転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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旅馬車活動開始

188.ギルドあるある、なトラブル

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「・・・おい、アンタら、新人って言ったって、俺ら『グレイハウンド』所属のB級ライセンス持ちなんだけど。」


カン君がドスの効いた声を上げて、間に割って入ってくる。
珍しい。怒りが露わだ。
カン君は首から下げたドッグタグを取り出す。
勿論、B級ライセンスを示す銀色。


「何ですって!?」

「ふっっ、ふざけた事言わないでよ!私達がB級ライセンスになる為に何年かかったと思ってんのよ!」

「アンタらが、何年かかったかなんて知ったこっちゃない。俺らは俺らのペースでランクを上げているだけだ。」

「数か月でB級になるなんて、そんなことある訳ないじゃないっ!どんなイカサマしたのよっ!」


あー・・・
自分の許容範囲外の事が起こると、受け入れられないヤツだね。

まぁ、私が今居る立ち位置は、彼女達にしてみりゃ、喉から手が出る程に欲しい場所だよね。

イケメンと一緒にパーティー組んで。
危険な依頼を一緒に乗り越えて。
時折自分が危険な目にあって、助けてもらって。
愛を育むんですか、そうですか。

やっすいアニメかい?

でも現実はそうじゃないから、手っ取り早く、ぽっと出の私如きの立ち位置を奪いたいんだろうなぁ。

さて、悪目立ちして、周りの注目も浴びてしまってる。
無視して逃げようにも、逃げられないなぁ。

ひそひそ、こそこそと話す声も聞こえてくる。

曰く、短期間でB級ライセンスを取るなんて、スゴイ、って言うのと、インチキ、イカサマやったんだろ、ってのと。
『グレウハウンド』に付きまとっている、寄生でランク上げてんだろ、ってのと。

言いたきゃ言え。
何ならPvPしようか?メンドくせえから。

そんな思考が、ぐるぐると頭の中を駆け巡っていく。


「アンタらなぁ!」

「・・・カン君、良いって。」


激おこなカン君の肩を叩き、反論を止めた。
カン君は怒りの形相のまま、私を見た。


「リンさん!?」

「・・・こんな連中に言うだけ無駄だよ?寄生だのイカサマだの何だのって、そんな話が直ぐに出てくるのは、自分もそうしてるか、そうしたい願望が強い人間の戯言。
ミッドランド支部のランクアップ試験はギルド支部の中でもガチ厳しくて有名な上、私達のランクアップの試験官は、ザイル副ギルマスや、ロイドギルマス自らが引き受けてくれていた訳だし。
私達の苦労や特訓の成果は、正当に評価されてる。育ててくれた『グレウハウンド』のパーティーリーダーである『英雄』ファーマスさんと、兄弟子であるイズマさんベネリさん、それに見守っていてくれたニースの森の集落の皆さんやレザリック先生に恥じない、真っ当なライセンスだから。
それを、イカサマだのインチキだの言うなら、ミッドランド支部の在り方そのモノを否定しているもんでしょ?」


そう。誰に何と言われようが、私達はお天道様に顔向けできないことはしていない。
『グレイハウンド』に所属させてもらい、ガッツリとシゴかれ。
ニースの森の守護役も、短い間だったけどつかせてもらい。・・・山火事騒ぎ起こしちゃってるけど。
納品だって、質の良い物入れてるし。
商業ギルドにだって貢献してるし。


言いたいことを一気に言った所、こちらを見ていたカン君は、目を見開いて吃驚したあと笑顔になる。


「それも、そっスね。試験官やってくれたギルマスや副ギルマスが不正したって疑ってるんですもんね。」

「そゆこと。」 


目の前の女性冒険者へ視線を戻すと、くぅ、と唇を噛んで、こちらを睨みつけている。

これだけの衆人環視の中、言いがかりで喧嘩売られたしなぁ。
穏便には済まされないよなぁ。
とりあえずは、正論だけ吐いておく事にしたけど。
まぁ、逆恨みはされるよね。

・・・いい加減、引いてくんないかなぁ。

そんな思いで、彼女達を見つめていたのだが。


「馬鹿にすんじゃないわよっ!」


ーーー あ、殴られる。


ビキニアーマーの女性冒険者が振りかぶった右手が、視界の端に見えた。


ーーー ブンッ


振り下ろされた右手は、私の鼻先を掠めて通り抜けていった。


「きゃぁっ!」


ビキニアーマーの彼女は、その腕の振りの勢いを逃がすことが出来ずに、そのままよろける。

・・・まぁ、見えてんだから避けるよね?


「何避けてんのよ!」

「・・・いや、殴られる筋合いねぇし、普通避けるべさ。」


思わず溜息をついてしまった。
その姿が、彼女達の怒りの火に油を注いだらしい。

・・・わぁ、般若の形相だねぇ。

何だかよく分かんないけど、この2人だけじゃなく、他の女性冒険者からも凄い視線を感じる。


「ふざけんじゃないわよぉっ!」

「巫山戯てなんかいないよ?」


落ち着いた声が聞こえてきた、と思ったら、ふわり、と暖かい風が、私とカン君を包む。

ん?、と思っていたら、背後から抱き締められる気配を感じた。


・・・話ややこしくなりそ。


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