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ニースの森防衛戦
147.不可解
しおりを挟む「ザイセイ?カンサ?」
イズマさんも、グリオさんも、キョトンとする。
「んーと、騎士団だったら、活動費とか消耗品費とか、各部隊に割り振られてない?ざっくり言うと、財政って、そういう仕事場全体のお金の流れを管理する所で、監査は、各部署の活動やお金が正しく運営されてるかを確認するところ。
まぁ、この領の運営形態とか総予算とか私は分かってないし。仮に金貨240枚分と仮定したお金が、見過ごされてしまうレベルでの資金の動きかもしれないから、何とも言えないんだけどさ。
でもね?さっきの話だと、研究自体国からok出てないんでしょう?だとしたら、現状予算もついてない話じゃない?
なのに、あんなけの腕輪やら何やら準備して、しかも実際に使ってる。
その金どっから出たの?って、スゴイ不思議なんだよね。
下地にする腕輪だって、騎士団で1から作れる訳じゃないよね?
用意するのだって、鍛冶屋さんに作ってもらうにしても、防具屋で買うにしてもお金は発生するし。
現物支給にしたってさ、あの魔道具、かなりの量じゃない?廃棄品の利活用とも思えないし。廃棄品だったとしても、50個以上も大量に集めてりゃ、何やってんだって、噂ぐらいにはなるべしさ?」
イズマさんも、グリオさんも、ポカンとしている。
・・・あ、コレ、聞く相手間違えたやつだ。
「・・・お金については、僕は分かんないです・・・」
「・・・お前、文官みたいな事言うのな。俺にはさっぱり分からん。ギルマスか、ファーマスさんに聞いてくれ。」
・・・匙投げられたわぃ。
チョットは考えてくれや。
まぁ、私なんかの頭で考えついたことだから、無論騎士団内でも検討されてるだろうし。
そこで尻尾が掴めないなら、何かあるんだろう。
まぁ、今は、素人考えは置いておくことにしよう。
「・・・うん、そうする。ごめん、変な事聞いた。」
「いえ、答えられなくて、すみません。」
しょぼんとする、グリオさん。
・・・うん、でもまぁ。
事件のあるなしに関わらず、君も組織に属してるんだから、自分の部署の金の流れぐらいは知っておいていいと思う。
その方が、よっぽど部隊長さんの助けになると思うよ。
「ま、この話は後で師匠にしてみますよ。あ、氷室が見えてきた。グリオさん、あそこです。」
「はい・・・えぇっ!?」
よく、驚く人だなぁ。
「こんな、氷の家みたいなの、見たことないです。」
「山火事で焼け死なないようにしてるだけから。入り口も山頂側だし、煙に巻かれない。ただ中が寒めかもしれないけど。」
「中にいるのは22人か。精神異常の状態だから、眠り香で眠らせている。だから、この3人は中に入れるが、アンタは、外で待っていた方が良いかもしれん。
とりあえずそんな所か。詳しくはまた後で聞く。」
「そだね。残るはあと5人の保護と、2人の統率者の捕縛?」
コクリとイズマさんが頷く。
「あ、あのっ。」
グリオさんが、恐る恐る声をかけてきた。
「何だ?」
「統率者・・・コルト=ラギルとダグ=ネルキオの事です。」
へぇ、そんな名前なんだ。
その名前を聞いたイズマさんが溜息を吐いた。
「あー。やはり奴等か。」
「イズマさん、知り合い?」
私は首を傾げる。
「北門で対峙しただろう?あの2人だ。」
「あー。そんな名前でしたっけ?あのキモいヤツ。」
そういや、集落前で野営してたとき、名乗ってたっけ。
そもそも人の名前覚えんの苦手で、名前と顔を一致させるのも苦手なのに。
あの後、腕輪付けられたからなー
だから、私の中での位置付けは、
『名前を覚えておくのも嫌なキモいヤツ』
でしか、ないです。
「・・・リン、今全部口から出たぞ。」
「・・・辛辣ですね。」
「あ、心の声、ダダ漏れでした?で、彼らが何を?」
グリオさんが、コホと咳払いをして話し始める。
「コルトは、異様にリンさん・・・貴女を神格化するように話していました。今思えばですけど、第4部隊に連れてくるだけにしては、異常というか、、、何とも表現できないんですけど。」
「ふーん。別な意図があるかも、って話?で。もう1人は?」
「ダグは・・・女性関係で良い話は聞かなくって・・・その・・・無理矢理だったりとかって・・・」
もじ、と、言い淀むグリオさん。
ハッキリ言えば?
「・・・ん?性犯罪やるような馬鹿なんだべさ?ちょん切っちゃっていいって話?」
「おま、言い方っ」
イズマさんが、若干前屈みになった。
グリオさんも、これでもかってくらいに目を見開いている。
「えー?今更オブラートに包んだ所で。とりあえず、ゲスい奴は、いっぺん逝ってこい、って事で。
グリオさん、ご心配どもね。お仲間さん達の見張りよろしく。
じゃ、イズマさん、行こう。」
「あ、あぁ。」
さ、本題はコッチ。
まだ、氷の壁で分離はしたもの、鎮火は済んでないし。
とりあえず、ホントに悪い奴等は2人って事でFAだね。
さ。
ボス退治と参りましょうか。
*****************
※ 頭脳労働は向いてないと思っている主人公ですが、それ以上に向いていなかった2人でしたw
※ おかげで、すっかり悲愴な様子が無くなって、調子が戻った主人公です。
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