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第2ラウンドの鐘が鳴る
69.言いがかり
しおりを挟むきょとん、とする私の顔を見て、ロイドさんと師匠がはぁぁ、と大きなため息を吐く。
何なんさ。
さっきから、ため息つき過ぎじゃね?
「お前な、自分がやった事分かってるか?」
「やった事って・・・『ケルベロス』の捕縛のお手伝い?」
それ以外のお仕事してないよ?
「お前なぁ・・・お前の武器は特殊なんだろうが。それを全開で戦いやがって。」
・・・あ。
私は慌てて脱包し、相棒を空間収納にしまった。
「此処には俺らだけでなく、ギルド職員も、騎士団員も、一般冒険者まで居る。もう、バレバレだぞ。そして・・・」
師匠が話を続けようとしたところで、大きな影がぬ、と現れた。
「リン君!!」
「ふぁぃっ?!」
馬鹿でかい声にビックリする。
見ると、ケネックさんが満面の笑みを向けている。
「な・・・何でショゥ?」
「いやーっ、先程の戦いっぷり、お見事、見たことない体術と武器だが、一体どなたに師事されたんだい?そして、あの武器は何なんだい!?」
物凄い勢いで質問責めにしてくるケネックさん。
すると、捕縛が終わった他の騎士団員まで集まってきた。
「見たことの無い戦い方、まるで神話の『戦乙女』のようでした!」
「是非、騎士団に入って頂けませんか?!」
「あの武器は何なんだ?是非見せてくれ!」
怒涛のように言いよる騎士団員の皆さん。
たじろぎながら師匠を見ると、呆れたようにジト目でコチラを見ていた。
「・・・ほら、こうなる。女っ気ない脳筋連中だからな、騎士団は。闘える女なんて、格好の的だ。」
「うげぇぇぇ。」
思わず、声が出た。
いやぁぁぁ。
この展開は要らないぃぃぃっ。
私ゃ、まったり、のんびり、冒険者するんだぁっ!
「とりあえず、『グレイハウンド』の皆様はギルマス部屋に行きましょう。業務にも支障が出まくりですから。」
ザイルさんに促され、私達はそそくさとギルマス部屋に向かった。
*
ホールでの騒動にゲンナリし、ギルマス部屋のソファに沈み込む。
部屋に居るのは、ロイドさんにザイルさん、私達5人。
そして、相手方はファルコ領騎士団第3部隊副隊長のケネックさんと、第4部隊副隊長のシグルドさんという方。
騎士団の2人と、師匠と私が応接セットで対峙。カン君は私の後ろに張り付いているけど、ベネリさんとイズマさんは思い思いの場所にいる。
ロイドさんはまるで審判員のように、ギルマス席に腰掛けている。
ザイルさん手ずから紅茶を入れ、それぞれの席に置いた所で話しがスタートした。
早速、ケネックさんが前のめりで攻めてくる。
「では、リン君。騎士団に入る気は無いかい?」
「ないです。」
ーーー 即答。
当たり前じゃぁっ。
何故入ると思ったかなぁ?
「ダメかい?カン君も一緒にどうだい?」
「ケネックさん。騎士団の練習に参加させていただいて、ありがたいのですが。自分も、騎士団に属することは考えてません。」
「そうか・・・。」
カン君もばっさり。
気落ちするケネックさん。
「では、せめてあの武器を見せてもらえはしないだろうか?」
ケネックさんに代わり、シグルドさんが尋ねてくる。
「・・・お見せするのは構いませんが、私専用の魔道具ですから、誰も取り扱いはできません。構造、理論もお伝えできませんよ?それでも宜しければ。」
「それでも、構わないので、お願いしたい。」
ペコリと頭を下げるシグルドさんと、ケネックさん。
師匠の顔をみると、仕方なさそうに頷く。
・・・しゃーないかー。
空間収納から出てくるように念じると、銃剣が手の中に現れる。でも、持った時になんか違和感。
・・・何だろ。ご機嫌ナナメ?
後で手入れしなきゃなぁ、と思いながら、そっと机の上に置く。
「どうぞ。」
「では、失礼する。」
シグルドさんは、私の銃剣を手に取ると、しげしげと眺める。
「尋ねても良いかな?」
「何でしょう?」
「戦っている最中に、剣先が出ていたかと思うのだが、どうやって出していたのかな?」
「魔力を流して、出しますが・・・」
「試してみても?」
「・・・良いですけど、多分無理ですよ?」
私の気のない回答に、彼は少々気分を悪くした様子。
・・・流すのいいけど、何が起きても怒んないでね?
両手で銃剣を持つと、彼は魔力を流し始めた。
しばらく流してみるものの、何の変化も起こさない銃剣。
「何で、何の変化も起きない?」
「あ。」
シグルドさんは苛立ち、ムキになって魔力を流す。
あー。ダメだってば。
「熱っ!!」
途端に、銃剣は、持っていられないほどに発熱した様子。
思わず手を離したシグルドさん。
落ちる前に、ケネックさんが手にとる。
「お前、危ないじゃないか。」
「急に、熱くなったんだよ。」
「んなアホな。全く熱くないぜ?じゃ、俺も。」
今度はケネックさんが流すようだ。
「どわぁっ!!?」
彼も思わず手を離し、銃剣を膝の上に落とした。
「手が、痺れた。雷系の魔法のような・・・」
シグルドさんが、怪訝そうにこちらを見る。
「何なのだ、この武器は。」
「・・・とりあえず、銃剣ご機嫌斜めみたいなんで、返してもらって良いですか?」
ケネックさんが返そうとするのを、シグルドさんが制する。
「何なのだと、聞いている。」
イラッとした私は、シグルドさんの態度に意見しようとしたが、即座に師匠に阻まれる。
私の代わりに、師匠が対峙してくれるみたい。
「・・・シグルド、その態度は何だ。それはリンの魔道具だ。返せ。」
「ファーマス先輩・・・この魔道具は、今までにないものです。私の鑑定でも全く見えない。危険です。内容が分からない限り、返すことは出来ません。」
「巫山戯るな。それはお前の物ではない。返せと言っている。それが、犯罪者の捕縛に協力した者に対する態度なのか?」
師匠が怒気を発する。
しかし、シグルドさんも引かない。
ん?色んな意味でヤな予感。
「この武器については、騎士団側で預かります。」
「お前っ!」
師匠の制止を振り切り、彼は戸惑うケネックさんから銃剣を取り上げようとした。
ーーー ザワっと背筋が冷える。
凄い嫌な予感。
「っ!触っちゃダメ!!」
シグルドさんは、私の制止を聞かず、銃身を握りしめた。
バン!!!
「うがぁっ!!」
「「「「!!」」」」
激しい閃光と暴発の様な大きな音がしたかと思うと、シグルドさんが右手を押さえてソファに倒れこんだ。
「シグルドっ!」
「うわぁぁぁ!!手がっ!」
・・・だから、言わんこっちゃない。
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