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開き直っても大変だ(カンSide)
125.企み
しおりを挟む「どういう事だ!?」
団長さんが立ち上がり、シグルドの胸ぐらを掴んで捻り上げた。
「な、なんのことか・・・」
それでもなお、シグルドはしらを切る。
威圧が怒気に変わり、団長さんはシグルドを持ち上げようとする。
その後ろで、ガタン、と椅子が倒れる音がした。
「シッ、シグルド君っ、まさか君はあの武器所有者達に【 思考接触 】を使ったと言うのか!?」
部隊長さんが、困惑した表情で、2人に向かう。
「あの魔法は、戦争により酷く精神を消耗した人間にのみ使用を許可した筈だっ!何故それを!?」
驚愕、怒り、悲しみ、色々混ざった表情で部隊長さんが叫んだ。
先程までのオドオドしていた様子がなりを潜める。
・・・やはり彼は、白だったみたいだ。
ただ、いい人なんだろうけど、責任者向きではなかったんだろうなぁ。
「ふふ・・・何を仰る。あれは、弱小と誹られる我が部隊の増強を図るのにうってつけの術式ではありませんか。」
「ふっ・・・巫山戯るな!あれは、死線をくぐり抜け帰還しても、その後うなされ眠れず、自害まで謀る団員を助ける為の術式だ!!断じて、人を操る目的で開発していない!」
「綺麗事は幾らでも言えるのですよ。部隊長殿。」
「なっ!?」
顔を赤くして憤る部隊長さん。
それを馬鹿にするかの様に、シグルドは蔑んだ目を部隊長さんと団長さんに向けた。
「思考統制する事で、身体能力を上げ、軍力の底上げになる。コレの何が不都合だと言うのです?丁度・・・このように。
ーーー【解除】」
「なにっ!?」
その瞬間、ベネリさんと一緒にいた、第2部隊の隊員の身体が、尋常じゃない速度で、団長さんへ突撃した。
辛うじて腕でガードするも、その衝撃でシグルドを離してしまう。
「シグルド君!?」
「シグルドてめぇ・・・」
第2部隊の隊員は、完全に目がいっちゃってる状態で、シグルドを守るように立ちはだかる。
さっきまで、そんな素振りすら無かったのに。
揃いの細い腕輪、コウさんは、ケネックさんがそんなことを言っていた、と。
顔、首回り、手首、服飾、見える所に怪しいアクセサリーはない。
何故だ?
『アル、頼む・・・欲しい情報は、彼が何故操られているか、だ。
ーーー【解析】』
『ツィ!』
任せて、と返事をしたアルは、第2部隊の隊員を映す。
===============
セヴァ=ラグナ
ファルコ領騎士団第2部隊隊員
状態:
精神異常(思考統制中・操作者シグルド=オーファ)
攻撃力(物理・魔法)増強
痛覚遮断
左足に嵌められたアンクレットにより、思考統制を受けている。
===============
足かよ!
騎士服の下なら、分かんねぇよ。
・・・さて、どうする。
今後の展開に悩んだその時、会議室の外が、がやがやとしだした。
ダンダン!と、ノックと言い難い力強い音がしたと同時に、「失礼します!」と勢いよく扉が開いた。
扉から転がり込んできたのは、コウさん。血相を変えるという表現がぴったりだった。
「コウラル?!」
「コウ、どうした?」
ただならぬ様子を察知し、団長さんと師匠が声をかける。
コウさんは、一度大きく深呼吸すると、団長さんを見やる。
そして、シグルドに目を移すと、緊迫した声を上げた。
「騎士団本部に待機しているはずの、第4部隊40名が所在不明、合わせて第2部隊10名も所在不明!
捕縛中であったコルト=ラギル、ダグ=ネルキオの両名共に脱走!
シグルド=オーファ、貴様一体何をした!」
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