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開き直っても大変だ(カンSide)
119.作りゃいいってもんでもない
しおりを挟む「戻りました。」
疲労困憊、といった表情で、コウさんはダイニングに現れた。
レザリック先生が優しく出迎える。
「お帰り、コウ。その様子だと何も食べてないな?」
「はい、お腹すきました・・・でも、とりあえず、報告を。
兄達と父には事の次第を伝えています。次兄からは、第4部隊の何人かが最近、揃いの細い腕輪をしていたのを見かけた、と。なので、第4の動向に気を配ると言い、官舎へ向かいました。
父と長兄は、疑いの域をでないし、団長を飛び越して申し訳ないが、一応領主様の耳にも入れておくと。
あと、あちらで動きが有れば、ココに我が家の私兵が連絡にきます。
なので、明日僕は、治療院で待機しています。」
「分かった。助かる。一応こちらの動きも伝えておく。」
そう言い、師匠は先程までの打ち合わせ内容を端的に説明した。
コウさんは腕組みしながら頷く。
「そうですか。シグルドが堪忍してくれれば良いですが、多分、大捕物な気もしますね・・・」
「あぁ。一応大事をとって、イズマは集落の護衛に行かせる。状況では、俺らもニースの森へ向かうだろう。」
「・・・騎士団も動くと思いますが、その時は僕も手伝います。で、明日はどのように話を進めるのですか?」
首を傾げたコウさんに、師匠は俺の顔を見る。
「カン、どう考えていた?」
「あ・・・はい。先ずは腕輪をかけた目的を聞こうかと。その上で、精神干渉系の術式について確認します。認めればよし、認めなければ、外した腕輪を見せようかと。」
何となく考えていたことを言葉にする。
声に出すことで、考えがまとまっていくような、そんな感じがした。
「あと一応、ギルドから貸してもらった腕輪は2個とも改造しました。付けるとすぐ、体内魔力の9割を一気に放出。そのまま魔力は1割残しを維持。腕輪をつけている状態で、誰かを攻撃しようとした場合には、雷撃によるショックが入ります。
キー登録は2名。俺は登録済です。後1名は、師匠にしておきたいですが、どうですか?」
腕輪を出しながら告げ、みんなの顔を見渡すと、レザリック先生とロイドさん以外の全員が凄い顔してこっちを見ていた。
・・・こっち見んな。
思わず言いたくなる。
「・・・何スか?」
「お前・・・マジで、エゲツないもん作るのな。」
「作れっつったの、師匠でしょーが!」
「いや、そーだけどよ。」
「『黒持ち』が本気出すと、おっかないっすね・・・」
「イズマさんまで!?レザ先生が言い出したんすよ??」
「いや、冗談で言ってみたものの、まさか本当に作りあげるとは思わなくてなぁ。」
ハハ、と半笑いでレザリック先生が答える。
・・・何だこれ、敵しかいねぇ。
コウさんが腕輪を手に取り、まじまじと眺める。
「凄いね。僕の鑑定では、魔力1割残ししかわからない。雷撃があるなんて記述はないよ。」
「あぁ、敵意で雷撃については、鑑定ではなく、【解析】というもっと細かく見る魔法じゃないと見れないようにしています。」
「さらっと隠蔽かい・・・」
ベネリさんが頭を抱え、コウさんが苦笑いする。
えー?
シグルドの腕輪だって、鑑定じゃ見切れなかったんスけど?
だから加工したのに。
「・・・カン。情報隠蔽って、1日やそこらで加工出来るモンじゃないからね?結構な魔力量いるから、数日かかるもんだからね?」
ベネリさんが、呆れたように言い捨てる。
んな事言われても。出来たもの。
「全属性持ち、恐ろしいですね・・・
でも、これなら何かあっても、対処が可能でしょう。シグルドを確保する事は出来ます。」
ザイルさんがもう一つの腕輪を手に取りながら呟く。
「そうだな、付けてさえしまえば、確実に攻撃も自爆もできないだろうな。」
ロイドさんが頷きながら同意する。
・・・ アイデアをそのまま形にしたら、この言われようって酷くね?
まぁ、でも使えるようだから、いいか。
弄りも落ちついたから、本題に戻していいよな?
「・・・で、どうしますか?解除キーの魔力登録。」
「あ、あぁ。そうだな。俺と、ロイドで1個ずつ持つか。いざ、取り押さえる時には、カンとベネリに【束縛】で押さえてもらった上で、というのが、現実的だろう。」
「では、師匠とロイドさん1つずつでお願いします。・・・では、ココに。」
俺は腕輪を2人に渡して、魔力登録をしてもらう。
ポゥ、と紋章が淡く光り消えていく。
それぞれの腕輪に、師匠とロイドさんが登録されたのを確認して、2人に渡す。
「お願いします。」
「あぁ。」
「分かった。」
2人は腕輪を受け取ると、それぞれの空間収納へしまう。
パン、と手を打つ音が聞こえて顔を上げると、レザリック先生が口を開いた。
「さ、打ち合わせは、ここまでかな?とりあえずメシを食おう。」
**************
※ あれ。もぐもぐタイムの予定が・・・σ(^_^;)
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