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第2ラウンドの鐘が鳴る
71.進化
しおりを挟む『みゃーぁ』
私を見たまま、プルプル震えているサビ柄のニャン。
「猫?」
「何で猫が、ここに?」
近くに居たベネリさんが捕まえようと手を伸ばしたところ、ピュっとソファの下に潜り込み、フーッと威嚇しだした。
「あれ?おーい、怖くないよ。」
ベネリさんが指先を出し、チッチッと構うも、猫はソファの下から出て来ない。
・・・それはさておき、私の銃剣は?
キョロキョロする私にカン君が声をかける。
「リンさん・・・多分その猫、リンさんの銃っス。」
ーーー はぃ?
カン君の発言に、みんなが止まる。
「いやいやいや、何言ってんの??」
「捕まえて、鑑定かけてみて下さい。」
じ、と私を見るカン君。
仕方なしに、ソファの近くに行き、下を覗いて手を出す。
サビ柄子猫は、ふんふんと私の手の匂いを嗅ぐ。
「おいでー。」
しばらく匂いを嗅いでいた子猫は、私の手にスリスリと頬を寄せだした。
そのまま構っていると、漸くソファの下から出て来て、私の膝の上に乗った。
ぐるぐると喉を鳴らして私の膝の上で丸くなっている、両手にすっぽり収まるサイズのサビ柄子猫。
カン君の言う通り、恐る恐る鑑定をかける。
=======================
ウィンチェスター 上下二連銃 (魔道具・猫モード new!)
所有者:リン(限定)
異世界から佐伯鈴と共にやってきた猟銃。
この世界で、リンが魔力を込めて使用したことで、魔道具となる。
弾に属性魔力を込めると、属性弾発射可能。銃自身に魔力を込めると威力増大。
上下で、違う属性弾を込められます。
銃自身が常に状態硬化しており、銃身で薙いでも、銃床で殴っても問題無し。ガタつきもおこりません。
100匹ヤっても大丈夫。
自浄作用ありますけど、手入れはしてね。
ーーーnew!
リンからの魔力が一定量に達したこと、悪意ある者からの自己防衛のため、猫型に進化。言うなれば付喪神。
餌は必要ありませんが、1日1回魔力は与えて下さい。
銃に戻す時は、念じればok。
名前をつけてあげると、絆が深まります。
=======================
ーーー マジか。
全力でorz。
あまりの他人への拒絶から、そのうち、動いたり喋り出したり、すんじゃないかと思ってはいたけどさ?
猫型って、どら焼き好きな国民的青い猫じゃないんだから。
いや、嬉しいけどね?猫好きだから、嬉しいけどさ?
君は、どういう構造体なんだい??
質量が違いすぎるでしょ?!
『にー?』
あぅ。
そんなクリクリお目でこちらを見ないでおくれ。
『なでなでしてくれないの?』
ってな意思が伝わって来たような気がしたよ。
可愛がるよ?全力でなっ。
「リン・・・本当にソイツはお前の銃なのか?」
もふもふしながら悶えている私に、業を煮やした師匠が突っ込む。
「あ・・・ごめんなさい。そうみたいです。私の魔力供給が一定量に達したのと、さっきの騎士さんの悪意の所為みたいで、猫型に進化したと。」
「リンさん、銃に戻せるの?」
カン君が首を傾げる。
「多分・・・ねえ、君。銃に戻れるの?」
『みゃー』
コクリ、と頷く猫。
私の指先ををフンフンと嗅ぎ、ペロと舐めると、猫は柔らかい光に包まれた。
数秒の間の後、私の膝の上には何時もの銃剣が。
「「「マジか」」」
部屋にいたみんなが、目を丸くする。
ふむ。
子猫がサビ柄なのは、銃身の鉄色と、銃床の木目の色って事なのかなー?
どーでもいーけど、急にファンタジー仕様だなぁ。
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