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森へ帰ろう
81.撤退戦からの救出戦
しおりを挟む誰かが襲われている、と思われる街道に向けて、とりあえずひた走る。
しっかし自分、今日一日働きすぎでねぇ?
『駄犬』掃討は今朝の話だよ?
やれやれ『陽だまり亭』で打ち上げ出来ると思ってたら、いちゃもんつけられて、相棒取られそうになるわ、そんな相棒は猫になるわ。
街ん中、騎士に追っかけ回されるわ。
森に帰るにしても、魔獣退治しながらだわ。
最後にゃ、自分追っかけて来ただろう相手を助けようとしてるって。
・・・畜生。
ほっとけない自分の性格が恨めしい。
森に戻ったら、明日も明後日も、惰眠を貪ってやるんだいっ。
イライラしながら現場に向かうと、血の匂いが漂い始めた。
レグルパードの唸り声が聞こえてくる。
剣戟の音もするけど、爪が当たる音だから、防戦一方なんだろう。
街道で争う影が見えてきた。
そこに居たのは、レグルパードでも、黒。黒豹だ。
通常の個体よりも、闇に溶け込めるため、夜間の相手は厄介。
通常個体は、ランクC+相当とされるけど、黒豹になるとランクB相当と、難易度が跳ね上がる。
対する人間側は・・・
北門に居た、真面目顔の方だ。
満身創痍、といった感じ。
外で戦うような騎士の重装備でないようだし、ポーションを飲む間もなかったんだろう。
馬も、やられてしまっているようだ。これでは逃げる足もない。
・・・あの様子じゃぁ、殺られて終わりだよねぇ。
「・・・仕方ない、行くかぁ。」
がっつり、身体強化をかけると、レグルパードに向かって思いっきり駆け出した。
***
レグルパードは、完全に仕留めにかかっている。
騎士はかろうじて剣を構えているが、肩で息をして、今にも膝をつきそうだ。
「ふっせろぉっっ!!!」
騎士はビクッとして、こちらを振り返った。
だぁから、しゃがめってのに!
動線上で隙をつくのに、頭を飛びこえようとしたのに、動かないのは邪魔だっての!!
レグルパードが飛びかかろうとする。
呆けている騎士を左手で街道脇にすっ飛ばすと、レグルパードまで一気に距離を詰め、そのまま銃剣で切り上げた。
不意を突かれたレグルパードが怯んで動きが止まる。
そこを間髪入れずに、銃剣の斬りつけと足蹴りのコンボラッシュ。
最後に思いっきり顔面を蹴り付けて怯ませると、バックステップで30mほど距離を取った。
『グァルルルッッ!』
恨めしそうにこちらを見て唸るレグルパード。
お、結構フラついてる。
隙をついたから防御がとれんかったみたいだね。
一気に氷魔法で決着つけよ。
薄雲から射した月明かりに照らされたレグルパードが、こちらに飛びかかってくる。
「ゴメンね。人を殺らせるのは出来ない相談だよ。」
地に足を踏ん張り、相棒を構えると、思い切り魔力を込める。
この世界に飛ばされて、最初に馬鹿でかいビガディールに襲われた時とは違う。
相手の動きも、撃つべき場所もよく見える。
・・・ここに、順応し過ぎかなぁ。
緊張感なく、口端に笑みが浮かんだ、
「・・・じゃぁね。」
ガァン・・・
月闇に響いた一発は、レグルパードを貫き、氷結させた。
**************
※ 短めでスンマセン。
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