転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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第2ラウンドの鐘が鳴る

68.後始末

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泡を吹き気絶したタルマンの前で、銃剣を床にぶっ刺し仁王立ちしている私の肩が叩かれる。


「リン、そこまでだ。」


ふと横を見上げると、師匠が疲れ切った顔をしていた。


「ど、しました?師匠。」


ん?と、こてん、と首を傾げてみる。
はぁぁ、と大きなため息をつき、師匠は頭を抱える。


「・・・やり過ぎだ、お前。」


はて、と思い、辺りを見回すと、何の爆撃跡かって位に壁は凹み、机や椅子が壊れ、どっしりとした作りのカウンターが粉砕している。
そこにガラの悪い男共が倒れまくり。

・・・何処の世紀末だろ、これ。


「・・・あは☆」


頭をかいて誤魔化してみる。
なーんか色々鬱憤溜まってたから、手加減できなかったよ。


「リンさんっ!」


すると、後ろからぎゅ、と抱きつく大きな影。
黒髪が右首筋に埋まってくる。


「また、無茶するんスから。・・・【回復ヒール】。」


カン君の優しい魔力の気配に包まれる。
右肩がズキと痛む。
ガンスに捻られた時は身体強化してなかったから、多分その時だろう。


「・・・大した怪我じゃないよ?大丈夫だよ?ありがと。」


ん?とカン君の顔を見る。

顔を上げた彼は、少し、む、と拗ねている様子なので、頭を撫でてみた。


「・・・何でまた、1人でやっちゃうんですか。」

「みんなが待機してたから、好きに暴れただけ。心配ありがと。」

「・・・どういたしまして。」


ちょっと顔を赤らめて視線を逸らすカン君。落ち着いたのか、やっと離してくれた。


その間にも、街の衛兵と騎士団員たちが、『ケルベロス駄犬』達を拘束して連れて行く。
タルマンには、何やら魔力操作が出来ないような細工がされたらしい。


「はっ離せ!私は関係ない!!」


この期に及んで、受付統括とやらのギャバが抵抗している様子。


「五月蝿いですよ?『ケルベロスあの馬鹿達』と結託しての恐喝、横領に虚偽報告。証拠は腐るほどありますからね。」


ザイルさんが良い笑顔で対応中。


「だったら!アイツらがD級なのに、魔獣暴走スタンピートに参加させたお前たちの処分は!?」

「何を言ってるのですか?彼等は既にC級ですよ?」

「なんだと!?」


ザイルさんは、やれやれ、と言った具合に蔑んだ目を向ける。


「こうなると思ったからに決まっているじゃないですか。馬鹿じゃあるまいし。
私が同行した段階で、3体どころじゃない数のアグウルグ討伐をしてましたからね。
その時点で、彼等のC級へのランクアップは終了しています。
だから魔獣暴走スタンピート討伐への参加は、全く問題ありません。
今日の呼び出しも“B級”へのランクアップの話ですからねぇ。」

「そういうこった。俺は腰抜けなギルマスだからなぁ。
戦力になりそうな奴らは、サッサとランクアップさせたまでよ。」


ロイドさんも、カラカラと笑いながら煽る。


「さて、随分と好き勝手やってくれたもんだ。ギャバと受付の2人。お前ら3人はクビ。大人しくお縄につくんだな。」

「っ!!」


観念したのか、3人は衛兵達に連れていかれた。
それを見送ったロイドさんが、頭を掻きながら辺りを見回す。


「しかしまぁ、ド派手にやったもんだなぁ。」

「あははー・・・ごめんなさい。
・・・あのー、ロイドさん?」


急に不安を覚え、恐る恐るロイドさんに問いかける。


「・・・これって私、修繕費支払わなきゃなんないです?」


一瞬の間の後、ぷ、と吹き出したロイドさん。


「ははっ。そんな事は気にするな。この作戦は、冒険者ギルドと騎士団と『グレイハウンド』が協同して行ったもんだ。作戦の一環として、相手が暴れたから取り押さえた。その際に建物に損害が出た、で片付けられるから安心しろ。」

「そうですよ?リンさんが居なければ片付かなかった迷惑案件だったのですから。必要経費です。」

ロイドさん、ザイルさんの笑顔と言葉にホッとして、はぁ、と大きく息をつく。


「よかったぁ。」

「・・・まぁ、それよりもなぁ。ファーマス、この後どうするよ。」

「皆まで言うな。ほとぼり冷めるまで、隔離だろ。」


ロイドさんと、師匠が2人でこちらを見る。
ん?何のこと?



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