転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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それぞれの成長(カンside)

100.やり過ぎ注意

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ギルドでのひと騒動後、さっさと依頼クエストの受注を済ませていたベネリさんと合流。


「いやー相変わらずモテモテだねぇ、コウ。」

「あんなの必要ありませんよ。仕事しろよ、と。」


依頼クエスト場所に向かう道すがら、くすくすと笑ってからかうベネリさんに、本当に迷惑そうに答えるコウさん。

やはり、ベネリさんとは気心知れているのだろう。コウさんの態度が、ギルドに居た時よりフランクに見える。

冗談を言いながら、ベネリさんが今日の依頼クエスト内容を伝える。


「とりあえず今日は、ミッドランドの街から東側の森に出ている、ビグベルーの分布調査及び討伐。合わせて、ビガディールも調査対象。街道に近い所での目撃もあるみたいだ。領都に向かう道沿いだから、見つけたら即退治で。」

「「了解です。」」


さて、索敵。

リンさんとまで行かないが、半径500m範囲がMAXの俺は、周囲の気配を探る。


『チィ、ツィッ』

「痛っ」


アルがいきなり俺の頭を突っついた後、真上に飛び立った。
その途端、脳裏に浮かぶ索敵画面の情報が変わった。


「うわっ」


まるで、ドローンで見ているような上空からのリアル森林地帯の映像。
こんなテレビ番組あったな。空から見てみよう的な。

思わず、上を見上げる。
5階建ビル位の高さだろうか。小さい点になって見える小鳥アル


『感覚をリンクすることで、広範囲の遠視が可能。カラー望遠です。索敵でも見やすいですよ?』


鑑定さんの文言を思い出す。

・・・こういうことか。

感覚をリンクって、頭突っつかれただけだが。


『遠くに居ながら、鑑定もかけられます。なんて便利。』


そんな説明もあったっけと思ったら、脳裏の画面上、300m程先に索敵の赤丸が浮かび『アグウルグ /クラスC』との文字。
そこに着目すると今度は、ポップアップするように、その場にいるアグウルグの姿が中継される。


「うっわーーー。」


思わず、頭を抱えてしゃがみ込む。
ぐーぐるな地図ですか?
軍事衛星画像ですか?

イイのか、これ。
やり過ぎだろ、鑑定さん。


「どうした?カン。」


ベネリさんが、突然しゃがんだ俺を不審がる。


『ツィッツィーッ!』


その時、アルの悲鳴の様な鳴き声が聞こえ、急に画像が乱れた。
ハッとして上を見上げると、アルがカラスの様な魔獣に追われていた。


『ツィーッ!』


いやーっ、と全力で逃げるアル。


「アル!コッチに来い!!」

『チィーーーッ!!』

「あれま。【射撃ショット】」


アルは、勢い良く俺の懐に飛び込んできた。
追ってきた魔獣に盾を構えるが、アッサリとコウさんが魔法で撃ち抜いた。


「あ、ありがとうございます。」

「いやいや。・・・ってか、そんな小鳥ピアルがフラフラしてたら、魔獣に襲われて当然でしょ?何してんの?」


呆れた風でコウさんに苦言を貰う。
その横で、ベネリさんが、細い目でこちら見ていた。


「カン、その子と繋がっていたようだけど?」

「あ・・・、はい。」


アルは俺の胸元から飛び立ち、また頭の上に乗った。


「繋がる?」


コウさんが、首を傾げる。
その様子を見て、本当の事を言うか一瞬悩む。
知り合ってすぐの人、警戒はすべきなのだろうが。

師匠達『グレイハウンド』やロイドさん達ギルドの人から絶大な信頼を寄せられている人だ。

悩む必要も無いか。


『チィ?』


そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、おはなししないの?、とアルが突いてくる。
・・・いや、お前が良いんなら良いけどさ。
とりあえず、辺りを見回す。


『ツィ、チ』


だぁれもいないの、とアルのお墨付き。
はぁ、と一息つくと、俺は2人に向き直った。


「説明しますと、まずアルコイツですが、魔道具です。俺が持っていた、記録用魔道具のような道具が鳥型となりました。感覚を共有する事で、索敵が詳細になるというか・・・」

「詳細?」

「・・・ぶっちゃけ、『何が』居るのかが分かります。因みに、ココから直線距離300メーター程先の森に、アグウルグが5頭居ます。ボス系はおらず、全てクラスC個体です。個体の特徴まで見えました。」

「おぃおぃ、それってもしかして、索敵の点ではなく、絵として見えてるってことか?」


「そういうことです。」


ベネリさんが驚愕する。
・・・俺だってビックリだよ。

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