転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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森へ帰ろう

73.逃走準備

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実の所、蓋を開けたら小物感ハンパなかった『ケルベロス駄犬』に絡む一派を漸く退治できた、ということで、ギルド側主催の打ち上げ会が企画されていたらしい。
表向きは、騎士団側と冒険者とで協力した、魔獣暴走スタンピートの討伐戦勝会という、ご苦労さん会。

場所は、冒険者ギルドの食堂フロア。

ロイドさん、ザイルさんが流れを説明してくれ、懸念事項も伝えてくれる。

「とりあえず、リンは出ない方が良いだろう。さっきのシグルドの様子も気がかりだ。このままレザんトコで一晩休め。」

「本当は、レシピ発案者として居てもらいたかった所ですが。そうも言ってられません。説明なんかは商業ギルド側、レインに頼めば大丈夫です。あとは、カン君に任せる事になりますが。」


一応付与付き料理のレシピ登録は、私とカン君の連名となっている。

大丈夫?と、カン君の顔を見ると、真剣な顔で頷いた。


「ある程度は理解してるから、大丈夫ッスよ。レインさんが居てくれるんなら、不味そうな話は、レインさんに確認するんで。」

「・・・うん。ごめんね?」

「謝る必要ないっス。・・・俺も、あのシグルドって人、何か嫌だったんで。」


顔を顰めるカン君。
肩に乗るヴェルも『に゛ゃっ』と不機嫌そうに鳴く。


「ファーマスさん、一応イズマもつけておいた方が良いんじゃ?」

「そうだな・・・イズマ。宿に寄った風にしてくれるか?何かあったら、夜でも構わん、出ろ。」

「了解。」


ベネリさんの提案に、師匠が乗っかり、イズマさんが了解する。

・・・うん。みんな良くそれで分かるね?

とりあえず、私とイズマさんが一緒に行動。
師匠、ベネリさんとカン君はご苦労さん会に出て、目くらまし。
私達は、『陽だまり亭』に泊まっているように見せかけて、レザリック先生の所で待機。

って事で良いのかな?
確認しようにも、ピリピリとした空気感で話が進んでいるので、黙っていることにする。


「では、こちらを渡しておきますね。」


ザイルさんから、私とカン君に、B級である銀色ラインのライセンスカードとドッグタグが渡される。
師匠達には、A級証明の金色ライセンスカードとドッグタグ。
師匠が呆れた目を向けた。


「・・・準備いいな。」

「さっさと昇格していただきたかったですからねぇ。・・・これで名実共に、皆さんはクラスAパーティーです。よろしくお願いします。」

「まぁ、そんなことでヨロシクな。お嬢には窮屈させるが、なるべく早いうちに自由行動取れるようにする。
あとは、A級になってくれりゃ、権力に対しては、何とかなっから、な?」


ザイルさんとロイドさんは、師匠の様子を流して話している。
・・・駄犬掃討決めた段階で、作ってたでしょ、これ。


「まぁいい。とりあえず、リン。お前はニースの森に戻るのが仕事だ。いいな?」

「了解です。」

「イズマ、護衛は頼む。お前の判断で進めていい。」

「了解。」

「では、こちらも。」


私とイズマさんが返事をすると、ザイルさんが一枚紙を渡してくれた。


「そちらが指名クエストです。今からニースの森の守護役は『グレイハウンド』構成員全員ですが、主担当はリンさん。よろしくお願いします。
・・・これで、貴女達がニースの森にいつ向かおうが問題ありません。」

「分かりました。」

「リンちゃん、とりあえずその子・・・ヴェルは仕舞えるなら空間収納に入れた方がいい。先程と違う状況は作らない方がいいよ?」


ベネリさんに指摘され、それもそうかとヴェルを見る。


「そ、ですね・・・ヴェル、空間収納に入っていて欲しいから、銃になってもらってもいい?」


何となく、自立稼働している状態では入れられない気がして、銃モードになってもらえるようにお願いしてみる。


『にぃ。』


仕方ないなぁ、とでも言いたげに鳴き、ペロと私の耳を舐めると、淡く光り銃に変わった。
・・・銃変化する時に舐めるのは仕様ですか?


「ごめんね?森に戻ったら遊ぼうね。」


銃身を撫でると、空間収納に仕舞う。


「そしたら、俺とリンは宿に寄ってから、レザ先生の所に向かいます。その先は、こちらのタイミングで森に戻ります。」

「あぁ、頼んだ。」

「じゃ、リン、行くぞ。」

「分かりました。」


私は、イズマさんの後を追い、ギルマス部屋を出ると、裏口から街の雑踏に紛れた。



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