転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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新たな関係

174.外見って、、、

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森の再生が終わった後、気になる話も主様から聞かされ。ひと段落ついた私達は、集落に戻る事にした。

カン君曰く、集落のみんなは兎も角、まだ残務処理で残っていた騎士達まで大騒ぎしていると。

主様ともっとお話ししていたかったけど、『また来ればいい』と言ってくれたので、お言葉に甘えることにした。
今度ゆっくり女子会しよう。



「・・・そりゃそうだよねぇ。アレだけの焼け跡が一瞬にして元通りになりゃ、騒ぐわなぁ。」


ゆっくり山を降りながら、こーくんが呟く。
ふむ、と頭にアルを乗せたカン君が、首を捻る。

そんなアルは、カン君の髪の毛に埋もれながら、うつらうつらとしている。
どうやら、私と一緒に(というより、ヴェルにくっついて)来ていたのだが、氷壁を壊した辺りから、カン君に呼ばれてお仕事していた模様。

・・・お仕事内容は確認していない。しちゃダメな気がするので、気にしない。

首を捻っていたカン君が口を開く。


「・・・そういや、勝手に森を再生しちゃいましたけど、被害届とか、検証とか必要だったりしました?」

「そこら辺は、騎士団側が山火事の事実を魔道具で記録済みだ。森が戻った事で、今後の推定被害請求はできんが、燃やした事実は変わらない。それ自体の罪は変わらないから、問題ないだろう。」


あっさりとファーマスさんが答える。
・・・ なら、良かった。
でも、一抹の不安を感じる。
この世界は、身分制度が幅を利かせているから。


「元に戻ったんだから、無かった事に・・・なんて、なりません、よね?」


勝手に森を戻した事が何となく後ろめたくなって、後ろを歩いていた師匠を見やる。
師匠は、に、と笑みを浮かべ、私の頭をわしわしと撫でた。


「大丈夫だ。アイザックは、そこら辺ちゃんとしている。記録用魔道具は偽造する事は出来ないし、同じ記録の写しも俺が持っているからな。ニースの森の守護役自身が目撃し、その上御使様まで現れたんだ。・・・この状態で、馬鹿な権力持ちが絡んできても、覆す事は無理だ。」

「そうだねぇ。ファーマスさんを始めとした、A級ライセンス冒険者が揃う、クラスAパーティー『グレイハウンド』及び『独戦士』が証人なワケだしね。国が不可侵である僕等に楯突くなら、それなりにお相手するけどねぇ。」


師匠の言葉に、不敵な笑みを浮かべるこーくんが同意する。
・・・なんか素が出て黒い気もするけど、うん、気にしない。

とりあえずは、大丈夫そうなので、胸をなで下ろしていると、するり、と右手を掴まれた。

吃驚して見ると、こーくんが手を握っている。


「ん?」

「・・・手。」

「道悪いから、危ないしょ?」

「別に、大丈夫だよ。」

「イイから、イイから。」


兎に角、にこにこと、機嫌が良い。

・・・そーいや、こんな時は、私の意見は聞いてるようで聞かない人だったなぁ。

遠い目をして、溜息をついた。
こうなると、満足するまでしたいようにさせないと、落ち着かなかったなぁ。

に、しても。
・・・うん、その姿、慣れない。


しげしげと、こーくんの顔を見ていたら、ふと、こちらを向いた。


「なした?そんなに見て。穴あくって。」

「・・・ねぇ、騎士団のケネックさんって、こーくんのお兄さんだよね?」

「あー、うん。2番目の兄上だけど?何かした?」

「・・・似てないね、色々。」


とたんに、彼は、苦虫を10匹程噛み潰したような、凄い嫌な顔になる。


「・・・どーゆー意味?」

「え、どーせなら、キラキラ系細マッチョより、お兄さんみたいな熊系ゴリマッチョが良かったなーって。」

「・・・うん。知ってる。」


かくん、と項垂れるこーくん。


「・・・知ってるさ。君の好みは、無双の慶次やら忠勝、北条氏康やら孫市なんだからさぁ。三次元でも室伏とかシュワルゼネッガーって、そんなん、ゴリマッチョか、オッサン系マッチョ好きなのは知ってたさ。それに、兄上見てるから僕だって期待もしたさ!でも、どんなに鍛えたって、細マッチョにしかならない、この絶望感、わかる!??」

「・・・うん、わっかんねぇや。」

「相変わらず、辛辣だね・・・死活問題なのにぃ。」


くくっ、と忍び笑いが聞こえてくる。ちら、と見ると、後ろにいる師匠とカン君が、笑いを堪えている様子。


「そこまで?別にその容姿なら、女の子にモテんじゃん。」

「あのねぇ。好きでこの容姿になった訳じゃないし、それに、僕にだって誰でもイイ訳じゃないの。好みじゃないのに好かれてもね?君に好かれなきゃ、意味ないでしょ?しかも、君のモロ好みのオッサンが、後ろにいるべしさぁ。・・・色々焦ってんの。」

「ん?呼んだか?」

「お呼びでないです。めっさ腹立つから、森守りのオッサンは、大人しくしてて下さい。」

「言うねぇ。」


ニヤニヤしながら、こーくんに絡む師匠。


「成る程な。昔、俺みたいな体型になりたいって言ってたの、ソレだったか。」

「ですよー」

「そっかー。頑張ったら、俺はマッチョ目指せるかなぁ?」


あーまた、男同士のどーでもイイ会話が始まった。


別に、外見は只の好みであって。
観賞用として見てるなら、ソレがイイな、ってだけ。
イケメンが正義、但しイケメンに限る、って言う元のあっちの世界の風習が嫌なだけで。
私のイケメンの定義は違う、と反発した結果だ。

師匠は確かに、私の理想を詰め込んだようなキャラ設定でマジでビビる。
それが故、ある意味偶像アイドル状態なんだよね。
・・・だから、求められても正直困ると言うか。ぶっちゃけ、向こうから一線引いてくれたのは、かなり助かってる。

そんな訳でなー、外見は実の所どーでもイイんだけどなー。
どちらかといえば、結局絆されて選ぶ方だべし。

・・・じゃなかったら、フツメンで、マッチョでもなかった、こーくんと結婚してねって。

・・・うん。言わないけどさ。

だって。
日頃から、あんなけ私を茶化すんだから、気付け、馬鹿。


男達は、いつの間にやら仲良く筋肉談義に花を咲かせている。

阿保な話にシフトしたことで、少し安心して。呆れたフリして、引かれる手の感触を、こっそり楽しんでいた。




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