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それぞれの成長(カンside)
95.出会い
しおりを挟むファルコ領騎士団第3部隊が中心となり、街道は片付けられたようで、落ち着きを取り戻していた。
日中でもあり特にトラブルなく街道を通り抜け、昼過ぎには街に到着。
その足で、冒険者ギルドへやってきた。
「すまんな、まだ連絡は来ていない。」
師匠が進むまま勝手知ったるギルマス部屋に入り、応接セットのソファに腰掛け、進捗を確認する。
ギルマスのロイドさんが、向かいに座り、挨拶もそこそこに首を振りながら答えた。
第3部隊のケネック副隊長が、ロイドさんに話を通していったことで事情は全て知っていたようだ。
あれからまだ一週間たっていない。
騎士団の内部もバタバタなのだろう。
仕方ないか。
「第4部隊内部の、個人的な問題なのか。それとも、部隊全体の問題だったのか。洗い出ししてんだろうな。まぁアイツの事だ。知ってしまったなら、徹底的にやるだろう。」
俺の考えを見透かすように、師匠が話す。
ロイドさんが溜息をつく。
「さっさと来てもらって、嬢ちゃんの枷を取っ払ってやりたいんだかな。」
「あ、それはもう解決してるから、問題ねぇ。」
「は?」
眉間に皺を寄せるロイドさん。
俺らに関わるようになってから、この顔がデフォルトかもしれない。
「まさか、腕輪取ったとか、言わねぇよな。」
「そのまさか、だ。」
「はいぃぃぃっ!?」
驚くロイドさんを尻目に、俺はリンさんが破壊した腕輪を取り出し、彼の目の前に置いた。
ロイドさんはそれを手に取ると、目を丸くする。
「おいおい、もしかして、 魔力を過剰供給して壊したとか言わねーよな?」
「ご名答。よく分かったな。」
「文献上で、その方法があり得るとは聞いたことがあるが・・・やる奴がいたとは聞いたことねぇよ。」
ロイドさんは、大きく息を吐き、頭を抱えた。
「正しくは、俺が腕輪を解除したのち、利用者を書き換えたものを、リンさんが壊したんっスけど。」
「あぁ?!」
「今の所、方法は秘匿で。騎士団の方達と面談する時にお話しします。なので、あちらには、連絡しないで頂けると助かります。」
「あー、もう何でも良いわ。《迷い人》に常識求めたらダメなんだろ。もう、B級になったんだ。好きにやれよ。」
あ、匙投げた。
そんな、コントのようなやり取りをしていた所。
ーーー コンコン
不意に扉がノックされた。
扉を振り返ると、副ギルマスのザイルさんが顔を覗かせた。
「盛り上がってますね、ギルマス。彼がいらっしゃいましたが。」
「おぉ!来たか。丁度いい。入れてくれ。」
「わかりました。・・・どうぞ。」
ザイルさんに促されて入って来たのは、腰に双剣を携えた、ザイルさんよりも少し高い背の男性だった。
ナチュラルショートの緑がかった白銀髪に、翡翠色の瞳が印象的な、細マッチョなイケメン。
・・・ホントこの世界、顔面偏差値高ぇ。
「ギルマス、しばらくでした。・・・ファーマスさんも、いらしてたんですか?お久しぶりです。」
ふわり、と柔らかな笑みを浮かべた男性は、軽く頭を下げる。
「おぅ、久しぶりだな、コウ。」
師匠がかけた声に、驚く。
・・・この人が、A級ライセンスの頂点の。
思わず、まじまじと見つめてしまう。。
ふ、とこちらに顔を向けた、コウと目があってしまった。彼は俺の顔を見て、一瞬驚いた顔をする。
「彼は?」
「ウチのパーティー構成員な。カンという。」
師匠が軽く紹介をしてくれたが、自分からも名乗った方が良いかと思い、俺はソファから立ち上がった。
「『グレイハウンド』に所属しています、カンと申します。先日B級ライセンスになりました。よろしくお願いします。」
俺の態度にロイドさんとザイルさんが固まる。
何か、おかしかっただろうか?
その様子を見ながらコウさんは、くすくす笑いながら挨拶を返してくれた。
「ご丁寧にありがとう。冒険者は大概ガサツだから、君みたいなのが珍しくてギルマス達はビックリしただけだと思うよ?
・・・僕は、コウラル=チェスター。モースバーグ国冒険者ギルドA級ライセンス持ち冒険者です。ギルド内では『コウ』と呼ばれることがほとんどかな。基本ソロで、パーティーは組んでいません。所属はギルド本部になるけど、色々渡り歩いて仕事してます。ヨロシク。」
そう言って、スマートに右手を差し出してくれる。
握り返した手は、細いけど剣だこがあるしっかりとした感触だった。
A級の頂点に至るなんて、この人はどれだけの修練を積んできたのだろう。
じ、と握られた手を眺めてしまう。
「離していいかな?」
「あ、っすんません。」
ちょっと戸惑い顔のコウさんから声をかけられ、慌てて手を離す。
居た堪れない気持ちになっていると、師匠から声がかかる。
「ちょうど良かった。コウ、お前に頼みがあんだ。ちょっと座れや。」
**************
※ コウの瞳、髪の色変更。
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