転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

文字の大きさ
上 下
186 / 393
旅馬車活動開始

183.連絡が飛んできた

しおりを挟む


数日の間、連携訓練を繰り返した。
試験対策も兼ね、こーくん抜きの私とカン君2人連携も取り入れる。

3人だと、こーくんがヘイト稼ぎをするけど、2人だと、私がヘイトを溜めなきゃならん訳で。

せっせと動きまくって、囮役になり、一箇所に集めていく。
気分は牧羊犬だろうか。

何とかサマになってきただろうかと思ったところで、主様から、森の秩序も戻ってきたからもういい、と言われてしまい、意図的な魔獣を使った訓練は、強制終了になった。


ランクアップ試験の連絡はまだ来ない。
なので、一旦集落で休む事にした。

集落の端にある、師匠の家の近くに、林檎に似たアールという実をつける大木があり、その木陰で私達と師匠は休んでいた。

麗らかな午後帯。
私は銃剣相棒の分解、手入れを。
こーくんも双剣の手入れをする。
カン君は、極小魔力で的当て訓練。魔力伝導の無駄が無く致命傷を与えたいと。・・・何かエゲツない方向に行ってるような気も。
師匠は、絶賛お昼寝タイム中。


「ところで、A級ランクアップ試験って何すんの?討伐だけじゃないよね?」


ふと思い立ち、こーくんに尋ねた。
剣の手入れを止めた彼は、ふむ、と思案顔になり、回答をくれた。


「うーん、先ずはギルド貢献度から、受験資格の判断がされる。依頼達成率を見ることになるね。
あとは、対人戦闘の履歴。主に護衛依頼の実施になる。絡んでくるのは盗賊討伐。つまりは、対人戦闘の経験の有無の確認だね。
その上での、魔獣討伐。僕の時は1人で受けたから、イグバイパー大蛇1体だった。」

「成る程ね。魔獣討伐はともかく、貢献と対人戦闘かぁ。」

「・・・そこは問題ねーだろ?」


いつの間に目覚めていたのか、師匠がムクリと起き上がった。


「ニースの森の守護役を引き受けられている時点で、2人とも貢献には問題はねぇ。実際納品しまくってるからな。護衛だって、やってねぇって言われんなら、集落の連中を連れてミッドランドまで出向きゃいい。
対人戦闘は、カンは街角戦闘してるし、リンだって『ケルベロス駄犬』掃討に、今回の騎士団襲撃の相手してんだ。文句はねェだろさ。」

「そんなもんですかね?」

「ロイドもザイルも、そこら辺加味する奴らだよ。文句が出ても一蹴できる。それに、お前らはそれだけの力はあるしな。・・・お、きたな?」


師匠が顔を上げて、自宅の方を見る。
すると、白い何かがこちらに向かってくるのが見えた。


「鳥?」

「あぁ。アレが、レザがベネリに渡していた、伝書用の魔道具な。」


そう言って師匠は立ち上がると、自宅へと歩いていき、その『鳥』を捕まえる。
そして、魔力を流しながら、何事かを呟いた。

すると、ふわ、と『鳥』は淡く光り、師匠の手の中で紙になる。

手紙がそのまま直通するんだ。不思議。


「へぇ・・・あれって、途中で奪われたり、落とされたりしないの?」

「基本、登録している先の場所に着かないと、鍵になる言葉に反応しない。だから中身は見れないし、無理に開けようとすると、中の文字は消えるモノなんだ。」

「便利なもんなんスねー。」


こーくんは、私の疑問にすぐ答えてくれる。
いつの間にかカン君もその様子を見ていたようだ。


「お前ら、一応試験内容が決まったぞ。明日から、ミッドランドに出向く。」

「はいー。討伐は何ですかー?」

「2人で、今ミッドランド近くに出現している、イグバイパー大蛇退治だ。詳細詰めるから、ギルドに来いだとよ。」


あら、タイムリー。
ビグベルー何体かと思ってたけど、時期的にイグバイパー大蛇が出やすいんだろうか?


「とりあえず明日の朝から移動だな。準備しとけ。」

「はぁい。」

「了解です。」


実際の所は、直ぐにでも出発出来るんだけど、依頼品の確認整理とか、集落のみんなへの挨拶なんかもあるので、明日なのは助かる。

とりあえず、私とカン君は、お世話になっている、イーベさん、ピオッティさんご夫婦に話をしに行くことにした。

しおりを挟む
感想 580

あなたにおすすめの小説

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

婚約破棄……そちらの方が新しい聖女……ですか。ところで殿下、その方は聖女検定をお持ちで?

Ryo-k
ファンタジー
「アイリス・フローリア! 貴様との婚約を破棄する!」 私の婚約者のレオナルド・シュワルツ王太子殿下から、突然婚約破棄されてしまいました。 さらには隣の男爵令嬢が新しい聖女……ですか。 ところでその男爵令嬢……聖女検定はお持ちで?

転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜

犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。 馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。 大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。 精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。 人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。

夫の隠し子を見付けたので、溺愛してみた。

辺野夏子
恋愛
セファイア王国王女アリエノールは八歳の時、王命を受けエメレット伯爵家に嫁いだ。それから十年、ずっと仮面夫婦のままだ。アリエノールは先天性の病のため、残りの寿命はあとわずか。日々を穏やかに過ごしているけれど、このままでは生きた証がないまま短い命を散らしてしまう。そんなある日、アリエノールの元に一人の子供が現れた。夫であるカシウスに生き写しな見た目の子供は「この家の子供になりにきた」と宣言する。これは夫の隠し子に間違いないと、アリエノールは継母としてその子を育てることにするのだが……堅物で不器用な夫と、余命わずかで卑屈になっていた妻がお互いの真実に気が付くまでの話。

幸子ばあさんの異世界ご飯

雨夜りょう
ファンタジー
「幸子さん、異世界に行ってはくれませんか」 伏見幸子、享年88歳。家族に見守られ天寿を全うしたはずだったのに、目の前の男は突然異世界に行けというではないか。 食文化を発展させてほしいと懇願され、幸子は異世界に行くことを決意する。

処理中です...