闇堕ち聖女の軌跡

柴田 沙夢

文字の大きさ
上 下
8 / 40

しおりを挟む

※ 胸糞な話です。性犯罪未遂的な要素があります。



*************



私が他のパーティーと話す事を、勇者パーティーの面々は良しとしない。
まだ、回復役さんに伝えたい事もあったのに、「いい加減にしろ」と拳闘士や女魔法使いに怒鳴られた。

「そんな奴らに構ってる暇はねぇ」とか何だとか。
冒険者なら、魔王に繋がる情報持ってたりするんじゃないの?仲良くして情報もらった方が良いんじゃないの?って、小娘な私ですら思うのに、何で偉そうなの?

仕舞いには、勇者ぶった外面王子が、「君の聖魔法の技を広めることは、良い事とは言えない」と言い出した。
「君しか使えない技であれば、「自分も使える」と余計な期待をした分、ガッカリする度合いも大きくなるんだ。」とか、「君の為に忠告しているんだ」とか何だとか言ってるけど。

・・・つまりは、『聖女の聖魔法』として、独占したいんだろって。
いい加減、馬鹿でもわかるわ。

大体、私が教えてるのは、誰でも使える回復薬でも効果が上がる話だ。
それで苦しむ人が減るなら万々歳だ。

怒鳴られたり、斜め上な説得を受ける私を見て、他の冒険者さん達は居た堪れない顔をしていた。
庇おうと、彼らの発言を止めようとしてくれた冒険者さんもいたけど、拳闘士や女魔法使いに、酷い攻撃をされてしまった。

庇ってくれるのは嬉しかったけど、今は、他の皆さんに迷惑がかかるから。
だから、行く先々で大人しくするようにした。
それでも、奴らの思い通りになるのは尺に触るから、気遣ってくれる回復役さんに出会えたら、『回復』の効果を上げる方法をこっそり伝えていった。






私の結界魔法の精度が上がったのは、実の所、身の危険を感じたからだった。


拳闘士と女魔法使いは、時々って言うか・・・よく、行為に及んでいた。
どうやら勇者サマもみたいだった。
剣士はシラネ。

ある野営をしていた晩、その日は勇者サマの番だったらしく。
暇を持て余したのだろう拳闘士が、私のテントに入ってきた。

「オレ様が具合を確かめてやる」だの「王子のを突っ込む前に、邪魔な膜をブチ破っといてやるよ」とか、巫山戯た事言い出して、私の身体に触ろうとした。


看護師だったお母さんは、産婦人科で外来をしていた事もあって、初潮が来た時、性についての話をこんこんと説明してくれたから。
それがどんなに大切な行為で、流されちゃいけない事だって分かっていて。

『相手が望まない、思いやれない行為は、ただの暴力だ。レイプだったりデートDVって犯罪行為なんだ。された方は悪くないんだ。でも、割りを食うのはされた方なんだ。こんな馬鹿な話あってたまるかっ!』て。
お母さんは、病院の外来で、そういう悲しい思いをした女の子を見てきたから、って、悲しそうな顔で凄く真剣に話してくれたから。

大事にしたかった。
もしハジメテなら、こんな蛮族じゃない・・・琥太郎くんが良かった。

だから、必死になって抵抗した。

組み敷かれそうになったその時。
お腹の底から力が溢れ出して、拳闘士を弾き飛ばした。

見ると、とても強固な結界が、私の周りに出来上がっていた。

拳闘士は怒り狂って、結界を破ろうとしていたけど。
どんなに奴に殴られようと蹴られようと、びくともしなかった。

騒ぎを聞きつけた剣士がやってきて、拳闘士を諫めてくれた。
このままだと、契約解除する必要があるとか何だとか。

拳闘士は《勇者パーティーの一員》という肩書きは捨てられないのだろう。渋々と、剣士の言う事に従ったようだった。
「魔王討伐が終わったら、覚えておけ。」と捨て台詞は吐かれたけど。

その日以来、気配察知にも敏感になった。それに寝る前に『結界』を張るようになった。

『結界』は便利で、私が寝ている間は常時発動出来る様になった。
勇者パーティーの面々は、私が寝ている時に近寄れなくなった。

結界だから、何でも弾くと思われていたようだけど、実際は、“周囲50cmの範囲でを弾く”という意図の『結界』になっていた。

同じパーティーのハズなのに、害を成す人間しかいない事に、心底笑えてしょうがなかった。


しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

一体何のことですか?【意外なオチシリーズ第1弾】

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【あの……身に覚えが無いのですけど】 私は由緒正しい伯爵家の娘で、学園内ではクールビューティーと呼ばれている。基本的に群れるのは嫌いで、1人の時間をこよなく愛している。ある日、私は見慣れない女子生徒に「彼に手を出さないで!」と言いがかりをつけられる。その話、全く身に覚えが無いのですけど……? *短編です。あっさり終わります *他サイトでも投稿中

乙女ゲームの正しい進め方

みおな
恋愛
 乙女ゲームの世界に転生しました。 目の前には、ヒロインや攻略対象たちがいます。  私はこの乙女ゲームが大好きでした。 心優しいヒロイン。そのヒロインが出会う王子様たち攻略対象。  だから、彼らが今流行りのザマァされるラノベ展開にならないように、キッチリと指導してあげるつもりです。  彼らには幸せになってもらいたいですから。

人質王女の婚約者生活(仮)〜「君を愛することはない」と言われたのでひとときの自由を満喫していたら、皇太子殿下との秘密ができました〜

清川和泉
恋愛
幼い頃に半ば騙し討ちの形で人質としてブラウ帝国に連れて来られた、隣国ユーリ王国の王女クレア。 クレアは皇女宮で毎日皇女らに下女として過ごすように強要されていたが、ある日属国で暮らしていた皇太子であるアーサーから「彼から愛されないこと」を条件に婚約を申し込まれる。 (過去に、婚約するはずの女性がいたと聞いたことはあるけれど…) そう考えたクレアは、彼らの仲が公になるまでの繋ぎの婚約者を演じることにした。 移住先では夢のような好待遇、自由な時間をもつことができ、仮初めの婚約者生活を満喫する。 また、ある出来事がきっかけでクレア自身に秘められた力が解放され、それはアーサーとクレアの二人だけの秘密に。行動を共にすることも増え徐々にアーサーとの距離も縮まっていく。 「俺は君を愛する資格を得たい」 (皇太子殿下には想い人がいたのでは。もしかして、私を愛せないのは別のことが理由だった…?) これは、不遇な人質王女のクレアが不思議な力で周囲の人々を幸せにし、クレア自身も幸せになっていく物語。

(完結)「君を愛することはない」と言われて……

青空一夏
恋愛
ずっと憧れていた方に嫁げることになった私は、夫となった男性から「君を愛することはない」と言われてしまった。それでも、彼に尽くして温かい家庭をつくるように心がければ、きっと愛してくださるはずだろうと思っていたのよ。ところが、彼には好きな方がいて忘れることができないようだったわ。私は彼を諦めて実家に帰ったほうが良いのかしら? この物語は憧れていた男性の妻になったけれど冷たくされたお嬢様を守る戦闘侍女たちの活躍と、お嬢様の恋を描いた作品です。 主人公はお嬢様と3人の侍女かも。ヒーローの存在感増すようにがんばります! という感じで、それぞれの視点もあります。 以前書いたもののリメイク版です。多分、かなりストーリーが変わっていくと思うので、新しい作品としてお読みください。 ※カクヨム。なろうにも時差投稿します。 ※作者独自の世界です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

果たされなかった約束

家紋武範
恋愛
 子爵家の次男と伯爵の妾の娘の恋。貴族の血筋と言えども不遇な二人は将来を誓い合う。  しかし、ヒロインの妹は伯爵の正妻の子であり、伯爵のご令嗣さま。その妹は優しき主人公に密かに心奪われており、結婚したいと思っていた。  このままでは結婚させられてしまうと主人公はヒロインに他領に逃げようと言うのだが、ヒロインは妹を裏切れないから妹と結婚して欲しいと身を引く。  怒った主人公は、この姉妹に復讐を誓うのであった。 ※サディスティックな内容が含まれます。苦手なかたはご注意ください。

出生の秘密は墓場まで

しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。 だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。 ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。 3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

処理中です...