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それぞれの成長(カンside)
105.守る、とは
しおりを挟む『盾役必要?』
コウさんから、何を言われたか分からなくて。
俺は呆けてしまった。
「むしろ、何で前衛にこだわっているの?」
「・・・どういう、こと、ですか?」
盾役の存在自体を全否定された気がして、胸がざわざわする。
「・・・勘違いしないでくれるかな?何も通常のパーティー戦術において、盾役が要らないって言ってるわけじゃない。
君とその彼女が組む事において、君が盾役である必要性を感じられない、って言ってるんだ。」
ーーー 俺は、リンさんが、これ以上傷ついて欲しくなくて。
だから、盾になりたくて。
師匠を、見る目が。
・・・あんなに、信頼していて。
コウさんは、混乱する俺を見据え、言葉を続けた。
「だって、彼女は、自ら敵陣に突っ込むタイプなんでしょ?そんな人間の前に立つ必要なんてある?むしろ邪魔じゃない?
・・・それよりも、ガッツリ後方支援じゃね?
防御力をこれでもかって位に上げて、傷の一つもつかないようにして。一撃で倒せるくらい攻撃力上げまくって、前線で気持ちよく戦ってもらった方が、明らかに建設的じゃないの?」
心底不思議がる様子で、コウさんは俺に話す。
「『黒持ち』である君の魔力量は無尽蔵みたいだし。魔力制御の腕輪を外した件とか聞いてると、付与術や回復の方が得意そうだし。
・・・大体、君前衛だけど、バトルスタイルは『積極的討伐』じゃなくて、『自分が死なない』に重きを置かれてるよ?理由は分からないけど、指導者が、それを重視したんじゃないの?」
コウさんに言われ、師匠の言葉をはたと思い出す。
魔獣暴走の後、盾役を辞めろ、と、言われた時のこと。
『お前の魔力量と放出攻撃可能な点を考えたなら、後衛向きだ。自由度が高い分、好きに動いても問題ない。』
『二度と前で倒れるな』
前に居るよりも、後方支援しろと言われたのは。
俺が失敗したから、とか、そんなんじゃなくて。
ーーー全部全部『リンさんのため』。
・・・すげぇ格好悪い。
彼女の“前で”守るってのは、自分の独りよがりで。
師匠はそれを見抜いていたから。
ーーー ホント、敵わないよ。
悔しい。
自分で気付けなかったことに。
視野の狭さに。
思い込みに。
「コウさん・・・」
「ん?」
「・・・俺、一度、師匠と話してきても、良いですか?」
「いいよ?明日は休みにしようと思っていたし。ファーマスさんも、森から戻ってくるんじゃなかったかな?」
俺の願いは、すんなり受け入れられて。
明日、師匠と面談する事が決まった。
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