だから相手にしないで。いいね?」
「う、うん。」
「カン、なるべくリンから離れないでくれるかな?」
「了解です。」
こーくんからのよく分からない威圧に、強制的に頷かされた感が満載で、腑に落ちないけど。
とりあえずは、知らない人には1人で関わらない、かな?
あとはモテ男子達の、とばっちり回避だよねー。
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