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2話 全ての始まり②

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「...う、うん。」

 久しぶりに出した声はガサガサしていて弟の透き通った声とは真逆の声だった。それにも落ち込んでいると透き通った声が聞こえる。

「お兄ちゃん!じゃあ僕は戻って準備するね」

 俺が声を出した瞬間ドア越しにすごくはねたような声がした。俺が返事をして嬉しいみたいだ。
 そして去っていこうとする足音。

「...ま、まって。」
「どうしたの?お兄ちゃん?」

 過ぎ去ろうとする足音に思わず声をかけてしまった。俺はどうしたらいい?俺は引きこもる前と変わらず何も考えられない子供だ。1つ下の弟に縋る情けない兄だ。でも弟はきっと俺の問題を解決してくれるはず。さっきは信用してはいけないとか思ってたのにこういう時だけ頼る俺はダメ人間だ...。

「お...れ、部屋から...出られない。どう....したら...いい?」

 途切れ途切れに言う言葉に弟はドア越しで静かに急かさずに聞いてくれた。当たり前のことでもどれだけ嬉しいか。そしてこれが弟が好かれる要因なんだろうな。

「大丈夫だよ!僕に考えがあるから!明日の引越しはお兄ちゃんは何も心配しなくていいよ!兄さんは何も心配しないで荷物をまとめて明日のためにぐっすり寝ておいてね!あと晩御飯扉の前に置いとくね」

 弟に慰められる兄の図は当事者からするとものすごく惨めな気持ちになるものだった。弟にそう言われたが心配で眠れるはずもない。とりあえず心を整理するように荷物をまとめていく。一つ一つ、引きこもりの苦しく苦い思い出をしまい込むように...。

 1時間ほどかけてなんとか終わった。引きこもって少し動くだけで息切れをするようになってしまったと落ち込みつつもドアをご飯が取れるだけの隙間を開けの目の前にある晩御飯をとる。何か見られているような感じがしなくもない。いつものように気の所為だろうと軽く考え。中学生の時のままの勉強机で晩御飯のカレーを食べる。カレーは俺が大好きだったものだ。弟が作ってくれたのだろうか。そう思うと何となく美味しいと思えてくる。人は敵と思っていたが弟や他の家族には俺を見捨てないでくれて本当に感謝している。ありがとうという気持ちを込め少し無理をしてでも完食をする。食事中もだったが食べてからよりいっそう眠気が襲ってきた。今日は引きこもりにとっては色々なことがあったもんな。
 食べ終わるとそのまま倒れ込むようにベットに体を沈めた。

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過筆&修正完了しました。(11/10)
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