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開き直っても大変だ(カンSide)
121.その頃、森では・其の三(リン視点)
しおりを挟む※ 新キャラ登場w
**************
イズマさんに食事を持たせ見送った次の日。
私は森の中でとある生き物と、知り合いになっていた。
「・・・ねぇ、主様?聞いてもいい?」
『なんじゃ?』
「なんで怪我なんかしてたの?」
『うむ。ちぃとばかり、阿呆をしてなぁ。』
曰く、最近のニースの森の魔獣の強度が上がっているとか。
大人しくさせるために戦ったのだが、少し相手を舐めていたのもあり、不覚をとったと。
思った以上の深手を負い、どうしようかと思っていた時に、私がやってきた、らしい。
『しかし、お主が来てくれて助かったわ。ただ・・・その武器を向けられた時は、どうしようかと思ったがの。』
「ごめんなさい。助けようと思っても、私これじゃないと魔法発動できないから。・・・やっぱり、銃口向けられるのは、気分悪いですよね。」
ザックリと尾の方を斬られていた傷は、手持ちのポーションではどうにもならず。
魔力をがっつり込めた相棒に、回復弾を込めて放った。
傷はすっかり塞げたものの。
銃口を味方に向けるのはやっぱり・・・怖い。
『うむ。お主のことは、森の中で時々見かけておったからなぁ。戦う姿も見とったし。ちいと、吃驚はしたなぁ。』
ほ、ほ、と笑う主様。
『しかし、お主こそ、何故ワシを倒さなんだ?』
「え?だって、白蛇様ってウチの国じゃ神様だもの。そんな大っきい姿だし。ニースの森って、入る人を選ぶでしょ?だったら、森を守る神様だろーなーって思っただけ。」
『まぁ。大方当たりじゃ。神、ではないが、お主の言葉で言えば、守護眷属とでも言ったところかの。』
目の前で呑気に話すのは、長さが20メートル以上、胴の高さは、1メートルはある、白い大蛇。
目の色が金色で、身体は白くテラテラと輝いている。
頭の中に直接響くのは、優しい女性の声。
『まぁ、何にせよ助かったのは確かじゃ。礼を言う。』
「そんなの、気にしないで下さい。こちらこそ、いつも森の恵みを頂いてるわけですし。これからもよろしくお願いします。」
ペコ、と頭を下げる。
『ふふ、お主は面白いな。何か礼をしたいが、欲しいモノはあるかの?』
「欲しいモノ?・・・急に言われても、思いつかないや。何だろ。
・・・うーん、また会って、お話したいです。じゃ、ダメです?」
ちょっとばかり逡巡して。
出てきた答えは『話し相手』。
『そんなんで、良いのか?』
「はい。所詮私は《迷い人》ですし。この世界のこと分かっていないのが大きいから。注意することとか、この世界の理の事とか、教えて貰えると嬉しいです。」
『ほうか。変わった『色』をしているかと思ったら、お主《迷い人》じゃったか。それはまた、難儀な目にあったの。』
金色の目が細まり、労わるような視線を向けられる。
『構わん。話したくなったら、いつでも呼ぶと良い。ワシは森からは出られんが、お主が森の中にいれば何処でも行くことができるからの。』
「ありがとうございます。そういえば、主様は集落の誰かと会ってお話することはありますか?」
『ん?無いな。なるべく合わないようにしておるしなぁ。あぁ、一度、人間側の森の守護をしておる者・・・赤茶色の髪をした、人間にしては体格の良い者には会った事があるかの?」
赤茶髪でガタイが良い・・・師匠かな?
「何かこんな風にお話ししました?」
『いや?特に話すこともなかったからの。『お邪魔させてもらう』と、向こうから頭を下げたぐらいじゃ。ワシは特に話さんで姿を消したからなぁ。』
・・・それって。あんま、人に会っちゃダメなやつ?
私にこんなに気さくに話していて良いモノなのですか?
『あまり、気にするでない。別に加護を授けられる訳でなし。助けてもらった友人として話をするぐらいじゃ。・・・お主が渡ってきたのも、何かあるようじゃしな。』
そう言って、チロ、と赤い舌をだした。
金色の目がふ、と見開かれる。
『・・・ふむ。お主には、また出会いがあるようだの。新た、なのか、再度、なのか。不思議な縁のようじゃな。』
「縁?」
予言?
・・・何のことでしょう?
『・・・その前に、ちいとばかり面倒ごとがやってきそうじゃがの。』
「面倒ごと、ですか?」
『あぁ。集落に戻ると良い。お主の仲間が戻ってくるようだ。・・・何事かあれば、森に入ると良い。手助けはしてやれるからの。』
「ありがとうございます。じゃ、戻りますね。」
『あぁ。またの。』
元気になったニースの森の主様は、音もなく森の奥に消えていった。
「・・・さて、戻りますか。」
不思議体験も、すんなり受け入れられている自分に苦笑いしながら、 主様の言葉から気になって、急いで集落へ戻っていった。
**************
※ 眷属ってことは、神の使いなんでしょうか?謎生物の主様(♀)です。
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