闇堕ち聖女の軌跡

柴田 沙夢

文字の大きさ
上 下
29 / 40

28

しおりを挟む




我に帰った《ルークサンドラ》国の国王である剣士や、現国王派の貴族達が、取り繕うように、反対派の対処について礼を述べ。
これにより、憂いなく私を迎え入れることが出来ると、こちらを信じて欲しいと、開き直りのような巫山戯た言い訳をしてきた。



「私は、貴方がたの謝罪など受け入れる気は有りません。我々に指摘されなければ気づかぬ他貴族の目論見で、私を害しようとした事、。帰還陣など無いのに『有る』と言い張った、国を挙げての詐欺行為。それに・・・勇者パーティーで一緒だった時に、私の味方をしてくれなかった!それなのに、何をどう信じろと!!」

「何を?!私は、聖女殿、貴女の貞操を守り抜いたんですよ?それが無ければ、貴女は今頃・・・」

「ふざけないで!!」



ぐわっと、頭が沸騰する。
その瞬間、私の隣でぶわり、と風が舞い。

ドガン!

と、大きな音が鳴った。

目の前にいた剣士が消え。
謁見の間の壁に叩きつけられている姿となっていた。
剣士がいた所には、ティグレさんがいる。
王様ぶん殴っちゃった・・・



「・・・クソ野郎が、それ以上口開くんじゃねぇ。・・・つまりは、サクラがクソ勇者やクソ拳闘士に犯されそうになって、弱った所に、助けるフリでつけ込もうとしただけじゃねぇか。姫を窮地から救い出す王子としての演出か?
生憎なぁ、サクラは非力だったとしても、そこいらの女子どものように精神は弱くない。理不尽に屈さず、冷静に状況判断し、立ち向かう力を持っていた。お前如きの魂胆なんか、直感理解していたから!近寄らなかったんだよ!」

「な、なにを・・・」

「サクラと一緒になりたかったならなァ!サクラがこの国に現れた時から、彼女に寄り添うべきだった!祖国と切り離した事を詫び!下手な小細工や駆け引きなどせず!誠心誠意尽くすべきだった!違うか!」



ティグレさんの言う通りだ。
この男は、都合の良い事だけ、耳障りの良い事だけ言って、傍観に徹して、自己の保身に走る奴。私は、そう評価していた。

言いたい事を代弁してくれたティグレさんに近寄り、怒りで筋肉が隆起しているその腕にそっと手を添えて、私は剣士を見据える。



「・・・そう。此処に来てから、私の心を支えて、立ち向かう勇気をくれていたのは、決して貴方なんかじゃ無い。大切な私の家族と友達と・・・彼氏との思い出。そして、あの時、私を見つけたティグレさんがくれた言葉。
元の世界に戻れない、帰る術が見つからなかったとしても、私は二度とこの地は踏まない。私の居場所は《マジェスト》にできたんだから。
・・・貴方の顔なんかもう見たく無い。二度と会わない。私に申し訳ないと思うなら、自分達の力だけでこの国くらい統治してみなさいよ!」



溢れ出しそうになる涙を堪え、ティグレさんの左腕に縋り付く。
彼はなにも言わず、ふわりと私を左腕に抱え上げ。
よく言った、と言わんばかりに、右手で頭を撫でてくれた。





しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。 クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。 (過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…) そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。 移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。 また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。 「俺は君を愛する資格を得たい」 (皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?) これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...