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開き直っても大変だ(カンSide)
129.話し合い
しおりを挟む突き飛ばす力が入った方向を見る。
第4部隊長さんが、泣きそうな顔で俺の事を押して居た。
そして。
シグルドの剣が、部隊長に向かって振り下ろされるのが見えた。
ーーー 要らんことしやがって。
って、思ったけど。
むしろ騎士なら、剣で受け止めないの?とか思ったけど。
必死な形相見てると、何だか笑えて、憎めなかった。
「ーーー【保護】」
尻餅をつくその刹那。
部隊長さんを保護する。
大丈夫と思うけど、一応。
「スミスっ!」
「!!」
団長さんの声に、片腕で剣をガードしようとする部隊長さん。
振り下ろされた剣は、部隊長さんに届く前に、キン・・・と、いう金属音に弾かれる。
「ウガァァ!」
・・・と同時に。
腕輪からバチィッッ!と音が鳴り、シグルドが剣を落として地面に倒れ込んだ。
「あがぁぁぁっ!!」
奴は腕輪を押さえて、痛みに悶える。
うん、ちゃんと機能したね。お仕置き機能が。
どっこいせ、と俺は立ち上がると、部隊長さんに手を差し出す。
「大丈夫ですか?」
「あ、え、あ。あ、はい、僕は大丈夫です、が。」
挙動不審気味に部隊長さんは、床に転がるシグルドと、俺の顔を交互に見る。
まぁ、仕方ないよね。
仕方ないんだけどさ。
俺は笑顔を貼りつかせたまま、部隊長さんに差し出した手を引くタイミングに困っていた。
「魔導師君すまない、大変助かった。スミス、おらっ、立て。」
「は、はいっ。」
部隊長の後ろから、団長さんが右腕を掴み引き上げた。
行き場のなくなった右手で、頬を掻く。
「しかし・・・こりゃ、一体・・・」
「その腕輪をつけた状態で、誰かを攻撃しようとした場合、雷撃のショックが入るようになってる。なので、コイツを庇ってくれなくても大丈夫だったんだよ。」
シグルドを見ながら呟く団長さんに、俺の脇からレザリック先生が、顔を覗かせて答えた。
その言葉に、団長さんの目が剣呑に光り、俺を見据える。
「それは、また、酷い物を作るもんだ。」
「・・・確かに作ったのはコイツだが、発案は俺だ。もっとエグい精神干渉してやったって良かったんだがな。コイツに止められたんだよ。して、妥協案がソレだ。物理的に止める方法にした。」
ガタイの良い団長さんに凄まれる感じなのに、小柄な先生は全く怯まない。
途端に2人の間に流れる空気が、ピリピリする。
・・・とりあえず俺は、先生に庇われたって事なんかな?
とにかく、居た堪れないんスけど。
すると、その空気に割って入るように、師匠が俺の肩を掴んで身体を引いた。
「アイザック、コイツを危険認定しようとか、騎士団に入れようとか考えるなよ。それやったら、そこに転がってる奴と一緒だからな。
・・・そもそもコイツは、この国の人間じゃねぇ。この領にも、国にも、縛る権限はねぇからな。」
「冒険者登録してくれて、塩漬け依頼も積極的に消化してくれる上、森に入る事を許されている、優秀な新人冒険者なんでな。そちらが動くなら、コッチも黙っちゃいねぇよ。・・・今回みたいにな。」
ロイドさんまで参戦してきた。
ギルマスの顔だ。
一触即発の空気が流れる。
・・・何これ、おっかない。
すると、団長さんは急に表情を緩め、大きく息をついた。
「申し訳ない。職業柄疑うしか能が無いので、不快な思いをさせました。
御三方がそれだけ信頼しているんですから、問題のない方なのでしょう。
・・・それに、大丈夫だと分かっているのに、馬鹿みたいに飛び出したスミスに防御魔法までかけてくれた。余程人が良い方でしょうから。」
「いだだだだっ」
そう言いながら、部隊長さんにアイアンクローをかます団長さん。
「腕っぷしもねぇ、防護も出来ねーのに、馬鹿みたいに前に出ようとすんなと、あれほど言ってんのになぁ、お前。人の邪魔すんじゃねぇよ。」
「すいませんっ、すいませんっ!」
・・・何だろう。
パシリを説教するヤンキーみたいだ。
その様子を見て、師匠も一息つく。
「こちらとしては、コイツらへの行動制限をしないで貰えたらそれでいい。あと、冒険者としてまともに働いてるうちは、余計な詮索もしてくれるな。 」
「えぇ、分かりました。当騎士団の膿の切除を引き受けて頂いた御仁だ。恩を違えることのないように致します。」
そう言って、団長は深々と頭を下げた。
・・・うん、俺何も発言しないまま、話がまとまったね。
まぁ、いいや。
森に帰りたいんで、さっさと次の話しましょうか。
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