上 下
108 / 393
それぞれの成長(カンside)

105.守る、とは

しおりを挟む



盾役タンカー必要?』


コウさんから、何を言われたか分からなくて。
俺は呆けてしまった。


「むしろ、何で前衛にこだわっているの?」

「・・・どういう、こと、ですか?」


盾役タンカーの存在自体を全否定された気がして、胸がざわざわする。


「・・・勘違いしないでくれるかな?何も通常のパーティー戦術において、盾役タンクが要らないって言ってるわけじゃない。
君とその彼女が組む事において、君が盾役タンクである必要性を感じられない、って言ってるんだ。」


ーーー 俺は、リンさんが、これ以上傷ついて欲しくなくて。
だから、盾になりたくて。

師匠を、見る目が。
・・・あんなに、信頼していて。



コウさんは、混乱する俺を見据え、言葉を続けた。


「だって、彼女は、自ら敵陣に突っ込むタイプなんでしょ?そんな人間の前に立つ必要なんてある?むしろ邪魔じゃない?
・・・それよりも、ガッツリ後方支援じゃね?
防御力をこれでもかって位に上げて、傷の一つもつかないようにして。一撃で倒せるくらい攻撃力上げまくって、前線で気持ちよく戦ってもらった方が、明らかに建設的じゃないの?」


心底不思議がる様子で、コウさんは俺に話す。


「『黒持ち』である君の魔力量は無尽蔵みたいだし。魔力制御の腕輪を外した件とか聞いてると、付与術エンチャントや回復の方が得意そうだし。
・・・大体、君前衛だけど、バトルスタイルは『積極的討伐ガンガンいこうぜ』じゃなくて、『自分が死なないいのちだいじに』に重きを置かれてるよ?理由は分からないけど、指導者ファーマスさんが、それを重視したんじゃないの?」


コウさんに言われ、師匠の言葉をはたと思い出す。
魔獣暴走モンスターピートの後、盾役タンクを辞めろ、と、言われた時のこと。


『お前の魔力量と放出攻撃可能な点を考えたなら、後衛向きだ。自由度が高い分、好きに動いても問題ない。』

『二度と前で倒れるな』


前に居るよりも、後方支援しろと言われたのは。
俺が失敗したから、とか、そんなんじゃなくて。


ーーー全部全部『リンさんのため』。



・・・すげぇ格好悪い。


彼女の“前で”守るってのは、自分の独りよがりで。
師匠はそれを見抜いていたから。


 ーーー ホント、敵わないよ。


悔しい。
自分で気付けなかったことに。
視野の狭さに。
思い込みに。


「コウさん・・・」

「ん?」

「・・・俺、一度、師匠と話してきても、良いですか?」

「いいよ?明日は休みにしようと思っていたし。ファーマスさんも、森から戻ってくるんじゃなかったかな?」


俺の願いは、すんなり受け入れられて。

明日、師匠と面談する事が決まった。
しおりを挟む
感想 580

あなたにおすすめの小説

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

いや、あんたらアホでしょ

青太郎
恋愛
約束は3年。 3年経ったら離縁する手筈だったのに… 彼らはそれを忘れてしまったのだろうか。 全7話程の短編です。

[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?

シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。 クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。 貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ? 魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。 ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。 私の生活を邪魔をするなら潰すわよ? 1月5日 誤字脱字修正 54話 ★━戦闘シーンや猟奇的発言あり 流血シーンあり。 魔法・魔物あり。 ざぁま薄め。 恋愛要素あり。

私のお父様とパパ様

ファンタジー
非常に過保護で愛情深い二人の父親から愛される娘メアリー。 婚約者の皇太子と毎月あるお茶会で顔を合わせるも、彼の隣には幼馴染の女性がいて。 大好きなお父様とパパ様がいれば、皇太子との婚約は白紙になっても何も問題はない。 ※箱入り娘な主人公と娘溺愛過保護な父親コンビのとある日のお話。 追記(2021/10/7) お茶会の後を追加します。 更に追記(2022/3/9) 連載として再開します。

【12/29にて公開終了】愛するつもりなぞないんでしょうから

真朱
恋愛
この国の姫は公爵令息と婚約していたが、隣国との和睦のため、一転して隣国の王子の許へ嫁ぐことになった。余計ないざこざを防ぐべく、姫の元婚約者の公爵令息は王命でさくっと婚姻させられることになり、その相手として白羽の矢が立ったのは辺境伯家の二女・ディアナだった。「可憐な姫の後が、脳筋な辺境伯んとこの娘って、公爵令息かわいそうに…。これはあれでしょ?『お前を愛するつもりはない!』ってやつでしょ?」  期待も遠慮も捨ててる新妻ディアナと、好青年の仮面をひっ剥がされていく旦那様ラキルスの、『明日はどっちだ』な夫婦のお話。    ※なんちゃって異世界です。なんでもあり、ご都合主義をご容赦ください。  ※新婚夫婦のお話ですが色っぽさゼロです。Rは物騒な方です。  ※ざまあのお話ではありません。軽い読み物とご理解いただけると幸いです。 ※コミカライズにより12/29にて公開を終了させていただきます。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました

市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。 私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?! しかも婚約者達との関係も最悪で…… まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!

失礼な人のことはさすがに許せません

四季
恋愛
「パッとしないなぁ、ははは」 それが、初めて会った時に婚約者が発した言葉。 ただ、婚約者アルタイルの失礼な発言はそれだけでは終わらず、まだまだ続いていって……。

処理中です...