悪役令嬢は嫌なので、放浪して好き勝手します

cqrijy

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閑話 海王蛇の生態と習性

③緩やかに消失していくもの

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「その足首のやつ可愛いね。いつも着けてる」
「これは魔力を回復させる魔導具でして──」

食べたい物があるなら俺に言えばいいのに、リリーは楽しげに今日は海中ハンターになって海の食材を獲りまくるぞと意気込んでいた。自分の目で見てまわるのが好きなのかな。初めて見る物に固執する性格なら、俺が裏の世界に飲み込んでも──。

「キャー!」

通りすがりの人魚がリリーに叫んだ。
そういえば今日集まるのは全員人魚だと、ミラが言っていた。俺に対してとくに怯える様子もなかったリリーなら問題はなさそうだけど、人魚の方はどうかな。
ミラはあと1年もしない内に死ぬ。恐らく残った人魚達がまだ幼いから、リリーに自分の代わりに海中ハンターになって欲しいんだろう。さっき擦れ違った人魚は離脱して居着かなかった。双子の人魚はたまにミラを手伝うが、将来的には親のように人間に紛れて暮らすことを望んでいる。ミラの娘エメラルドは一人取り残される。
人間には周りとの関係次第でその土地に居着く傾向があるから、ミラの娘の存在がリリーを繋ぎ止めるなら、問題はないかな。

エメラルドに連れられてリリーは海に入っていった。


『雷魔法──極擽術』
「きゃああああっっ!?」


しばらく海の中の様子を視ていたが、問題はなさそう。エメラルドから仕掛けているようだが、思っていた通り、リリーは歯牙にもかけない。

それに会話を聞いていると、リリーはこの十年間、消えていたわけではなかった。幸せではなかったようだけど、地上で暮らしていたようだ。
それなら、探しにいけばよかった。

突如リリーの声が揺らいだ。動揺している。

『繁殖の為?  え。11歳で?  ……ちょっとミラさんと話したい』

母親の為に俺と繋りたい、その事情をリリーが聞いたらエメラルドに同情するかもしれない。

人魚は自分の命を他者に与えることができる。三つの命を持つ高位人魚だけが可能な能力だ。その血もまざっている俺は他者に命を与えることができる。でもただの人魚のエメラルドでは、ひとつしかない命を与えることすらできない。二つあれば、可能だが、人魚が手っ取り早く命を増やすには同族の肉を食べなければならない。それも大量に。
だからテリーに人魚の肉を縋るも、この海にはエメラルドが高位人魚に進化できるほど、人魚の数が足りていない。元々絶滅を間近に控えた種族だ。
ならばと今度はテリーに命をねだり、それが無理だと解ると俺に縋ってきた。そして十年前から番がいると断った。海の中にも人魚の歌声は落ちていなかった。

俺達が他種族に命を与えるには、事前に体を繋げなければいけない。恐らく、リリーはそれを知ってもミラを助けたいと思うだろう。気に入ってる様子だったから。俺と他の誰かが繋がったら、リリーは身を引くように離れていく気がする。人間は裏切りに敏感なくせに、人助けする時は綺麗事を言うからね。俺はリリーが他者と体を繋げても、離れていかないよ。その前に他者と繋がせないけどね。

「ィ"いっ、言う、言うから、待っ」

面倒だな。リリーを繋ぎ止める枷にはならなかった。死んでもらおう。


  ◇ ◇ ◇ ◇


俺には命を与える高位人魚の能力とは真逆の、海王蛇が進化の過程で得た寿命を奪う能力もある。

ミラは事無きを得たようだ。エメラルドも反省したのか、俺を抑え込もうとするリリーを不安げに見ていた。
双子の人魚を見る。遠くにも様子を伺うのが一人。また同じような事が起こるかもしれない。見せしめにエメラルドの命を吸い取ると、リリーは手に何かを出してエメラルドを生き返らせた。

掌を見ると、奪った寿命がエメラルドに返還されていた。リリーの魔力じゃない。何かの強制力のような、不思議な力だった。

「……実は私、別世界の神でして」

リリーの雰囲気が変わった。
誤魔化すように取り繕う。
あまり見せたくない能力だったようだ。

『今の、リリーがしたこと全部忘れて』
リリー以外の全員に話かけ、承諾させた。遠くから隠れて見ていた人魚にも。


  ◇ ◇ ◇ ◇


「フィックスお兄さん……ほ、報告はただの風習で、昔からの決まりだから」

リリーに俺の命をひとつ与えた。
そのせいでエメラルドに目をつけられた。

「……気にくわないね」

初潮がきて子を宿せる体になったエメラルドは本能的により強い人間の種を欲しがるようなる。リリーが人魚を孕ませる上位の存在になったのを悟り、リリーの庇護下に入りたがった。昔、海王蛇先祖の影響で地上に降り立った人魚は、人間の雄とうまく交配できなかった。しかし相手が上位者の場合、簡単に子を宿せた。
海王蛇先祖が推奨したやり方だ。それを俺に認めろと、エメラルドは遠回しに伝えてきた。
他の人魚は弁えているのに。
もう一度殺そうか。
そしたらリリーがまた生き返らせるかもしれない。ミラの為に。

「いて、フィックスさん……その蛇噛んできます」
「そう。リリーの事が好きなんだろうね」

発情期に現れる髪の蛇は俺の種だ。触れたら選んだことになり、選んだ者は生むまで他の種の干渉を受けない。上位であろうと人魚を孕ませることも出来ない。もうテリーでもリリーを孕ませることは出来ない状態にした。

リリーは全ての髪の蛇を撫でた。選ばれようと暴れていた種は引っ込んだ。7体の蛇。これを全て生むまでリリーは他の種の干渉を受けないし下位を孕ませることもできない。それをエメラルドに見せつけた。

負け惜しみのようにホーリーパールを受け取らせたエメラルドはリリーの庇護下に入った。エメラルドのホーリーパールに触れると、二人は互いの魔力を繋げれるようになる。エメラルドが繋げようとしたので、繋ぐ前に魔力を消し飛ばした。リリーは俺のだよ。

「っ~!  なによっ、フィックスお兄さんとリリーおねいさんだと、あと一年はかかるじゃないっ。エメラルドだったらすぐにでもリリーおねいさんのヒッ……!」

今度は14体の髪の蛇を出した。全てリリーに触らせる。リリーのお陰で人間に利用される力は無くなったんだから、庇護下に入る必要なんてないでしょ。


  ◇ ◇ ◇ ◇


俺の発情期が終わるまで、リリーは俺から離れないことを約束した。
よかった。来年にはリリーの腹が整う。俺の気が馴染むように、一番奥に体液を注ぐ為に、子宮の入り口を進んでいく。

「やっ、や、それやめっ、やめてえぇ……ひィう!」
「大丈夫。リリーも涎垂らして喜んでる」
「それっ、お腹にビリビ、リすりゅのぉ……頭、ばかになるより、真っ白……なるから、性器ではしないでぇ……!」
「大丈夫。また何も考えられなくしてあげる。……挿れるね」
「や……中、なかにっ、やあああああッ!」

リリーの子宮に性器の先端を押し付ける。かなり狭い。でも、柔らかい。俺の形にそって包み込んでくる。無防備でいとおしい。膜を押し拡げる。

「あ、ア、アァー……」
「痛い?  少し我慢してね」

中に体液を出して馴染ませると、リリーの体全体が赤く染まってきた。虚ろな目で、背筋が大きくとび跳ねる。可愛い。声も艶が出てきた。リリーは声も可愛いね。

「今から少しずつ出して、中を拡げるよ」
「……っな、か……なん、……?」
「俺の子種はでかいからね」
「へ、ぁ……せー……し……?」
「これは違うよ。でも出すと気持ちがいい。子種は含まれていないけどね」
「アッ、ン、あ、ぁあっ!」

リリーの下腹部がぽこっと膨れあがるまで、動きながら出して、中を拡げて膜を撫でまわす。

「可愛い。お腹孕んでるみたい」
「っ、ひぃん!」

脇腹から下腹部にかけて両手で撫でると、中が大きくうねって縮小した。まるで出した体液をごくんと全て飲み込むように。ぽこっと膨らんだ腹もへこんだ。

「……飲んだの?  わぁ、リリー凄いねぇ」
「あンっ……もっ、と……足りにゃ……!」
「いいよ。いくらでもあげる」

リリーは逆上せあがったように呂律が回らなくなってきた。締める力も増して、先端を包む膜が柔らかく蠢く。背中に腕をまわすと腰に足を絡めてきた。滅茶苦茶に抱いてしまいたい。唇を塞いで腰を打ち付けた。目を見開いて涙を流すリリーに体液を注ぎこむ。もっともっとと泣かれて口元が緩む。殺さないように手加減しないと。あと21個の命があるとはいえリリーの死に顔は見たくない。


  ◇ ◇ ◇ ◇


発情期が終わって我に返った。
ここ数日、理性が無くなっていた。
リリーは元気そうにしていて、体も痩せてはいなかった。でも頬がげっそりとしていた。俺の腕に閉じ込めていたのは三日くらいかな?  ごめんね。何か食べさせないと。

「……ごめんね。お腹空いたよね?」
「あ、お店の従業員さんが何度か差し入れしてくれてたんですよ」

リリーの視線を辿ると、床に卵の殻が無数に転がっていた。店にいる従業員は雌雄両性しかいないから、リリーへの栄養源として産んで持ってきたのか。

「食事もパンとか握り飯とか作ってもらってたんですけどね。多分足りないだろうって、何故か茹でた卵を何度も持ってきてくれたんですよ……味は薄いけど、なんか高栄養で……これが無かったらしんでたかもしれません」
「……ごめん」
「あ、ごめんて、本気にしないで、うそうそ、うそだからっ」

リリーは慌てて目の前で果物や揚げ物を出した。

「ほらっ、こうやって出してしょっちゅう食べてたからっ」

食べてなかったと思う。
出す余裕も与えなかったと思う。
虚ろなリリーを数日間ベットに囲っていた間、誰かが部屋に来た記憶は微かにある。


"人族ですから!  食べないと数日で弱って死んでしまいますよ!  ここに置いときますから!"
"おいフィックス、フィクサーナがお嬢ちゃんが生きている内にどうしても会いたいと大泣きしていたんだが……まだ生きているか?"
"リリーおねいさん死んぢゃやだぁ!"


俺に羽交い締めにされているリリーが、必死の形相で手を翳して、床にある食事を引き寄せて……それは食べていた気がする。

「んもぅ、それよりフィックスさん、従業員さん達には後で色々誤魔化しといて下さいよぉ。私が裸を見られたのは女性店員さんだけだからいいけど、フィックスさんのまん丸お目々を見た時は顔が引き攣ってましたよ。人間じゃないってバレてると思います」
「……眷属に感謝しないとね」
「眷属?」
「うん。店の従業員、全員人間じゃないから」
「……え」
「あ、宿の従業員も」
「ぇえええっ……いつから!?」
「最初から」
「…………お、ふ」

この店も宿も、リリーと出会う為に始めたからね。

「通りで皆さん、笑顔が素敵……」

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