闇堕ち聖女の軌跡

柴田 沙夢

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※ 胸糞表現だらけです。


*************





「・・・ねぇ、アナタはこの旅で何も思わないの?魔獣被害はあれど、冒険者がしっかり対応して、騎士と役割分担しながら住民を守っている国がほとんどで。
それどころか、《ライトリクス》のように、魔族と新たな関係を作って、仲良くやってる国だってある!」

「それ、は・・・貴女はどこでその話を、」

「どこで、誰に聞いた、って?ふざけないでよ!私だって馬鹿じゃない。そんなの見てれば幾らでも分かるでしょ!アナタ達の国が貧しいのは、魔王の所為なんかじゃない。アナタ達のトコのお偉いさん達が贅沢しているからでしょう?あの城の金ピカ売るだけで、街を整備するお金を用意できるんじゃないの?王妃サマにジャラジャラついてた宝石や、ゴテゴテしたドレス止めるだけで、飢えた民に渡る食料費の足しになるんじゃないの?どうせ、魔王討伐は、周囲の豊かな国を牽制する為のパフォーマンスでしょ。この戦いで魔王を倒せたら、今度は何?聖女を各国に貸し出しでもして、お金稼ぎでもする?」

「聖女殿・・・それ以上は、不敬ですよ。」

「不敬だとか知らないよそんなの。私は言論の自由がある国の人間だもん。民主主義で生きてきた人間だもん!・・・ねぇ、アナタ達がブスだと蔑む私でも、アッチの世界で幸せだったんだよ?仲の良い家族と、大切な友達たちがいて。私をとってもとっっても大事にしてくれる大好きな彼氏がいて!そんな大事な人達の為に一生懸命手作りチョコ作って、渡す前の日に!ココに拉致されたの!」

「拉致だなんて、そんな、」

「拉致以外の何モノでもないでしょう!?私の意思と関係なくこんなところに連れてこられたんだから!
・・・ねぇ、剣士さん。アナタさぁ、ココとは違う、美醜が反転した世界に勇者として召喚されたとして。
『ブ男だけど、勇者なんだから、この世界のために尽くせ。上手くいったら姫と結婚させてやる』って言われて、自分を心底嫌っているお姫様と結婚なんかできんの?」

「それは・・・」

「ねぇ、金かけて召喚した聖女には、どんな扱いをしても許されるの?そんなの聖女でも何でもなくて、ただの奴隷でしょ。『聖女召喚』なんてお綺麗事じゃなくて、『奴隷召喚』に改めたら!?」

「聖女、殿。」



捲し立てる私に、剣士はたじろぐ。
それはそうだ。
これまで私は、彼等の前で意思表示をしてこなかったから。

従順で何も考えていない、とでも?
馬鹿にしすぎてる。

二の句を告げずにいる剣士を、私は睨めあげる。
沈黙の間を埋めるように、外から話し声が聞こえてきた。



『・・・で、セイルぅ、どぉするの?魔王討伐終わったら、あの聖女サマと結婚しなきゃならないのでしょう?』

『あぁ・・・仕方がないので娶るが、リズについては側室に迎え入れようと思ってる。』

『ホントぉ?嬉しいわぁ~』

『おーおー鬼畜だねぇ。じゃぁよ、結婚前に聖女サマの味見しても良いかぁ?アイツはブスだけど、胸はデケェし。処女だろうから、色々楽しめそうだ。』

『あぁ、構わないさ。ガープ、寧ろ君に閨事を教えてもらった方が良さそうだ。』

『そうねぇ、聖女サマ、なんだから、膜だって自分で再生出来るんじゃなぁい?』

『ははっ、ちがいねぇ。そうなりゃ、聖なる女じゃなく、いつでも処女貫通が楽しめる“性女”サマだなぁっ!』



ギャハハと下品に笑うその声を聞いて、どんどん頭が冷えていくのがわかった。
私の中に残っていたわずかな良心は、跡形もなく崩れ去った。



「聖女、殿・・・」

「ここまで言われて、アンタ達に協力すると思ってんの?馬鹿にしないで!!」



絞り出すように私を呼ぶ剣士の顔は、すっかり青ざめていた。
その顔を見た私の口からは、自分でも驚くほどの低音声が飛び出した。



「・・・みんな、死ねばいい。こんな世界無くなればいい。」

「聖女殿!申し訳ない!彼等の戯言は聞いてくれるな!私から言って・・・」



そう言って、伸ばしてきた剣士の手は、パチンと私の『結界』に弾かれた。
完全に彼等は敵、私はそう認識した。



「煩いな!どうせ、傲慢であることに、反省も後悔もしないんでしょ!うまくいかなきゃ、全部他人の所為にするんだから!明日、みーんな魔王に殺されればいいんだ!」



剣士の顔が、絶望感に苛まれていく。
でも、もう、私の心は、全く動かない。



「知ってた?私はアンタ達の名前、絶対呼ばないようにしてた。だって、誰も私の名前を呼ばないんだもん。『聖女』だったら、何でもよかったんでしょ?美人じゃない『私』を見てなんてくれない。そんな事だけで、私を貶めて大事にしてくれない人達を助けるなんて、そんな慈善事業するわけないじゃない。」


薄ら笑いをうかべながら、私は剣士を見据えた。



「・・・楽しみだね、明日。それじゃあ、おやすみなさい。」

「聖女殿!すまない・・・すまない!私はっ貴女をっ!」



剣士が何か言ってたけど、テントの中へと引っ込んで入口の幕をしっかり閉め。テント全体に『結界』を張った。
何もかも吹っ切れた私は、ストンと眠りに落ちていく。

意識が途切れる瞬間に浮かんだのは、“サクラ”と呼んでくれた、ティグレさんの嬉しそうな笑顔。
『帰ることを諦めないでくれるか?』って、言ってくれたのに。

・・・破滅を求める私の事、彼は赦してくれないだろう。

なんとなくそう思って。
その事だけが、チクリと胸に刺さった。


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