転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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ニースの森防衛戦

153.闇夜に灯火

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※ 胸糞回です。


**************



犯罪騎士ダグが、ラッシュを仕掛けてくる。
先程の水薬ポーションで、魔力が回復したのだろう。
先程よりも、攻撃速度が上がる。
でも、付いて行けないほどじゃ無い。

合間を縫って、統括者コルトが魔法攻撃を撃ってくる。
魔力の気配を感じた段階で即座に回避。若しくは氷属性弾を軽く当てて相殺する。


ーーー うん。まだ、大丈夫。


「大人しくしやがれっ!」

「ーーー ふんっ!!」


犯罪騎士ダグの拳が迫る。
半身を下げてかわすが、左頬を掠める。
伸びきった腕に、下から銃身を振り上げて跳ね返す。振り抜いた銃剣の刃が犯罪騎士ダグの上腕を斬りつけた。


「くっ!」

「せぃっ!ーーーっ!!」


逃げる犯罪騎士ダグに追い打ちを入れるため、∞を描くように素早く銃剣を振り回す。

しかし、数度振り回し相手を斬りつけたところで、統括者コルトの捕縛系の魔法の気配を感じ、即座に後退した。


「!?」


後退した所に、石飛礫が飛んでくる。
足元に、氷属性弾を放ち、氷壁を張ると共に、反動でさらに後退する。


グワシャッ!


張られた氷壁が、石飛礫と共に突っ込んできた犯罪騎士ダグに破壊される。


ーーー 土属性系統か。


この2人共に髪の毛の色は茶系統。
犯罪騎士ダグも身体強化メインの徒手格闘を使用してるけど、魔法を使う可能性もあるのか。
気をつけなきゃ。



ーーー でもなんで、急にどっかの国の話になったんだろ。


犯罪騎士ダグの攻撃をあしらい、反撃を入れながら、ふと最初に統括者コルトと対峙した時の事がよぎった。


ーーー 奴はあの時、自領の騎士団に力を貸さない私に憤っていたはずなのに。何でこんな事、してるんだろう。


数秒考えを巡らせるが、直ぐに思考を放棄した。


ーーー 捕まえりゃ、わかんでね?


「うん。」


自問自答し、戦いに頭を戻そうとした。


その時。


「【閃光フラッシュ】!」
「【爆砕ブラスティ】!」


「なっっっ!!」


目の前でストロボを焚かれたような眩しい閃光と、地面の爆破が同時に起こり、激しい衝撃に私はなす術なく吹っ飛ばされた。

10メートル程離れた土肌が剥き出しの崖に叩きつけられる。


「がっっ!」

「【硬化ロック】!」


ずり落ちる身体に、衝撃が走り。
気がついた時には、身体は土肌に縫い止められていた。


「くっ!」


チカチカする目をつぶり、頭を振る。
十字架に貼り付けられたように、腕全体が岩に包まれるように固定されている。
踏ん張ろうとしたら、足首も固定されていた。

衝撃によって、猟銃相棒も手放してしまい、数メートル先に転がっている。


「くうっ!!」


簡単には振りほどけない。
身体強化を最大まで上げて、一気に引き剥がさないと・・・


魔力を練り上げようとした、その刹那。
腹部に衝撃が走った。



「がはっ!」


反動で俯いた視界に、鳩尾に拳が当たっているのが見えた。
ガシッ、と乱暴に前髪を掴まれ、顔を上げられる。


「やぁっと、捕まえたぜ。」


ニヤニヤと、下卑た笑みを浮かべた犯罪騎士ダグが、そこに居た。


「舐めた真似してくれたなぁ。おらぁっ!」

「ぐっ!」


再度腹部に拳が入る。

ーーー 痛い。

身体強化がちゃんとかかってないから、かなり痛い。
反射的に涙が込み上げる。
唇を噛み締めて、叫びを堪える。


「良いなぁ、その顔。ゾクゾクするぜ。さぁ、いつまで我慢できっか、なっ!と」

「っ!」


右頰を裏拳で打ち抜かれる。
口の中に血の味が滲んだ。



「ダグ、それ以上は止めなさい。」


統括者コルトが近寄ってくる。
犯罪騎士ダグは、楽しみを止められ、不機嫌な声を上げる。


「ぁん?何だって・・・、あぁ。それか。」


眉を顰めていた犯罪騎士ダグは、統括者コルトの手に有る物を見つけ、直ぐに表情を緩める。

統括者コルトの手には、銀色の輪が光っていた。


「とりあえず、移動の間危険がないようにさせて頂きましょう。」

「今の状態でも、俺は楽しめんだけどなぁ。まぁ、それ付けてもらった方が何かとやすいかぁ。」


ケラケラと犯罪騎士ダグの笑い声が響く。


「『 隷属の首輪 』かぁ。さぁて、それ付けて、どんな『ご奉仕』してもらおうか。」


ーーー 奴等の狙いは、私に『隷属の首輪』を付けて国外逃亡すること、か。


私の身体は状態異常は無効なのだけど、隷属は契約だ。
それすらも無効に出来るかは分からない。


ーーー 逃げなきゃ。


身体強化をかけようとするも、即座に犯罪騎士ダグの拳が放たれる。


「ぅがっ・・・」

「いーかげん、諦めろって。移動したら、目一杯、可愛がって犯してヤるからなぁ。」


髪を掴まれ、頭を土壁に押さえつけられた。
統括者コルトの手が首に伸びる。


ーーー いやっ!


嫌だ、嫌だ、嫌だ!!


私は、みんなと、カン君と、離れたくないっ!



「ーーー 離せぇぇっっ!!」


『チチッ!』



思わず泣き叫んだ私の声に応えるように、何処からか鳥の声が聞こえた、気がした。


その刹那。


バリバリバリッッ


凄まじい音と共に、私の目の前に雷が落ちた。



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