転移は猟銃と共に〜狩りガールの異世界散歩

柴田 沙夢

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第2ラウンド開始前

55.ホントのこと

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※ 帰ってきた主人公。珍しく糖度高めで、処置に困ってます。でも残念です。そして短め。




*************



『ちゃんと言われたくない訳を話せ。お前が『自分の所為だ』と思う理由を。・・・じゃないと、判断ができない。』


・・・至極真っ当な言い分です。

ただ、言わないでくれ、って言っても、何だかわからないよね。

しかし。

頭ナデナデしながら、言う台詞ですか?それ。
何すか?この雰囲気。
本気で居た堪れないのですが。

・・・なんか甘い。

頬に暖かい感触があって、目が覚めた時も目尻を下げてこっち見てんだもんよ。

何でいきなり乙女ゲーの様になってんだい。・・・と言っても、乙女ゲーあんまやった事無いけど。
どっちかってーと、やってたのはギャルゲーだ。しかもR18だ。自分がヤる側だったわ。

それはさておき。
師匠からダダ漏れる色気に、ノックアウト気味ですよ。
ホントにキャラ的にどストライクなんだもんよ。

見た目はモチロン、普段ふざけた事言ってても、締めるとこは外さないし。
面倒見良いし。強いし。

回復の所為で身体が痛いのか、慣れない展開で心臓が痛いのか。
よくわかんねーや。

・・・うん、疲れてんだ。
おかしい方向に妄想気味だ。

だって、どちらかといえば。
このシチュエーションは、言う事聞かない子どもを諭しているだけだ。


・・・さて。
どうしよか。

私が暴れたのって、あれってゲームでよくある、バーサク状態ってヤツだよね。攻撃力は上がるけど、敵味方見境なくやっちゃうヤツ。
あの時は、意識はあるけど、身体が勝手に動いてた。
まるでゲーム画面を見ている感じ。痛みも疲れも感じなかった。

カン君が死んじゃう。

それしか頭になくて。
何がフラッシュバックして。
怖くて、悲しくて。
ーーー 私自身を許せなかった。


『持っている人間』の咎。
どう分かってもらおう。


大きな手で、頭をゆっくり撫でられる心地よさに身を委ねながら考える。


・・・うん。
全部話そう。

今更だけど。
アホか、って笑われそうだけど。

本気にしてもらえなくても。
何も知らない優しい師匠に話を聞いてもらって。
今は、笑い飛ばしてくれた方が良いや。

私は意を決して、師匠の方に顔を向けた。



「ーーーーー 1つ、嘘をついていた事があります。それも含めて、私の話を聞いてもらえますか?」


じ、と、師匠の顔を見る。
髪と同じ赤茶の双眸が、見つめ返してくる。
ふ、と笑みを漏らすと、また頭を一撫でした。


「あぁ。話せ。」


・・・ホントに、子ども相手だなぁ、これ。



***


何から話そうかと思いながら。

とつとつと、浮かんできた事を伝えていく。

私の世界での仕事のこと。
どんな部署にいても、案件が降りかかってくること。
それを称して『持っている人』と呼ばれる事になったこと。


黙って、師匠は聞いてくれる。


「ーーーこの世界に飛ばされたあの日。思えば、私だけだった筈なんです。」

本来なら、あの時、あの場所にいたのは私だけの筈だった。

同行を許可しなければ。
カン君は巻き込まれる事はなかった。


「ーーーだから。この世界に連れて来て、危険な目に遭わせて。申し訳なくて。」

「・・・それだけじゃ、ないだろう?」


射抜く様な赤茶の眼差し。
頭にあった手が、頬に降りてくる。


「何故そんなに、『死』に怯える?自分の死ではなく、坊主カンの死に、だ。」


・・・何で、この人にはお見通しなんだろう。
ズキ、と胸が痛む。


「それは・・・私の所為で、人が死んだから。」

「死んだ?」

「私と結婚したせいで・・・夫が。」


頬にある手に力がこもり、双眸が見開かれる。


「夫って・・・お前、結婚してたのか?」

「はい。おかげで、未亡人です。」

「だって19歳だろ?お前の世界はそれが当たり前なのか?」

「・・・それなんですけど。私、本当は、34歳です。」

「あ゛ぁ゛?!」


・・・あ。
厳つい顔になっちゃった。



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