転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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開き直っても大変だ(カンSide)

122.顔合わせ

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話し合い当日。

俺達は、昼過ぎからギルマス部屋にて、待ち構えていた。


俺は、何処かそわそわして落ち着かない。

師匠はソファに深く腰掛け、腕組みして目を瞑り、じっと動かない。

ベネリさんは、何やら本を読んでいる。


『チィッ』

「いてっ」


不意に、頭上のアルが、俺の脳天を突いてきた。
しっかりしたら?と突っ込まれた。

アルはソファに腰掛けている俺の膝に下りると、『チッ』と鳴く。


「撫でろってか。」


人差し指で、くすぐるように撫で回す。


「アル、今日は頼むな。」

『ツィッ!』


任せろ、と言わんばかりにドヤ顔される。
・・・鳥なのに。


アルに【隠密ステルス】を使用した上で、同席させ、逐一録画する。
記録用魔道具は、ギルドにもあるらしいので、一応そちらが本命。アルはバックアップ。

解析アナライズ】を、本日の面談者に使用。
騎士団長、第4部隊の部隊長が状態異常を起こしていないかを、先ず確認する。

大丈夫とは思いたいが、もしダメなら話し合いは中断するしかなくなる。
その時は俺の手に負えないし、師匠達に任せる事になるだろう。


とりあえず、俺がやれる事をしっかりやる。


コンコン・・・


決意を新たにしていると、ドアがノックされた。
入ってきたのはザイルさん。


「騎士団の皆さんが到着しました。ギルマスと共に、会議室へ入って頂いております。ーーー 宜しいですか?」


その言葉に頷くと、俺達は立ち上がる。

ーーーさあ、真相解明だ。



***


ザイルさんが会議室のドアをノックする。

「『グレイハウンド』の皆様をお連れしました。」

『入れ』


中から、いつもとは違う気を張ったようなロイドさんの声が聞こえた。


「失礼します。」


ザイルさんが扉を引き開け、俺達に中に入るよう誘導する。
師匠を先頭に俺、ベネリさんと続く。

ガタ、と席に着いていた3人が立ち上がった。

真ん中で一際目を引くのは、黒い制服を着込んだ燃えるような赤髪リーゼントの偉丈夫。師匠と大差無い背格好に威圧ぶり。団長のアイザックさんなんだろう。

ただ。

・・・師匠よりも、ガラが悪そう。
何だろ、一昔前のヤンキーですか?
目つきがおっかねぇ。

・・・あ、でも、リンさんこの系統好きそうだな。うん。

その隣にいる、線の細い茶髪の前髪で目が隠れているメガネの男性。この人が第4部隊の部隊長のスミスさんかな?凄くオロオロしている雰囲気。
・・・何でこの人が、部隊長なんだろう?

そして、こないだぶりのシグルドさん。
コウさんと大差無い体格で。肩まである薄青い髪を一本に縛っている。
・・・表情が読めない。

アルには既に【隠密ステルス】を使用し、肩に乗ってもらっている。


『・・・【解析アナライズ】』


そっと頭の中で唱える。
あまり魔力を動かしてしまうと、何か魔法を使っている、というのがバレるため、アルを通し、状態異常だけの確認に留めた。


一瞬の確認だけで終わる。

団長、部隊長、共に状態異常なし。
精神干渉は無い様子。

うん、話し合いは可能な状態。

そして、シグルドも状態異常はなし、と。
変な事を言えば、そういう思考体系の奴って事で判断して良いだろう。


ちら、と、師匠を見ると、師匠もこちらを見ていた。
問題ない、と首を縦に降る。
予め決めていた合図。

師匠も軽く頷くと、机を挟んで彼等と対峙する。


誕生日席にロイドさん。
騎士団側は、部隊長、団長、シグルド。
向かって『グレイハウンド』側は、師匠、俺。
ドアの前には、ザイルさんとベネリさん、そして第2部隊の隊員が1名立っている。隊員さんは、護衛と立会いを兼ねるとのこと。
会議室の外には、第2部隊の隊員が何名かいる。

そんな物々しい雰囲気の中で、会談が始まった。


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