転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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開き直っても大変だ(カンSide)

117.改造と開発と

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師匠とベネリさんは情報収集に出かけ。
俺はレザリック先生の治療院で、先生の仕事の手伝いをしながら、合間を縫って制御の腕輪のハッキング解除と登録者上書き方法を教えた。
優秀すぎる鑑定さんのおかげで、手順もさして困らずに伝えられた。


「・・・ほぉ、成る程。腕輪をつけると、状態異常のカウントとなり、治療師の出番、という訳だ。」

「だからといって、治療師持ちがみな、という事では無さそうです。」

「まぁ、そうだねぇ。スキルの熟練度は関係するだろうし・・・後は魔法理解や明確なイメージによるんだろうな。」


レザリック先生は、何度か俺と交代しながら腕輪のハッキング解除を練習し、あっさり技術取得できた。

そのまま俺は、腕輪の改造に入る。
何の魔法を組み込めば良いか、ウンウン唸っていると、先生がコーヒーを淹れてくれながら様子をうかがってくれた。


「どうした?」

「腕輪の改造を師匠に言われまして。精神介入以外に、何を組み込めば良いかと考えていました。」

「例の騎士用のかい?」

「そうっスね。」


ふむ、と、先生も腕組みしながら思案する。


「重力系とか、雷とか、考えたンスけど、重力はただ筋トレになっちゃいそうだし。雷は出力が難しいっスかね。弱いとマッサージ器具になりそうだし、強いと死に至ってもなぁ、と。」

「・・・何だろう、健康器具の魔道具開発を聞いているようだな。」

「どーせなら、そっちを作りゃいいのに。シグルドって人も。」

「ん?」


思わず口をついて出てしまった言葉に、先生が首を傾げる。


「魔道具に既存の術式以外を組み込める能力があるなら、平和に役立つモノ作りゃいいのに、って、思うんです。」


「・・・うん。いつの時代も、便利な道具の開発と、軍事開発は背中合わせだからねぇ。彼にとっては、役に立つ開発だったのかもねぇ。」


俺の言葉に頷きながらも、先生は寂しそうに呟く。


「でも、さっき言ってた重力系の腕輪や、雷系の刺激がある魔道具は、身体機能回復に良いかもしれないなぁ。・・・この件が終わったら、作ってくれないか?」

「いいっスよ。」


先生との今の会話だけでも、人の役に立つモノが作れそうなのになぁ。


「うーん・・・精神操作ではなく、となると物理的に、だろう。どうせならいっそのこと、一気に魔力放出させて、魔力枯渇に持っていけば?1割残しみたいな。」

「エゲツなっ」

「やるなら、それくらいやっちゃいな。格の違いを見せつけるなら、絶妙なバランスで魔法を組めばいい。一気に魔力枯渇、その上で敵意を持ち攻撃しようとすると雷撃、とかね。」


魔力抜いて弱っているところに、静電気のデカイやつ。
・・・うん、嫌がらせとしては面白いかも。
イメージとしては、テレビのドッキリ系である低周波治療器の最大強度でビックリさせる感じ。

残存魔力はどうしよう。
魔獣暴走スタンピート前の、5時間回復薬作成して、最後にリンさんに【回復ヒール】かけてぶっ倒れた後、一度トイレに起きたんだよなー
あの時の倦怠感は酷かった。
あれで約2割回復だった気がするんだよな。


「先生、残存魔力が1割って、生命維持としては大丈夫なんスか?」

「大丈夫じゃないかなぁ。酷い二日酔いで頭が痛くて気持ち悪いぐらいだよ。」

「・・・思った以上に拷問だった。」


酒の弱い俺からしたら、死んじゃうヤツです、それ。最悪なヤツ。


「まぁ、途中から魔力放出量を修正するとかもアリじゃない?反省したら3割くらい残存とか。」

「成る程。」


反省できれば、身体は少し楽になる。
でも、静電気はそのまま。


「・・・でも、コレだって恐怖体験による精神操作っスよね。」

「犯罪者の管理だからね。致し方ないんじゃないかな?暴れることや、反旗の防止。あとは、自分自身の怪我の防止だよ。」

「自分自身の?」

「ある種の自殺・・・自爆かな?魔力を暴走させて、自分ごと周りをボン、みたいなことが、昔あったらしいからねぇ。・・・特に戦争が激しかったころは、ね。」


自爆テロとか、神風特攻とか、そんなのがコッチの世界でもあるのかと思うとゾッとする。


「その防止の為の魔力制御が本来の目的なんだよ、その腕輪は。」


あっちの世界で自爆なんていうのは、それなりの機材がないと無理で、何処か他人事で。
でもこっちの世界は、誰しもが魔力という爆弾を所有しているのかと思うと、恐ろしくなる。


「・・・だから、精神操作もご法度なんだよ。法律で禁止されているんだ。誰かの命令で、人を使い捨ての武器にすることができてしまうからね。」


言うなれば、人間爆弾。
火薬の概念が無く、銃火器がないこの世界だけど。
・・・魔力により、同じ考えに至るのかな


「まぁ、とりあえずは腕輪作ろうか。その後、役立つ魔道具を考えな。」

「・・・はい。そしたら、一気に魔力1割残し、敵意に軽めの雷撃、といったモノにしてみます。」


俺は、ギルドから借りた魔力制御の腕輪を手に取ると、鑑定さんのガイドの元、腕輪の魔法式を書きかえた。


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