上 下
133 / 393
開き直っても大変だ(カンSide)

130.さっさと次に行きましょう

しおりを挟む


俺の処遇が俺抜きで決まり、一息ついたところで、ロイドさんが口を開いた。


「・・・で、団長さんよ。とりあえず、そこに転がるヤツは、ウチの懲罰房で預かっておくか?これから、騎士団も森に向かったり、内部確認でバタバタになるだろう?
衛士の牢でも良いだろうが、混乱に乗じて内通者と接触されても面倒だろうし。そいつの腕輪のキーは、カンと俺になっているからな。」


団長さんは、敵わないといった様子で、ガシガシと頭を掻いてから頭を下げた。


「ロイド殿。何から何まで申し訳ない。今の現状コイツの捕縛に関して信頼出来るのは冒険者ギルドに他ならない。よろしくお願いしたい。期限は、私がこちらに戻るまで。」

「分かった。アンタの命令だって引き取りにきても、全部突っぱねて良いな?ザイル、懲罰房用意と、書面用意してくれ。」

「分かりました。」

「あぁ。身柄は私が引き取りに来るので、それまでお願いする。費用は騎士団に請求してくれ。」

「了解した。・・・おい、団員さんよ、コイツ連れてザイルに付いていってくれ。」


ロイドさんは、無事な騎士団員に声をかけて、シグルドを懲罰房へ連行するよう指示を出す。
こうして、今回の騒ぎの元凶はとりあえず隔離される事に。

操られていた団員達10名については、ギルド所有の魔力制御の腕輪を付けた上で医務室で様子見。
精神干渉の問題や後遺症がなければ腕輪は外すが、問題あれば腕輪継続でギルド懲罰房へ入れると申し合わせられたよう。

団長さんはそこまで話を詰めると、今度はコウさんに尋ねた。


「コウラル、すまないがケネックからの言付けはあるか?」

「はい。言付けですが。
ーーー第3部隊60名が、現在ミッドランドに向け移動中。指揮は兄ケネックが取るとのこと。
本部は第1部隊統制。第5部隊と合わせ、騎士団内調査。残る第2、第4部隊の団員は、待機処置とし、状況調査実施。
第3部隊の残団員は本部周辺捜索。
第6から第8は通常任務及び、5部隊の穴埋めとのことと。
連絡は《伝書鳥》で。ミッドランド衛士詰所を起点、本部第1部隊を結ぶとのことでした。」

「分かった。コウラル、助かった。
・・・ファーマス殿。」


コウさんから報告を受けた団長さんは、師匠に向き直った。


「何だ?」

「我々は騎士団故、編成に時間がかかります。しかも、会談に連れてきた第2部隊の一部も汚染されていたという体たらく。何人か出すともいかない為、このスミスだけ連れて、先へ行ってはくれませんか?」

「だ、団長?!」


急な指名を受けて、部隊長さんは慌てる。
ふむ、と師匠が腕組みする。


「理由は?」

「今回シグルドが手にかけていたのは、第4部隊が殆ど。奴らが正気に戻った際には、コイツの指揮に乗らなければならない筈。」

「・・・踏み絵か。」

「そんな感じで使ってやって下さい。」

「了解した。」

「・・・よろしくお願い、します。」


ーーー えぇー、それで了解しちゃうんスか?
それだけで通じ合ってる2人にビックリする。
戸惑い顔の部隊長さんも、何かを悟ったようで頭を下げる。

話を聞いていたロイドさんが、声を上げる。


「よし。冒険者ギルドは、今回の一件について収束するまで騎士団に協力する。ミッドランド周辺で挙動不審な騎士を発見した場合には、速やかに詰所へ連絡させる。状況によっては捕縛に協力する。
ファーマス、そっちはどう動く。」

「『グレイハウンド』全員、早急にニースの森に向かわせてもらう。同行は、スミス殿。あと、コウ、レザリック、いいか?」

「はい。無論そのつもりです。」

「腕輪外し、カン君だけだと手が回らないだろうから付いて行く。俺は、後方支援メインで良いな?」

「・・・まぁ、お前が戦わなくて良いようにするつもりだ。」


 戦うのは最終手段で、と師匠は目を逸らし呟く。


こうして、俺たちは二ースの森集落の防衛及び精神干渉を受ける騎士達の保護、操り手の捕縛に向かう事になった。


**************

※ 次から、リン視点に戻ります。
※ 申し訳ありません。数日お休みいただきますm(_ _)m

しおりを挟む
感想 580

あなたにおすすめの小説

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!

お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。 ……。 …………。 「レオくぅーん!いま会いに行きます!」

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処理中です...