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森へ帰ろう
85.価値観の相違
しおりを挟む※ 主人公、ガラ悪め。言葉が汚いのでご注意。
※ 「女性なのに、その言葉遣いは・・・」と言う方には、激しくゴメンナサイ。
**************
騎士はきょとんとしている。
「弁償、とは?」
「衛兵さんが街を守るために使用する、備品な訳でしょう?その馬は。アンタが勝手に持ち出した事で、衛兵さんたちは1頭馬を使えなくなった。
今、街に何かあった場合に、通常通りに馬が使えない。ということは、伝令だったり、避難誘導だったりに支障が生じることもあるんじゃないの?」
私は馬以外の魔獣をしまいながら、問いかけた。
「馬など、直ぐに補充されるっ。」
「どっから?ミッドランドの街のお金で??騎士団側が使わなくていいもの勝手に使ったのに??
有事の際はそれで良いかもしれないけど。今回私を追っかけてきたのは、明らかにアンタ達第4部隊の勝手な行動だよね?そんな私的な理由で使ったのに?
そんなんでも、自分達で馬を新調しなきゃならんなんて、街も衛兵さん達もとんだとばっちりだな。」
「私的ではない!」
「私的以外のナニがあるってのさ。
第3部隊の副隊長さんは、一応非礼を詫びてくれてたワケだし。冒険者ギルド側からは、私達の処遇について口出しすんな、って言ってたんだから。この件は、騎士団の総意じゃねーべや。
それなのに、私を追っかけ回して、武器を奪おうなんて、職権濫用、強奪以外の何モンでもないよね?」
笑顔で言い切ってやる。
あ、何か憤慨しだした?
「貴女の武器が特殊すぎて、危険と判断したからだ!」
「誰が?」
「当部隊シグルド副隊長だ。」
「その副隊長さんは、どこまで権限があんのさ?」
「権限・・・?」
「決定権と言えばいい?
百歩譲って、私の武器が危険だったとして。
それを持ち主の了解なく回収するってのは、騎士団の仕事として明文化されてんの??
その文書の名前は?国としての法律なの?それとも領内の条項?実施要綱?要領?
それのドコに、『騎士団各部隊副隊長以上は、危険だと判断した武器を、持ち主の許可なく回収して良い。』と書かれてんのさ?」
矢継ぎ早に繰り出す私の言葉を、理解できていないのだろう。
すっかり彼は固まっている。
「それを証明できないなら、私はアンタ達に武器を渡す必要はねーよな?危険であっても、この武器を使って何か領内で犯罪を犯したワケでないから、捕まる理由もねーし。」
騎士は何かを言おうと鯉のように口をパクパクさせているが、言葉にならない様子。
屁理屈繰り出してる自覚はある。
うん。ほっといてくれ。
言いたい事は、この際全部言っとこう。
「何?今度は、善意で貸し出せ、とでも言う?
アンタ達が欲してる私の武器は、私専用の魔道具。私はコレでしか魔法を発動出来ない。私は冒険者で、武器を貸したらその間活動できないんだけど?その間の保証は?」
特殊武器持ち、個人事業主舐めんな。
「・・・保証なら、第4部隊でなら。」
「どーんな保証さ?私は約1か月で、B級ライセンスになったんだけど?
貸出期間は何日間?その間、私が遂行できるB級塩漬けクエスト分のお金を保証してくれんの?
それに、私が仕事出来ない期間、ニースの森の、私直接の指名クエストが遂行できなくなんだけど。その間の納品は誰がやってくれんの?私の信用問題はどうしてくれんの?
そもそもニースの森の限定クエストは、現状『グレイハウンド』メンバーしか請け負えないんだけど?
領内騎士団の末端部隊ごときに、保証できんの??
大体にして、今ソレをアンタが決めれる権限もってんの?」
あ、また、黙っちゃった。
黙んなよー。
ちゃんと話し合おうぜー?
「・・・何故。」
「ん?」
「何故、その武器の提供をしていただけないのです。」
はい?話聞いてた?
私の要求無視で、持論展開?
「未知の武器は、今後の領の、騎士団の戦力増強となり得るかもしれないのです。それを何故っ!」
「・・・私、この国の人間じゃねーし。成り行きで、ニースの森の皆さんや、ミッドランドのギルドにお世話んなっただけだし。」
騎士団?
知らんよそんなモン。
戦力増強?
自力で頑張れ。
「では、貴女が騎士団に属せば!」
「何で?よ。」
何だよその超理論。一気に思考が飛んだぞ??
「先程B級ライセンスになったと話していた貴女のその強さなら、騎士団でも上位の実力だ。それに、これだけの魔獣をを入れておける空間収納持ちなら、魔力量だって・・・冒険者などよりも、騎士団に属した方が立派に・・・」
「行くかっ!ヴォケ!」
話聞かねーやつだなぁ!
何その騎士団至上主義。
思わず巻き舌になったわ!
「はんかくさいコト言ってんじゃねーよ!なんで私が騎士団に入らんきゃならんのよ!」
「寧ろそれ程の強さを、何故我が領、しいては我が国に還元しないのです!」
「国や領に何かしてもらった覚えなど、これっぽっちもござんせんが?!」
「でも、ここで暮らしているではないか!」
「冒険者ギルドでクエスト納品する際に税も納めてっから、この領に対する義務は果たしてっけど?!」
・・・ダメだこれ。
完全に話聞かねー奴だ。
はぁ、と大きくため息をつく。
私の言った事を考え、質問に誠実に答え、非礼は詫び、今後邪魔しないと言ってくれりゃ、ザイルさんに話した程度の情報は話すのにな。
話し合いにならないなら、完全拒絶の言葉を羅列していくしかない。
「あのさぁ。私は、私の目的の為に冒険者になってんだよ。騎士団が何を条件に提示しようが、騎士団の仕事で括られてたら、私の目的は達成できない。足枷にしかならんの分かってて、属するワケないしょや。
それに私の強さは、流れの私がここで生きてく為に、師匠や兄弟子達が仕込んでくれたモノだ。彼らの為に使っても、アンタ達みたいな『自領の為、国の為』って大義名分を掲げながら自分達の事しか考えないような騎士団の為に使うことはない。」
私の言葉を聞いた騎士の顔色が変わり、ゆらりと立ち上がった。
「・・・貴女まで、コウラルと同じ事を言うっ!?力がある者が騎士団に属し、領を国を守る!何故そんな当たり前の事を拒む!!」
「それは、アンタにとっての『当たり前』でしょうが。
私は、徴兵制度が廃止された国の出身だ。職業選択の自由があり、自分がやれる仕事を探す事が出来るのが、当たり前だったんだ。
アンタの常識は、私にとっての非常識。価値観の相違を理解すれや!」
「その言い様まで、コウラルそっくりだ・・・クソッ!」
その、コウラルって誰よ?
知らん人に似てるとか言われても、知らんがな。
・・・何かトラウマでも抉ったべか?
あぁ、もう。
くっそメンドクセェ!
**************
※ 所々リンの言葉遣いがヘンですが、怒りで、方言&男言葉です。
(北の人にも否定されたらどうしよう・・・)
意味不明であれば、ツッコミお願いしますm(_ _)m
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