転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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旅馬車活動開始

187.試験概要

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全員が席に着いた所で、ロイドさんが話し始める。
その合間を縫って、ザイルさんが紅茶を出してくれた。


「とりあえず、ベネリとイズマから話は聞いている。早急にランクアップする必要もな。でだ、A級ライセンス試験は、貢献、対人戦闘、魔獣討伐、というのは聞いたか?」

「はい。師匠とコウさんから伺ってます。」


私の隣で、力強くカン君が頷く。


「そうか。ま、ファーマスから聞いてるだろうが、貢献と対人戦闘はクリアでいい。」

「あの・・・」

「ん?何だ?」


ふと、疑問に思ったことを口にする。


「対人戦闘って・・・留めを刺さないとダメ、ですか?」

「ん?あー、いや、殺さなくても制圧出来てるなら問題はないぞ?手配されてる盗賊なんかは、捕縛の際に抵抗したら殺しても問題はないが、そうじゃない場合は捕縛が基本だ。冒険者同士のいざこざで、いちいち殺されてもかなわんし、殺した方も状況では犯罪者になるからなぁ。
あとは、戦争の際に、領や国の騎士団なんかから、手を貸せってな依頼もあるが・・・コレだって、嫌なら引き受ける必要はない。
てな訳で、お前らは、既に対人戦闘済ませてるから問題ないって事だ。」

「はぁ。」

「意思疎通を図れるモン同士の殺し合いは、普通は避けたいって思うモンだ。その感じ方で問題はない。
・・・ただ、自分の命がかかってんなら、話は変わる。冒険者なら、先ずは自分を守れ。命あってナンボだからな?逃げても、無様でも、何しても生きろ。生き残れよ?いいな?」


ロイドさんの声色が変わり、真剣みを帯びる。

『命あっての物種』
そんな言葉が頭をよぎった。

私達が気圧されながらも頷くのを確認すると、ロイドさんは話を続けた。


「でだ。魔獣討伐なんだが、ウチの支部の基本は、パーティーによるビグベルー討伐になる。」


C級のアグウルグ狼モドキと一緒で、パーティー人数分討伐数が増える。
ただ、ビグベルー熊モドキは、1人なら1体、2人なら2体。最大6人パーティーで行けるが、その際は6体の討伐が必要、と。


「今、ミッドランド周辺でのビグベルーの被害があまり無くてな。直ぐに試験ができない。ただ、お前達がビグベルーを倒せる実力があるのは分かっている。なので、現在の被害が深刻なイグバイパーで代用したい、ということだ。」


ビグベルー熊モドキも、イグバイパー大蛇モドキも、どちらもクラスA魔獣。
なので、代用しても問題がない、という事なのだろう。


「現在、ミッドランドから南西に位置する、ルイジアンナ、という村の近くで、イグバイパーが3体確認されている。森に入っていた狩人と、近辺で畑仕事をしていた村人が襲われた。至急討伐に向かうが、リン、カン、基本はお前達2人で狩ってくれ。試験官として俺が着いていくのと、コウ。」

「はい。」

「お前も来てくれ。試験官補佐と、不測の事態対応用の戦力な。『独戦士ロンリーウォーリア』への依頼だ。」

「分かりました。構いませんよ。」

「ファーマスはどうする?」

「イズマ達と、その他のA級クエストを片付けておく。この数日バタバタしていたからな。試験は任せる。」

「了解。そうしてくれると助かる。」


少し考えていたら、あっという間に話が進み。
私達の試験と討伐内容が決まっていった。







出発は明日の早朝と決まり、私とカン君は師匠から、宿を取ってくるよう頼まれた。

こーくんは、いつもミッドランドでは、レザ先生の治療院を定宿にしているらしく。今回も先生のトコに泊まるから必要ないと。

了解した私達は、先にギルマス部屋を出て、ギルドを出る事にする。


「『陽だまり亭』で問題ないよね?」

「そうっスね。明日の準備も要りますかね?」

「食べ物は色々あるから問題ないけど。野営とかするのかな?結界関係は購入した方が良いかなぁ?・・・あ、お邪魔しました。」


ガチャリ、と扉を開け、カウンター奥に出ると、職員さんたちがこちらを見た。
頭を下げながら、カウンターを出、カン君と出口に向かう。


「ちょっと!待ちなさいよ!」


背後から、けたたましい甲高い声が飛んできた。

振り返ると女性冒険者と思しき2人が、今にも噛みつきそうな形相でこちらを見ていた。

思わず、カン君を見やる。
カン君は眉を顰めて、首を傾げた。
うん。面倒臭い案件発生っぽい。


「・・・何か御用でしょうか?」


知り合いでもない彼女達。
・・・あ、さっきすっごい睨んできた人達、かも。
ボン、キュ、ボンでスタイルが良いねえ。私よりも背が高いよ。モデルみたい。
1人は戦士なんだろうかな?ビキニアーマーみたいな装備。
もう1人は魔法職だろうか。
ローブを羽織っているが、中の服はかなり胸を強調している。

まぁ、羨ましい。
あれ、見た感じFとかGだよね?

多分平均サイズの私は、『ケルベロス駄犬』の一件辺りから、仕事をするのにサラシを巻くようにしている。
その為、見た目結構まな板な感じ。
胸当て付ける際に、その方が痛くないんだ、色々と。

そんなアホなことを考えている最中にも、女性冒険者達は何事かを騒いでいる。


「何なのっ?アンタ!ぽっと出てきて、イズマさんに付きまとっていたかと思ったら、今度はコウさんに付きまとうワケ!?恥ずかしいと思わないの!?」


ンなこと言われても。
イズマさんとは、同じパーティーに居る訳でなぁ。
でも弁解した所で、この手合いは話聞かねぇからなぁ・・・


「別に付きまとってはいませんが?」

「じゃぁ、何で一緒に居るのよ!?」

「一緒に仕事してるだけですけど。」

「ふざけないでっ!ぽっと出の新人に何ができるのよっ!」


・・・ほんっと、コイツら話聞かねぇなぁ。

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